なんとなくお腹の調子もよくないし気分も沈む一方で、帝大教授の職を蹴って東京朝日新聞に入社を決めた漱石が冬の京都を訪れたときの文章の不安に彩られた寒さが我が事のようにヒタヒタと身に染む。
駅前のカフェ・ベローチェでいつものようにブレンドコーヒーLサイズを買い、駅に向かう途中ふとオリオン書房に立ち寄って、いま話題の「生協の白石さん」を手にとる。
いまさら図書館で予約すれば何ヶ月も待たされるだろうが予約すべきか否か、試しにページを開く。こんな事が書いてある。
「A4のC罫のノートが欲しい。グラフを書くのに都合がいいから」
C罫というのは聞いた事がないな、そもそもA罫からC罫に向かって罫線の間隔が広くなるのか狭くなるのかも定かでない。学生とくに理系学生ならではの要望だなぁとなんとはなしに眺めてると、下に「生協の白石さん」の回答がある。
「各メーカーに聞いてもA4のC罫というのはないようです。ご存知のC罫を教えていただけませんか?」
というような事が、簡潔だがこの手の要望カードの回答としては丁寧な文章で書かれている。行間からたちのぼるのは、職務を全うしようという生真面目さか、学生の要望を真摯に受け止めてあげたいという思いやりか、はたまた多分勘違いではないかとやんわりたしなめる優しさなのか。そのいずれにも読める。
すると他の回答も気になってくる。パラッと別のページをめくると、こんなカードがあった。
「まず”Endlessな愛”が欲しいです。…」
本題の要望が後に続く。俄然カードの回答が気になる。白石さんは、本題の方をひとしきり懇切丁寧に答えた後に、やはり簡潔にさりげなく、こう書く。
「”Endlessな愛”は私も欲しいので、たとえ見つけても教えて差し上げません。」
この甘えたカードを書いた学生に、ちょっぴり意地悪げに、だけど相手の気持ちに寄り添うように優しく、白石さんは言葉を送る。
この言葉はこの学生のために書かれたのに、要望と回答はセットで生協の一角に掲示されるだろうから、この優しい言葉は次から次に学生に伝わる。口づてでさらに伝わる。聞いた方も聞かれた方も期せずしてささやかな”Endlessな愛”がそこに生まれた事に気付かないだろう。
最前からの寒さにくじけた心と体がひと心地つくのが分かる。何故か今日一日を乗り切るための辻占を貰ったような気になった。
そうだ。時々ここへ来ては思いつくままにページを開いてみよう。一日一ページ。それがこの本の読み方としてふさわしい。なぜかそんな気がした。




すごい人気ですね、生協の白石さん。
あの、ほのぼのしていて的を得たようなお話し振りがいいのでしょうね。
気持ちがのんびりするといえば、あさをゆうじさんの『こいぬぐんだんの冒険』や、小泉吉宏さんの『シッタカブッタ』シリーズは、私のお勧めです。
どちらも、あっという間に読めてしまいます。
疲れた時に、読んでいます。
・・・というか目を通しています。
結局立川で予約してしまいました。ミーハーな僕を笑ってください(笑)
現在10人待ちです。
「シッタカブッタ」はちょっと読んだ事あります。辛辣なところとほのぼのするところとバランスがとれてて面白いですよね。
「こいぬぐんだん」の方は知りませんでした。オススメありがとうございます。