2007年12月16日

今日の早川さん COCO(2007/12/10読了)

 読書好きの女性たちの生態(生態?まるで動物園の熊か猿みたいじゃないか)を赤裸々に(自爆ギャグで、と言った方がいいね)描いたのが、この漫画だ。書店の新刊コーナーに平積みされている時は、表紙が漫画キャラでその上ずいぶんと薄い本なのでかなり軽めの内容の小説(ラノベと正直に言おう)だと思って手にしてみれば、なんのことはない。漫画だった。ではなぜに小説の新刊本コーナーにあるの?

 早川書房から出た「今日の早川さん」というタイトルだから、なるほど本好きのコアな本のうんちく本かと思った。それにしては4コマ漫画で吹き出しも少ないから、蘊蓄というほどの情報量はなさそうだ。そこが「本の雑誌」掲載中の吉野朔実の〈本についての漫画エッセイ〉とは基本的に異なる。では何なのかと言えば、本をひたすらジャンルで読んでいるコアな趣味の人間(マニア、あるいはオタクと言ってしまおう)の方をおもしろおかしく描いた作品だ。だからこの本を読んで、読むべき本の参考にはあまりならない。まあ、そういうすけべ根性をもって読もうと思うところが、同じく本読み・読書好きのサガと言えるが…。

 ではなぜ読むかと言えば、本読みの〈同病相憐れむ〉ところに一枚加われる自分を確認して笑えるからだ(こういうのを自虐趣味と言う)。女性たちばかりなので、恋愛話で一喜一憂したり互いに足を引っ張ったりするネタが多いところは男の身としては共感しにくいが、確かにマニアックな趣味にはまればはまるほど、恋愛の可能性からは遠ざかることはうなづける。映画館に年間200本近く映画を観に足繁く通ってた当時は、隣に座った女性との偶然の出会いを妄想することもあったが、早川さんが「年間200日以上も電車に乗っているが、一度もこんなこと(いい男との出会い)がないのはなぜだ?」と嘆くように、間違ってもそんな出会いはなかった(ねえよ、そんなこと絶対に)。

 「スターウォーズ」をSFとは絶対に認めないというのがSF読みの早川さんの基本姿勢だというのなら、あれは映画になってないというのが映画観(ってそんな言葉はないか。映画フリークかな)の僕の考えだ。いずれにしてもタルコフスキーを切り札に隠しもっているところなどは微笑ましいではないか。タルコフスキーはSFを自らの映画を作るダシにしたとも言えるのだが、そこは突っ込まないでおこう。

 映画にしても読書にしても、なるべくジャンルの囲い込みをしないで広く読みたいと思っているくせに、〈浅く〉ではなく〈深く〉読みたいと思う欲張りな質なので、微妙にどの登場人物にも共感してしまう(いやホラー読みの帆掛さんだけはダメだな。映画も小説もホラーは苦手だ)。だがそうなると、なぜミステリー読みがいないのかちょっと気になる。昔からミステリー読みとSF読みがライバルだった時期があったのだが、今やSFやミステリーのクロスオーバーは当たり前となったのだろうか?

 昔の話で恐縮だが、高校の時に文芸同好会なるものに所属していた。同じクラス3人で入部したが、この3人は僕が本格ミステリーと純文学読みで、あとの2人がSF・漫画読みと哲学・思想読みだった。現代思想にかぶれた後者からはいろいろと読書の影響は受けたが、ついにSF読みの友人からはオススメの本を聞かなかった。まったく関心がなかったのだ。逆に彼からは年賀状で「君からオススメの『Yの悲劇』を読了しましたが、やはり僕のミステリー嫌いを改めさせるに至りませんでした。なぜにあそこまで明白な犯人を最後まで疑わないのでしょうか」と挑戦的な感想を返されてショックだった。SF読みにはミステリーの良さなどわからない、と〈頑な〉になった。やはり彼のオススメは聞かない事にした。

 しかし高校の頃は、好きな本の感想を言い合える友人が少なくとも3人はいて幸せだった。本書に描かれている彼女たちも互いのジャンルに関心がなくても、互いの存在は認め合っている。読書好きにはまさに理想的な人間関係だ。そこが読んでいてとても幸せな気分にさせてくれるのだ。

 ところでSF読みの早川さんは早川書房から、純文学読みの岩波さんは岩波書店から、ラノベの富士見さんはもちろん富士見書房から、それぞれ名前が採られている。わからないのはホラーの帆掛けさんとレア小説の国生さんの2人だ。ホラーだから帆掛を「ほらあ」とでも読ませるのかと思ったが浅はかな考えだった。ネットで調べたところフルネームの「帆掛船(ほかけふね)」で創元推理文庫から採られているのだそうだ。創元のホラーには以前は帆掛け船のマークがついていた(らしい)。

 一方の国生さんもフルネームの「国生寛子(ひろこ)」で考えないとわからない。寛子からカンコというあだ名で作中呼ばれている。ここまできてようやく「国書刊行会」から採られていると納得できる。前の3人と比べると、帆掛も国生もずいぶん名前の付け方が凝っている。作者COCOの本好きとしてのセンスが光っている。 
 
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posted by アスラン at 03:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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