2007年12月03日

沈黙者 折原一(2007年12月1日読了)

 久しぶりの折原作品。時々読みたくなる。時々読みたくなる理由はわかっている。自分のミーハー心をくすぐられるのだ。(まっとうでない)と言うと語弊があるが、いわゆるキワモノ的な要素が詰まっているミステリーだからこそ、扇情的な設定にくすぐられる。

 最新作「黒い森」が、殺す側の男と殺される側の女とで、本の両側から読める趣向だとめざましテレビで言っていた。著者にとっては今回が初めての趣向ではないが、僕自身は未体験なので借りようかと思ったが図書館は長い待ち行列。とりあえず借りたのが本書だ。

「〜者」シリーズと言えばいいのか。実際に起きた事件のルポルタージュ形式で、埼玉県の地方都市で起きた生々しい一家皆殺し殺人(ただし娘だけ残る)が描かれていく。やはり単純なミステリーというよりは、ホラーにも近いスリラー的要素に煽られる。

 かと思うと東京・池袋では(沈黙者)と呼ばれる男が、万引きをして警官に暴行を働いたという微罪で、氏名を名乗らなったおかげでずるずると司法上の網に絡め取られて懲役に服する羽目に陥る。この〈沈黙者〉が何者かが読者には隠されているが、当然ながら皆殺し殺人事件との関係者もしくは犯人ではないかというように、いつものように思わせぶりにストーリーは展開していく。

 終盤でオチが見えてきた段階で、それほど驚愕な結末とも思えなかったし、折原作品としては可もなく不可もなくといった感じなのかなぁ。それより「沈黙の教室」のようなケレン味たっぷりのオカルトじみたスリラーの方が気楽に楽しめるかもしれない。

 真に〈驚愕させられた〉と言えば、実は〈沈黙者〉の事件こそが現実に起きた事件をそのまま採用しているという事実である。解説ではないが、本書の最後に佐野洋が書いた推理日記が引用されていて、僕を含めた読者が本書を読みながら当然のごとく思う邪推をそのまま書き留めている。すなわち、万引きをしただけで、いくら名前を言わないからといって懲役何年もくらうことなどあり得ないだろう。何故もっと著者は読者を納得させるような罪状にしなかったのかという、しごくもっともな疑問を佐野は推理日記に書いた。

 そして、さらに続く日記で著者・折原からの手紙を紹介している。それには、そういう事件があって、氏名・住所をあかさず氏名不詳のままに万引きの罪を認めて服役した人物がいたという事実を明かしている。これこそが、本書を読んで一番びっくりさせられたことなのだ。

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posted by アスラン at 12:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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