まず丸の内ルーブルの「6デイズ7ナイツ」(no.7)から。
アン・ヘッシュはニューヨークで雑誌の副編集長をしていて、恋人に誘われ6泊7日のバカンスを南国の島で過ごす。そこへタヒチでの仕事が舞い込み恋人を置いて出かけるが、ハリソン・フォードの操縦するチャーター機が墜落して二人は無人島に着陸する。脱出は不可能、おまけに密輸入をする海賊に見つかり追われるはめになる。
異常な状況でいがみあっていた男女が次第にひかれあっていくストーリーはハリウッドでは目新しくもない。何か工夫があるはずだと思って観たが最後まで何もない。
海賊もおバカな奴等で自分で打った砲弾で簡単に自滅してしまう。ラブストーリもいがみあいがあってこそ盛り上がるというのに、早々にアン・ヘッシュはハリソン・フォードになびいてしまう。ハリソン・フォードもどうみても最初はすけべでにやけたオヤジにしか見えない。途中から俄然インディージョーンズ化してくるけれども。
島の描き方も特に美しくもなく神秘的でもない。
シャンテ・シネで「ワン・ナイト・スタンド」(no.6)を観る。
いかにもニューヨークらしいラブストーリー。とにかくお洒落だ。
冒頭のタイトルや出演者の文字のデザインから、モダンダンスをコラージュした映像、それにかぶさるジャズ音楽。すべてニューヨークらしさが息づいている。
ナスターシャ・キンスキーとウェズリー・スナイプスのホテルでの自然な出会い。互いに意識しながらひょんなことから会話をかわす。出会いのきっかけに万年筆が重要な小道具として使われている。その演出のなまめかしさ。思わずうまいとうなってしまう。
偶然が味方して二人は一夜かぎりの恋に落ちる。一年後、エイズの末期患者となった友人を見舞った際に、彼の兄の妻であるキンスキーと再会してふたたび求め合うようになる。
エイズで死にゆく友人との別れと思いがけない情事の相手との再会。死と生のはざまでスナイプスの心は大きく揺すぶられ、人生も変わっていく。
白人と黒人のカップル、ゲイ、エイズなどを織り混ぜた辛口のラブストーリーだが、ラストは意外とすっきりとして微笑ましい。
東劇で「ニンゲン合格」(no.5)を観る。
このところ立て続けに新作を送り出している黒沢清の新作。'97年の「CURE」の出来栄えの良さは記憶に新しい。
今回は10年ぶりに昏睡状態から覚醒した24才の青年が、眠っていた間にバラバラになった家族を再生するために牧場を始める。ほんの一瞬ではあるがバラバラだった家族たちが集まり一家だんらんの時を過ごし、再びそれぞれの今の人生に戻って行く。
そして青年は自分の残した痕跡を噛みしめるかのように死んでいく。
「俺、存在した?ちゃんと存在した?」
最後に問いかける彼の心の叫びが切ない。不思議な味わいで、今までのどれとも似ていない映画。
強いて言えば北野武や台湾のツァイ・ミンリャンのような静謐な映画のテイストが感じられる。
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