Eメールが取り持つ純愛を描いたラブコメディだが、思いのほかオーソドックスなストーリーで食い足りない。というかEメールのやりとりそのものが、機能は最先端技術でありながら形態は一時代前に逆戻りしたかのような古臭さを感じさせるから、オーソドックスな演出にならざるをえないのかもしれない。
それにしても一見すると現実的なテーマを取り上げたにしては嘘くさいのは、家がごくごく近所というだけでなく商売がたきという設定だ。しかも片方は大手ブックストアの御曹司、片方は昔からある街角の本屋さんの娘だというに至っては、古きよきハリウッド的な設定そのままだ。いくらなんでもちょっとやりすぎだろう。
アメリカの今時のブックストアが、コーヒーを飲みながら何時間でも本を読めるというスタイルが一般的になっているという事情がわかって面白かったけれど。
それと実は僕はメグ・ライアンをあまり好きではないらしい。「フレンチ・キッス」の時はちょっとよかったのにね。彼女の演技にはちょっと感情移入しにくい。下手とは言わないが...。
引き続いてシネマスクエアとうきゅうで「ニノの空」(no.9)を観る。
フランス映画だが、きどった雰囲気のない不思議な暖かさをもつ映画だ。監督のマニュエル・ポワリエはペルーからの移民の子孫だそうで、フランスに対する愛着と移民としての批評に満ちている映画だ。
主人公のニノはイタリア生まれのロシア人で、あてのない旅をして暮している。スペイン人で靴のセールスマンのパコの車をヒッチハイクして車ごとだましとった事がきっかけで、二人は意気投合して旅にでることになる。
二人ともフランスではマイノリティとしての社会的位置に甘んじていて生活は楽ではない。落ち着ける居場所と心を癒せる女性を求めてあてどない旅を続け、様々な人々と触れ合いながら傷つきなぐさめ、そしてまた旅にでる。
もてないニノのためにと、二人でアンケートと称して理想の女性を探し出す話は、馬鹿々々しくもあり同時にたまらなくせつない。そして最後に出会う港町の女性は、ニノに会って自分が本当に孤独だと分かったと告白する。
このクライマックスの心の交流はまるでファンタジーのようだが、孤独な者どうしが綴ってきた物語だけに真実を描いているように感じられる。
食事をはさんで新宿ジョイシネマ1で「ジョー・ブラックをよろしく」(no.8)を観る。
クレア・フォラーニが瑞々しくてとてもきれいだ。ブラッド・ピットも久々に好青年そのままで登場。だから冒頭のコーヒーショップの出会いはなかなか楽しい。
一転して、死神が青年の体を借りてアンソニー・ホプキンスの前にジョー・ブラックとして現れる。ジョーとしてのブラピは3枚目としては及第点はあげられないが、いつものオーバーアクションがないのでいい。
ピーナツバターをなめて喜んだり、重役会議でクッキーを頬張ったりするエピソードはとぼけた味わいを出していて楽しい。ただやはり全体的に古めかしいのと、会社乗っ取りを画策するクレアのフィアンセの設定などが陳腐だ。
パンフレットの解説によると'34年の「明日なき抱擁」のリメイクだそうだ。さらに付け加えると「ユー・ガット・メール」も'40年の「桃色の店」の脚色だと知ってビックリ。
何故か2本とも雰囲気が似ていると感じた。
内容は全く違うのにトム・ハンクスとアンソニー・ホプキンスの口から、愛についてのまったく同じ格言がこぼれる。
どちらもエンディングに「オズの魔法使い」の挿入歌で有名な「虹の彼方に(オーバー・ザ・レインボウ)」が使われている。
これはどうも偶然ではなく、ハリウッドが深刻なネタ不足に陥っているかららしい。なにはともあれ上映時間3時間が2時間になればすっきりして面白かった。ちょっと勿体をつけすぎた。
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