2005年07月30日

2005年「新潮文庫の100冊VS.ナツイチVS.発見。角川文庫」

 夏のキャンペーン「VS.シリーズ」番外編

 きっと夏のキャンペーンそのものの特徴については各社それぞれのホームページを見ればいいし、それぞれに思い入れのある方々のブログでの紹介が十分過ぎるほどあると思う。

 だから「2004年VS.2005年」の記事では、消えた本、新しく入った本について注目して、昨年と今年で変わらなかった本についてはなんの言及もしていなかった。

 変わらなかったところには、村上春樹や村上龍が出てくる事は言うまでもないし、石田衣良や川上健一や椎名誠が出てくる事も予想できるし、相田みつをが毎年のように入ってるのはなんなんだろうとしかめ面をする人がいる事も確かだろう。そんな当たり前の事、毎度の事を確認してもしょうがない。

 ただ今回とりあげた3つのキャンペーンで重なっている作家や作品を眺めておくのも面白いかなぁと最後の最後に思った。

 で、当然ながら重なっている作家は、さもあらんと思える今を代表する人達、まさに旬の人達だったり、或いはお札にも顔を出した文豪と言われてしまう作家だったり、生き方は生涯後ろ向きだったのに大変前向きな作品ととことん後ろ向きの作品でそれぞれ代表作を残した作家だったりする。

 もちろんそれだけではなく、どの会社も作品を入れたくなるような手堅さ、読みやすさ、口当たりのよさなども条件に入れてもいいだろう。

 そうそうもう一つ重要な要素がある。多作である事。メインの出版社以外にあちこちの出版社の依頼をうけるだけの筆力と筆の速さを持ち合わせている限られた才能こそが今回のリストに名をつらねる事ができる。

以下に3社共通の作家2社共通の作家のリストをあげる。
色つきの作品は重なっているものである。(ピンクは3社共通作品、青は2社共通作品)

 今回調べてみて、当然というか作家は重なっていても挙がっている作品の重なりはほとんどない。今を代表する作家の方たちの著作は、きちんと出版社ごとに作品の棲み分けがなされている。作品が重なっているのは、すでにスタンダードとなっているものばかりである。

[3社共通]
江國香織 
 神様のボート 新
 泳ぐのに、安全でも適切でもありません ナ
 薔薇の木、枇杷の木、檸檬の木 ナ
 なつのひかり ナ
 落下する夕方 角
 冷静と情熱のあいだ Rosso 角
恩田陸
 図書館の海 新
 六番目の小夜子 新
 光の帝国 常野物語 ナ
 ネバーランド ナ
 ドミノ 角
角田光代
 キッドナップ・ツアー 新
 みどりの月 ナ
 幸福な遊戯 角
 ピンク・バス 角
 あしたはうんと遠くへいこう 角
太宰治
 人間失格 新ナ角(角川のみ「人間失格・桜桃」)
 斜陽 ナ
 走れメロス 角
夏目漱石
 こころ 新ナ角
 坊っちゃん 角
宮部みゆき
 火車 新
 R.P.G ナ
 今夜は眠れない 角
 夢にも思わない 角
 あやし 角

[2社共通]
赤川次郎
 ふたり 新
 神隠し三人娘 怪異名所巡り ナ
芥川龍之介
 蜘蛛の糸・杜子春 新
 羅生門・鼻・芋粥 角
小川洋子
 薬指の標本 新
 偶然の祝福 角
 刺繍する少女 角
乙一
 天帝妖狐 ナ
 暗黒童話 ナ
 夏と花火と私の死体 ナ
 失踪HOLIDAY 角
 きみにしか聞こえない 角
 さみしさの周波数 角
 GOTH 夜の章/僕の章 角
京極夏彦
 どすこい。 ナ
 嗤う伊右衛門 角
 巷説百物語 角
 続巷説百物語 角
小池真理子
 恋 新
 柩の中の猫 ナ
さくらももこ
 さくらえび 新
 まる子だった ナ
 さるのこしかけ ナ
 たいのおかしら ナ
塩野七生
 ローマ人の物語1・2 新
 おとな二人の午後(五木寛之対談) 角
重松清
 きよしこ 新
 ナイフ 新
 疾走 上・下 角
司馬遼太郎
 燃えよ剣 上・下 新
 新選組血風録 角
 司馬遼太郎の日本史探訪 角
辻仁成
 嫉妬の香り ナ
 冷静と情熱のあいだ Blu 角
壺井栄
 二十四の瞳 新角
天童荒太
 幻世の祈り 家族狩り 第一部 新
 あふれた愛 ナ
坂東眞砂子
 曼荼羅道 ナ
 13のエロチカ 角
東野圭吾
 白夜行 ナ
 分身 ナ
 あの頃ぼくらはアホでした ナ
 鳥人計画 角
三島由紀夫
 金閣寺 新
 不道徳教育講座 角
群ようこ
 きもの365日 ナ
 二人の彼 角
山本文緒
 あなたには帰る家がある ナ
 シュガーレス・ラヴ ナ
 ファースト・プライオリティー 角
 ブルーもしくはブルー 角
 絶対泣かない 角
 恋愛中毒 角
唯川恵
 ため息の時間 新
 人生は一度だけ。 新
 肩ごしの恋人 ナ
 病む月 ナ
 めまい ナ
 イブの憂鬱 ナ
吉本ばなな
 キッチン 新
 哀しい予感 角
カフカ
 変身 新角
ジュール・ヴェルヌ
 十五少年漂流記 新角
コナン・ドイル
 シャーロック・ホームズの冒険 新
 シャーロック・ホームズ傑作選 ナ

蛇足ながら、ちょっと各社の力の入れ具合などを比較してみよう。

まず3社共通の作家が分かりやすいだろう。
 「新潮文庫の100冊」(以下、新)、「ナツイチ」(以下、ナ)、「発見。角川文庫」(以下、角)
と略す。

[江國香織]
 ナ:一番力が入っていて見開きで紹介。オリジナルエッセイがファンにはうれしい!
 角:「落下する夕方」「冷静と情熱のあいだ」の2冊。やっぱ映画とのコラボじゃん!(どういう意味って思った方はこちらをまず読んでください。)
 新:作家100人1冊ずつなので特に作家に肩入れなし。よって特徴もなし。
[恩田陸]
 新:作家に肩入れなしと言った先から2冊が入る肩の入れ方。今もっとも旬だからか。
   著者紹介の記述が泣かせる!
   =>「夜のピクニック」は「六番目の小夜子」「球形の季節」とゆるやかな三部作をなす。
 ナ:2冊紹介。著者紹介に「夜ピク」と「六小夜子」の記述が入る。
   やはり他人のふんどしで相撲を取る方針のようだ。
 角:「ドミノ」しか恩田作品はない。だから当然この1冊。かなり悲しい
[角田光代]
 新:直木賞受賞については記述なし。無視してるのは何故?
 ナ:直木賞受賞きちっと記述あり。やっぱりね。
 角:今回もっともフィーチャーしている作家。デビュー作「幸福な遊戯」を持っている強みか。
   (注)直木賞受賞作「対岸の彼女」はまだ文庫化されていない。
[太宰治]
 「人間失格」のコピーを比較してみると…
 新:この主人公は自分だ、と思う人とそうでない人に、日本人は二分される。
 ナ:そこにあるのは太宰自身の姿。死を思う作家の独白劇。
 角:世代を超えて読みつがれる太宰治の自伝的小説
  新潮文庫のコピーの圧勝!
[夏目漱石]
 読書感想文の定番「こころ」ですが、
 新:友情と恋の、どちらかを選ばなくてはならなくなったら、どうしますか…
 ナ:エゴイズムとは?鋭く深く、人間の心の葛藤を描いた名作。
 角:自我の奥深くに巣くっているエゴイズムと罪の意識を追究
  さて読みたくなるのは新潮文庫か。でももうちょっというと男たちの同性愛的つながりを読む本だと書けば、もっと読みたくなる?
[宮部みゆき]
 新:「火車」、ナ:「R.P.G.」、角:「今夜は眠れない」「夢にも思わない」「あやし」
  いやあ、このメンツでいいんですか、宮部さん

2社共通はさらっと面白いところをひろってみると、

[京極夏彦]
 角:コピーが面白い。完全に講談社文庫を意識した比較広告だね。
   =>「京極堂シリーズ」と「巷説シリーズ」あなたはどちらから読む?
[乙一]
 角:解説が秀逸。
   =>「切なさの達人」乙一は、「誰にも分かってもらえない」という孤独感と、誰かとつながることの喜びを鮮やかに描き出す名手だ。
[山本文緒]
 角:「ブルーもしくはブルー」「恋愛中毒」。やっぱりドラマ化されたものばっかやん。

最後に、新潮文庫と角川文庫のガチンコ対決
数ある名作から何故こんなにもぶつかるのだろう?絶対意識してるんだろうな、両者とも。
さて両者のコピー比較です。
口角泡を飛ばす新潮文庫と、意外と冷静に要点を簡潔に伝える角川文庫
あなたはどちらが好きですか?

坪井栄「二十四の瞳」
 新:こんな先生、こんな生徒だったらなぁ。だからこそ、皆に読んでもらいたい。
 角:瀬戸内海を舞台に戦争の不幸を訴えた名作
カフカ「変身」
 新:読み始めてすぐに「何故だ?」と思い、読み終えた直後に「何故だ!」と叫ぶ。
 角:非現実的でリアルな悲哀を表現
ヴェルヌ「十五少年漂流記」
 新:しなやかさとしたたかさ、そして仲間。子どもだけの力で、どこまでやれるか?
 角:冒険小説の元祖とも言うべき世界的名著

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posted by アスラン at 00:56| Comment(2) | TrackBack(1) | 夏の文庫フェア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 こんにちは。
昨日、待ち合わせまでの時間がたくさんあったので、本屋さんに行って「新潮文庫の100冊」と「ナツイチ」をもらって、時間つぶしに読んでいました。
あの少ない文字数で簡潔に要点を書ける人ってすごいなぁって思います。
それを読んだ人が、その本を読みたくなるような、そんな書き方が出来る人は素晴らしい!
アスランさんも、結構いけるかも。
私は、高校生の頃に読んだ「こころ」や「人間失格」を、また読みたくなりました。
Posted by とも子 at 2005年07月30日 09:45
とも子さん、「発見。角川文庫」は無かったんですか?

僕の書評がいけるかどうかは別として、簡潔でも冗長でも相手に自分の好きな本への熱い思いを伝えられたらうれしいなぁと思います。

太宰は高校の頃にはまったんですが、その後なかなか読む機会がないですね。
漱石は定期的に読み返すんですが。
Posted by アスラン at 2005年08月01日 01:10
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