15.1.10 It is not enough to read great books once only, however carefully.前回のthoughを使った例文は「副詞節を導くthough本来の用法とは別のものであり、主語と動詞を補うという考え方では読めない形である」と、伊藤先生は解説していた。「この用法には他にもifやhoweverを使った場合がある」とも言っていて、今回の例文はそれに該当する。これを〈副詞節を導くhowever本来の用法〉と〈副詞節を導くhoweverとは別の用法〉の順に考えていこう。
(訳) すぐれた書物は、どんなに注意深く読むにしても、一度読むだけでは十分ではない。
〈副詞節を導くhowever本来の用法〉主節がThe scientist should be …of his timeで、副詞節がhowever abstract his subject may beになる。このhoweverで始まる副詞節を、省略しながら主節に挿入すると(A')になる。
(A) The scientist should be regarded as an element in the social picture of his time, however abstract his subject may be.
((A)の訳) 研究目的がどれほど抽象的なものであろうと、科学者一人一人は現実の社会の中のピースにすぎない。
(A') The scientist, however abstract his subject, should be regarded as an element in the social picture of his time.
((A')の訳) 科学者一人一人は現実の社会の中のピースにすぎない、研究目的がどれほど抽象的なものであろうとも。
そして今回の例文は〈副詞節を導くhoweverとは別の用法〉に該当する。
〈副詞節を導くhoweverとは別の用法〉この時のhoweverを〈副詞節を導くhowever本来の用法〉だとする。To不定詞に副詞節をかけるのは無理なので表現を変えて省略をやめると(B')のようになる。
(B) It is not enough to read great books once only, however carefully.
(B') It is not enough to read great books once only, however carefully you may read them.本書では例文すなわち(B)を(B')だと解釈して次のように訳している。
((B')の訳) すぐれた本はどんなに注意深く読んだとしても、一度読むだけでは十分ではない。この訳だとhowever carefully …が〈howeverが導く副詞節の用法〉であると解釈しているようにしか読めない。しかし、前回(15.1,9)のthoughが「前提となる文脈」を表現しているのに使われていて、それが現状とは異なる事を示しているように、今回のhoweverも「前提となる文脈」に対する表現であって、現状との対比を際立たせている(thoughのように前提が異なっているのではない)事を示していると考えるべきだろう。その事が分かるように二文に分けたのが、以下の(B''-1)と(B''-2)だ。
(B''-1) However carefully you read great books, It is not enough.ここで重要なのは(B''-1)が前提となる文脈だという点だ。前提となる文脈では「すぐれた本はどんなに注意深く読んでも十分ではない」という事が主張されていて、本書の((B')の訳)とは明らかに前提が食い違っている。
(B''-2) It is not enough to read great books once only.
さらに(B''-1)と(B''-2)は比較対象となっていて、15.1.9のようにthoughが使われていれば(B''-1)と(B''-2)は相反する(向きが異なる)事になるが、howeverの場合は二つが同じ向きである事が主張されている。強いて言うと、前提となる文脈(B''-1)が(B''-2)を包含している事を例文は表現している。
現在の主張(B''-2)に前提となる主張(B''-1)を並置すると以下の(B'')になる。
(B'') It is not enough to read great books once only. However carefully you may read them, it is not enough to read them.さらに、(B'')のように単に二つを並置する形式から、挿入形式(添加)を取り入れた構文に変換すると、以下の(B''')になる。訳文は、前半(現在の主張)と後半(前提となる主張)を比較して互いの違いが際立つように変える。
((B'')の訳) すぐれた書物は一度読むだけでは十分とは言えない。すぐれた書物はどんなに注意深く読んでも十分とは言えないのだ。
(B''') It is not enough to read great books once only, however carefully you may read them, it is not enough to read them.さらに前半と重複する部分を省略すると(B’'’’)になる。訳は(B''')と変わらない。
((B''')の訳) すぐれた書物は一度読むだけでは十分とは言えない、そもそも、すぐれた書物はどんなに注意深く読んでも十分とは言えないのだ。
(B'''') It is not enough to read great books once only, however carefully.これが例文の訳になる。あとは日本語として推敲を行う。
((B'''')の訳) すぐれた書物は一度読むだけでは十分とは言えない、そもそも、すぐれた書物はどんなに注意深く読んでも十分とは言えないのだ。
(推敲訳) 名作は一度読めば分かるものではない。そもそも、どれほど入念に読んだとしても分かるとは言えない。



