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    2025年10月04日

    英文解釈教室の訳文を書き直す(15.1.5)

    Chapter15 挿入の諸形式「@語句の挿入――andとif」より。
    15.1.5 Some books are to be read only in parts; others to read but not curiously, and some few to be read wholly, and with diligence and attention.
    (訳) 書物の中には部分的に読めばよいものもあるし、読むべきではあるが、しかし好奇心を持つ必要はないものもある。そして何冊かの少数の書物は、全体を入念に注意深く読むべきなのである。
     いきなり例文の難易度があがった。これを当時の受験生が読み解くのはかなり難しいと思う。いや、僕自身も伊藤先生の解説抜きの初見では読み間違ってしまった。この例文はPUNCTUATION(句読法)の正しい理解がないと、どのような構文になっているか分からないと思う。にも関わらず、伊藤先生の解説は非常にあっさりとしたもので、句読法の勘所がまったくスルーされてしまっている。なので改めて例文の構造をゆっくりと考えてみよう。
    (A-1)Some books are to be read only in parts;
    (A-2)others (are) to read (but not curiously)
    (B),and some few (books are) to be read wholly, and with diligence and attention.
     are to be readという表現が繰り返し使われているが、二度目以降はそれぞれ省略されている。そこをふまえると(A)と(B)が等位接続詞andでつながれているという事が分かる。(A)と(B)が区切られている事(andを介した並列関係である事)がはっきりするようにカンマが挿入されている。さらに(A)にはセミコロンが使われていて前半も後半も完全な文なので、(A-1)と(A-2)という並列関係が成立する。

     実はここまででbutの存在が非常にやっかいだ。andが等位接続詞であれば、このbutも等位接続詞の可能性がある。では、どことどこが並列なのか。直前のothers to readと直後のnot curiouslyとでは釣り合わない。もうちょっと前方を長くしてSome books are to read …others to readとnot curiouslyの並列関係と考えてもやはり釣り合わない。結局、(A)と(B)の並列関係が見えてさらに(A-1)と(A-2)の並列関係が見えてくると、but not curiouslyは(A-2)の一部としか考えられない。だとすると(A-1)のonly in partsがSome books are to be readを修飾する副詞句であるのと同じように、but not curiouslyもまたother to readを修飾する副詞句である事になる。

     ここまではいいとして、僕はbut(=except)という前置詞だと解釈してしまった。よくよく考えれば前置詞の目的語は名詞でなければならない。それにbut not だと二重否定の前置詞句(〜でないものを除いて)になってしまって意味的にもナンセンスだ。ここにいたって伊藤先生は、前回の例文15.1.4でのandと同じようにbut not curiouslyも挿入句だと解説する。そう言われれば確かにそれ以外には考えられないのだが、何故そう思えるのかについては答えてくれてはいない。そもそも最初に伊藤先生が本書で挙げた例文は"We had to judge, and very hastily"であり、
    何故and very hastilyが挿入句に見えるかと言えば、andの前後が単なる並列関係には見えない(釣り合わない)事を文意から解釈できるからだ。さらに言うとカンマの存在が「挿入句である」という解釈を補強してくれている。しかし今回の例文の(A-2)ではカンマが存在しないので、文意だけから通常の等位接続詞butの用法とは違っている事にたどり着かなければならない。そこが経験不足の受験生や僕には難しい。

     では何故butの前にカンマがないのか。簡単な理由は「これだけ短い挿入句なのでカンマは不要(なくても挿入句と分かる)」という事だろう。それ以外にも、「カンマがある事で全体の構成(構造)が分かりにくくなる」という事もあるかもしれない。(A)と(B)の区切りが",and"になっていて、カンマが(A)と(B)の並列関係を補強しているのだが、その直前が",but not curiously, and …"となると「等位接続詞どうしが干渉して全体の構成が見えにくくなる」という配慮が働いたかもしれない。あるいは(A-1)と(A-2)を区切るセミコロンとカンマは、区切れの強弱が「セミコロン<カンマ」という関係になるので、「"others to read, but not curiously"のカンマの前後で文(節)が区切れるように見えてしまう」という配慮が働いたかもしれない。いずれにしろ、理詰めで正解にたどり着くのは難しい。よく「英語にはPUNCTUATION(句読法)があるのに、日本語にはない」と言われるが、最終的に「カンマをどこに打つのか」という問題は「読点をどこに打つのか」と同様に一筋縄ではいかない。PUNCTUATIONの理解は必要だが、それで十分という訳ではないのだ。

     butの挿入句の問題を解決すれば残りは簡単かと思えば、さにあらず。もう一山残っている。(B)の末尾に出てくるwholly, and with diligence and attentionの部分を伊藤先生は「andは対等なものを結ぶ用法」と解説していて、挿入句ではないと見なしている。ここで受験生や僕はまたまた悩まされる。確かに文意から捉えると対等な(釣り合いがとれる)関係に読む事が可能だが、では何故wholly and with diligence and attentionではなくカンマが使われているのか。これは "We had to judge, and very hastily"と同じように、挿入句である事を補強する役目を果たしているのではないのか。それに形式的に言っても、(A-1)に出てくるbut not curiouslyが挿入句であるのに呼応して、(B)でもand with diligence and attentionが挿入句になっていると考えた方がスッキリする。これについては最終的な推敲でもう一度考えることにする。とりあえず例文の構造は、以下のように修正しておく。
    (A-1)Some books are to be read only in parts;
    (A-2)others (are) to read (but not curiously)
    (B),and some few (books are) to be read wholly(, and with diligence and attention).

     ここから訳文を推敲していく。あらためて訳文を確認しておこう。
    (訳) 書物の中には部分的に読めばよいものもあるし、読むべきではあるが、しかし好奇心を持つ必要はないものもある。そして何冊かの少数の書物は、全体を入念に注意深く読むべきなのである。
     (A)の方はsome…others…という典型的な表現になっている。なんとなくsomeは一部だからothersは残りを指していると思ったのだが、someとは違う一部を指すようだ。
    [ランダムハウス英和大辞典]
    Some are cheerful and others are not. 陽気な人もいればそうでない人もいる。
    [ジーニアス英和大辞典]
    We have three colors: some are red, others are green, and the rest are blue. 色は3色あります。いくつかは赤で、ほかのものは緑で、残りのものは青です。
    [ジーニアス英和辞典]
    Some books are to be tasted, others to be swallowed, and some few to be chewed and digested. 味わうべき本もあれば一気に飲みこんでしまうべき本もある。また咀嚼し、消化すべき本も少数ながらある。
     2番目のジーニアス英和大辞典の用例を見ると、othersが「残り」を意味しない事は一目瞭然だ。訳文は日本語としてどうかなと思うが、othersの意味を理解するには最良の用例だ。そしてなんとジーニアス英和辞典の用例は、今回の例文そのものと言ってもいい。ただしsome books、others、some fewの3つが並列関係になっているところが例文とは異なる。
    ((A)の推敲訳) 本には読みたいところだけを読めばいいものがある。あるいは、とりあえずは読んでおいた方がいいものもある。ただし興味津々になる必要はない。

     (A-1)は必要なところを拾って読む、(A-2)は読まないよりは読んでおく方がいい、という本が含まれている。それに対して(B)では全部を読む方がいいという本について書かれている。微妙なのだが、(A-2)を「一応は全部(ひととおり)読む」と解釈するならば、(B)は「全部を入念に読む方がいい」という本について書かれている事になり、最後のwholly, and with …の部分の「andは対等なものを結ぶ用法」だという伊藤先生の解説が正しい事になる。ただ、僕自身は(A-2)は「読まないよりも読め」という選択の問題だと捉えたいので、最後の, and with…は挿入句だと考えて推敲する。 
    ((B)の推敲訳) 全部読んだ方がいいものは、ほんの一握りの本だ。できれば、そういう本は入念に読んだ方がいい。
     以上(A)と(B)の推敲訳をまとめる。
    (全体の推敲訳) 本には読みたいところだけを読めばいいものがある。あるいは、とりあえずは読んでおいた方がいいものもある。ただし興味津々になる必要はない。全部読んだ方がいいものは、ほんの一握りの本だ。できれば、そういう本は入念に読んだ方がいい。
     さらに日本語として分かりやすい表現に直していく。特に(A-1)(A-2)(B)それぞれがどのような本に限定しているのかが分かるように言葉を補っていく。
    (全体の推敲訳) 本のなかには読みたいところだけ拾って読めばいいものがある。あるいは、読まないよりは読んでおいた方がいいものもあるが、そういう本は特に興味をそそられなくてもよい。まるまる一冊を全部読んだ方がいい本は、ほんの一握りにすぎない。できれば、そういう本は入念に読んだ方がいい。


    (メモ)
    in parts ところどころ、あちこち、部分的に
    curiously 興味ありげに、物珍しそうに、《古》丹念に
    be+to 不定詞
     (1)…する予定である、することになっている
     (2)…すべきである
     (3)《通例否定文》…できる
     (4)《条件節内で》…するつもりだ、…したい
     (5)《目的》…するためのものである
     (6)《実現性の乏しい仮定》《条件節内で》もし(万一)…するとしたら
    diligence
     不断の努力、勤勉、精巧
     注意、安全配慮、相当な注意・配慮
    attention
     (…への)注意、注目、傾聴、留意、注意力
     丁重さ、いんぎん、親切、好意、敬意、丁重な好意
    posted by アスラン at 13:10| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 英文解釈教室を書き直す | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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