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    2025年09月09日

    英文解釈教室の訳文を書き直す(15.1.3)

    Chapter15 挿入の諸形式「@語句の挿入――andとif」より。
    15.1.3 You can examine them carefully under a good magnifying glass, or, better still, through a microscope lens.
    (訳) 良質の拡大鏡や、このほうがよいが、顕微鏡のレンズを通して、それらを注意深く調べることができる。
     意味はもちろん通じるけれど、日本語としてはしっくりこない。特に挿入句の「このほうがよいが」は言い方が適切とは言えないし、リズムも悪い。そこを踏まえて日本語を推敲していく。

     英語の面白いところはa magnifying glass(拡大鏡)もa microscope(顕微鏡)も同じ目的をもった道具なのに、片方はunderで受け、もう片方はa microscope lensをthroughで受けている点だ。日本語だとどちらも区別無く道具格の助詞「で」で受けるところだと思う。そう思って電子辞書で調べてみると、ウィズダム英和辞典には以下のような用例が見つかった。
    take a look at a picture with [through] a magnifying glass 虫めがねで絵画を見てみる。
     これは肯ける。確かに顕微鏡は2枚のレンズを組み合わせて筒状になった部分(それらもレンズと呼ぶ)を通して物を拡大しながら観察するわけだが、拡大鏡(虫眼鏡)も1枚のレンズ越しに観察するだけで物の像(光)がレンズを「通っていく」事に変わりはない。だから、結論としてはwith(〜を用いて)もthrough(〜を通して)も、そしてunder(〜越しに)も同じ意味になるというわけだ(ああ、この文、「そして」以下が挿入形式になっている事に注意しておこう)。そして恐らくは英語では違う言い方を使い分けているが、この文に関する限り、拡大鏡か顕微鏡かという事が一番大事な点だから、日本語では道具格の助詞「で」で十分だと思う。

     次は語彙の問題。a magnifying glassだが「拡大鏡、虫眼鏡」のいずれにしようか。英和辞書の例文だが半々といったところだ。拡大鏡などと言うよりは虫眼鏡の方が慣れ親しんでいるので、こちらにしようかと思っていたら国語辞典を調べるとちょっと気がかりな点がでてきた。
    むしめがね【虫眼鏡】
    (日国)
     (1)小さな物体を拡大して見るための焦点距離の短い凸レンズ。像は正立の虚像。拡大鏡。
     (2)顕微鏡のこと。
     (3)大相撲の序の口力士の俗称。番付の最下段に細字で記入され、(1)を用いなければ容易に探し出せないところからいう。
    (広辞苑)
     (1)江戸時代、凸レンズを円筒に仕掛けた簡単な顕微鏡。筒の中に虫などを入れて観察する。
     (2)小型の拡大鏡。ルーペ。
     なんと虫眼鏡には歴史的に「顕微鏡」的な用法があったらしい。なので、味がいい「虫眼鏡」はあきらめて今回は「拡大鏡」を使う事にする。

     carefullyは普通ならば「注意深く」と訳すところだろう。examineと合わせると「注意深く〜を調べる」という意味になるから訳文どおりなのだけれど、canと併せるとちょっと意味合いが変わってくる。「注意深く」というのは動作主(主体)の姿勢を示しているが、拡大鏡や顕微鏡を使うとそういう姿勢が可能になると言いたいわけではないだろう。だとすると他の日本語を考える必要がある。carefullyには「入念に」という言葉もあるから、こちらの方が動作主側ではなく動作それ自体の状況を説明しているような感じがしてくる。そこで、とりあえずorの前までを推敲する。
    (前半の推敲訳) 高品質の拡大鏡でそれらを入念に調べることができる。

     後半は、orで始まる並列句だ。訳文のように「AやB」「AあるいはB」となるのが普通だが、この文章では日本語の述語表現を生かして「拡大鏡で調べる」と「顕微鏡で調べる」事を比較する方がよい。
    (後半の推敲訳) あるいは、尚よいのは顕微鏡で、これを使えばさらに入念に調べる事ができる。

     全体を併せると以下のようになる。
    (推敲訳) 高品質の拡大鏡でそれらを入念に調べることができる。あるいは、尚よいのは顕微鏡で、これを使えばさらに入念に調べる事ができる。
     さらに日本語を手直しする。a good magnifying glassのgoodだが、結局は「倍率が高い」という意味だろう。顕微鏡ならば格段に倍率が高くなるわけだから、(what is) better stillと言っているわけだ。また、そうであるならば「調べる事ができる」を修飾する副詞carefullyは「入念に」というより「細部まで、細かいところまで」という意味になる。

     それと英語の主語と目的語の扱いを考えておく。英語のYouは一般人称なので日本語だと訳さない。となると日本語としては目的語のthemを題目部として立てた方が安定する。ちなみにthemは文章における距離感で「あれら、それら、これら」のどれにも当てはまる。この例文の場合、直前にthemについて列挙されていると考えて「これら」とするのが無難だろう。
    (推敲訳) これらは、倍率の高い拡大鏡を使えば細部まで調べることができる。あるいは、顕微鏡ならば尚のこと倍率が高いので、さらに細部まで調べる事ができる。
    posted by アスラン at 03:21| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 英文解釈教室を書き直す | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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