15.1.1 Years ago, I used to receive letters from a friend, ―very interesting letters, too.今回から『英文解釈教室』の掉尾を飾る第15章「挿入の諸形式」について考える。受験生だった当時の僕や、今まさに受験生である高校生だったら、ついつい飛ばしてしまいそうな内容だろう。第14章が「共通関係」で、これまたつまらないので後回しにしてしまったかも。当時の僕は第11章「比較の一般問題」と第12章「比較の特殊問題」が英文解釈のクライマックスだと信じて疑わなかったからだ。確かに今でも「比較構文」を日本語としてどう捉えるかは魅力的な問題だが、それよりもややこしいのが共通関係であり挿入形式である事は間違いない。何故なら、英語と日本語とでは基本となる構文構造が異なるからだ。共通関係や挿入形式によって英文の一部が省略されたり語順が制限されたりするのだが、それをそのまま日本語の構文に移し替える事ができない事が多い。特に挿入形式は、そのまま訳すと日本語としては不自然な感じがする。英文解釈上は理解できるが、英文の特徴を活かした形で日本語を書くと途端に日本語らしくなくなるように思える。その事をじっくりとこの第15章の例文で検討していこうと思う。
(訳) 何年か前、私はある友人から手紙、それも非常におもしろい手紙をよくもらった。
まずは、例文の構造を見てみよう。
Years ago, I used to receive letters from a friend,ダッシュ(―)で区切られてveryで始まる名詞句部分が、元々の文のlettersと同格表現になっている。伊藤先生は「very以下が思いついたことを追加した同格表現」と書いている。同格表現である以上、後半は単なる名詞句ではなく、前半のS+Vを共有もしくは省略していると見なせる。つまり英語構文としては I used to receive very interesting letters, too.という構造になっている。それを踏まえて訳文を見るとletters(手紙)を「思いついたこと」であるvery ineteresting letters(非常におもしろい手紙)に言い直して挿入しているので、日本語としては違和感が残る。通常で考えれば後方に出てくる述部表現「よくもらった」にかかる形式で書くべきだろう。
―very interesting letters, too.
(a)私はある友人から手紙、それも非常におもしろい手紙をよくもらった。訳文の(a)は同格表現を名詞句に限定した書き方だが、(b)のように格助詞「を」を添えるだけで後方に述部の存在を予想させる事ができる。これによって挿入形式の宙づり感を減らす事ができるため日本語としての違和感が少なくなる。
(b)私はある友人から手紙を、それも非常におもしろい手紙をよくもらった。
さらによくよく英語の原文を見ると、「挿入の諸形式」という章題でありながら実は全然挿入にはなっていない事に気づくだろう。前半の I used to … from a friend はS+V+Oの完全に自立した英文である。ただし、friendの次にピリオドを打たず、カンマで継続して同格表現が「挿入」されているというのが、英語から見えてくる挿入形式の意味だ。ならば日本語の場合も前半の文をひとまず言い切ってしまっても問題ないだろう。いや、こちらの方が自然に思える。
(c)私はある友人から手紙をよくもらった。それも非常におもしろい手紙をよくもらった。あくまで原文の「挿入」の意味を構文上の問題として捉え、日本語では「思いついたことを追加した」という観点で推敲したのが(c)だ。これで随分と日本語として分かりやすくはなったが、別の問題として「〜をよくもらった」を繰り返していてくどい文になった。英文としてはS+Vの部分(I used to receive)を共有しているという事が構文上も、そして意味上も正しいが、日本語としてはそもそも主語や述語は必須要素ではないので、繰り返すのではなくウナギ文「僕はウナギだ」のように前半のS+Vに対応する部分(〜をよくもらった)が関係づけされている表現にした方がしっくりする。それが(d)だ。
(d)私はある友人から手紙をよくもらった。それも非常におもしろい手紙だった。
(推敲訳)何年か前、私はある友人から手紙をよくもらった。それも非常におもしろい手紙だった。
さらに推敲する。years agoがどの程度むかしの事になるかわからないが、その時点でused to(よく…した、…するのが常だった、…する習慣だった)という流れになるので、単に時制を過去にするだけでは伝わらない。少し工夫が必要だ。過去の時点を示すために「何年も前になるが」と但し書きのように書き、その上でその時点での習慣をしめすので「(よく)もらった」ではなく「(たびたび)もらっていた」のようにする。そして同格表現の方はlettersの複数形を日本語に反映した。
(推敲訳)何年も前になるが、私は友人の一人からたびたび手紙をもらっていた。しかも、どれもこれも私の好奇心を大いにくすぐる内容だった。



