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    2025年02月24日

    英文解釈教室の訳文を書き直す(7.3.5)

    Chapter7. It . . . that . . .「B 強調構文」より。

    7.3.5 It was not until the shadow of the forest had crept far across the lake and the darkening waters were still that we rose reluctantly to put dishes in the basket and start on our homeward journey.
    (例) 森の影が湖の上に遠くまでのび、暗さをます水面が静かになってはじめて、私たちは気の進まぬまま立ち上がって皿をバスケットに入れ家路についた。
     この例文に取りかかる前に、伊藤先生がtillで始まる従属節を副詞的要素として持つ英文について解説をしているので、まずはそれについて考える。
    (a)暗くなるまで彼らは出発しなかった。(They did not start till it got dark. )
    (b)暗くなってはじめて彼らは出発した。(It was not till it got dark that they started.)
     日本語として考えると「(a)暗くなるまで…」と「(b)暗くなってはじめて…」は見方が異なるだけで同じ事を言っている。この(a)から(b)への発想の転換に対応するのがIt was not till … that …という英文だと言っている。しかし、これには異論がある。「同じ事を見方を変えて表現する」という事と「強調したい部分を焦点部として前方に出す」という事とは全く別の事ではないだろうか。それに、(a)と(b)のように日本語側から考えるのではなく、まずは英語側で考えるべき事があるはずだ。もうちょっとじっくりと英語で考えていこう。
    (A)They did not start till it got dark. (暗くなるまで彼らは出発しなかった。)
     この英文の副詞的要素つまりtillで始まる従属節を焦点部とする強調構文を考えると、次のようになる。
    (A')It was till it got dark that they did not start.
     しかし、この文は「文法的に不自然です」とchatGPTに指摘されてしまった。それを言いたいなら次のように書くように訂正された。
    (A'')It was not till it got dark that they started. (暗くなるまではなんとしても彼らは出発しなかった。)
     これは従属節だけでなく主節の否定を表す副詞notも同時に焦点部に出す必要があると言う事だ。訳文については強調の副詞「なんとしても」を追加して(A)の訳文を強調した言い方にしてみた。これで思い出すのは倒置構文だ。『英文解釈教室』ではChapter5で倒置形を扱うので、順番的には強調構文より先に学習する。この順番には伊藤先生による配慮があったことになるが、いずれ倒置形についてもあらためて検討する事になるだろう。とりあえず重要な点を挙げておくと、倒置形は「否定の副詞+v(助動詞)+S+V」という語順になるという点だ。そして否定の副詞は副詞句・副詞節なども一緒に前方に引き連れてくるので、(A)の文では従属節もnotと一緒に前方に出る。
    (A''')Not till it got dark they started. (暗くなるまではなんとしても彼らは出発しなかった。)
     倒置構文にした事で訳文にどんな影響を与えるかは改めて考えたいが、伊藤先生は「強意のために否定の副詞が前に出る」と書いている。これが強調と同じ意味ならば、(A''')と(A'')とは意味的には変わらないので、訳文も一緒にしておく。結論としては、主節の否定を伴う副詞的要素(従属節)をもつ英文の場合は、まずは強調としての倒置構文の変形を行った上で、それを強調構文のフォーマットにはめ込むという順番になる。おそらくは倒置構文と強調構文としては、副詞的要素に焦点を当てて強調するという役割はまったく変わらない。ただ、強調構文の方が焦点となる部分を明示するという意図がハッキリしているという点が異なるだけなのだと思う。

     以上の事とは別にnot〜tillについては見方を変えた表現が考えられる。日暮れを境にして時間軸を区切り、「やった事」と「まだやっていない事」のいずれを表現するのかで選択肢が2つに分かれる。これは強調とは別の考え方で「主観的表現」に相当する。事象としてはまったく同じ事を表現するのだが、主観として「どう感じたのか」を文に反映させている。だから(A)とは別の選択肢として以下の(B)が存在する。
    (B)They started when/after it got dark. (暗くなってから彼らは出発した。)
     whenもしくはafterについては伊藤先生がnot〜tillとは別の表現として挙げたものだ。whenは「暗くなった途端」という表現だし、afterは「暗くなってから」という表現だが、いずれにしろ日本語は「暗くなってから」でいいだろう。強調構文にしたので「ようやく」で強調しておく。
    (B')It was when/after it got dark that they started. (暗くなってからようやく彼らは出発した。)

     これで例文にとりかかる準備はできた。例文7.3.5を強調構文で強調する前の形に戻す。
    (強調前の7.3.5) We did not rise reluctantly to put dishes in the basket and start on our homeward journey until the shadow of the forest had crept far across the lake and the darkening waters were still.
     これを元に訳文を推敲する。
    (推敲訳) 森林の木々の影が湖の対岸へと伸び、湖水が暗くなって波が穏やかになるまでは何があっても、私たちは嫌々ながらも起き上がりかごに食器類をしまって家路につこうなどとはしなかった。
     さきほど検討したように、あくまでnot〜until…の訳文を否定の副詞要素で強調したが、日本語としてあまりうまくいっていない。その理由は、主節の部分が「やった事」中心で詳細に書かれているからだ。ただ単に「起き上がる」ではなく「しぶしぶと、嫌々ながら、不本意ながら」という心情をこめた副詞が伴っているため、これを全面的に否定するためには「嫌々ながら起き上がろうとしなかった」では駄目で、「嫌々ながら起き上がるという事はしなかった」のように「嫌々ながら」の係り先を明確にしないといけない。「起き上がる」に「食器類をしまう」「家路につく」などが連用修飾しているのもさらに状況を複雑にしている。なので日本語としては「まだやっていない事」に拘るのは得策ではないので、見方を変えて「やった事」で書き替える事にする。
    (推敲訳) 森林の木々の影が湖の対岸へと伸びてゆき、湖水が暗くなって波も穏やかになったのでようやくのこと、私たちは嫌々ながら起き上がって、かごに食器などをしまいこんで家路についた。
    posted by アスラン at 13:08| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 英文解釈教室を書き直す | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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