7.1.6 If everyone undertook to form all his own opinions and to seek for truth by isolated paths, it would follow that no considerable number of men would ever unite in any common belief.日本語では「先と後」「前と後ろ」のように、位置関係なのか時系列なのかで「どちらがどちらなのか」を迷う事がある。このfollowを使った構文は特に迷わされる。伊藤先生がこの例文を取りあげたのは、僕のような思い違いをする人が受験生に多く見られるからだろう。
(訳) すべての人があらゆることについて自分だけの意見を持ち、孤立した道によって真理を求めようとするなら、相当数の人が共通の信念に結ばれることは決してないという結果になるであろう。
A follows B.これは位置関係で考えると「(後ろにいる)Aが(前にいる)Bに従う」という意味になるが、時系列として考えると「Bが先に起きて次にAが起きる」だし、因果関係ととらえると「(先に起きた)Bが原因でAが起きる」という意味になる。まあ、ここまではいいとして(僕にとっては良くはないのだが)、it follow that…の構文になるとややこしくなる。
It follow from B that S+P.that節全体はさきほどのAに相当する。つまり非人称構文では、さきほど主語だったAがthat節として目的語になっているし、さきほど目的語だったBはfromの目的語になっているというわけだ。ただ、さきほどはAとBの関係を直接followが媒介していたのだが、非人称構文では「天から降ってきたit」から見てA(that節)とBの関係が決まる。つまり同じfollowではあるが用法はまったく違うと考えた方がよいという事になる。さらに例文ではfrom Bの部分が、Aがthat S+Pになったのと同様に展開されて、if S'+P'のようになっている。
If S'+P', it follow that S+P.
ここまでが英語として踏まえておかねばならない知識だが、ここからは日本語として踏まえておかねばならない事を考える。訳文は原文のバタ臭さがそのまま残っているため、理解できないというほどではないが「ちょっと何言ってるのか分からない」と突っこみたくなるような部分が見られる。isolated pathsを伊藤先生は「(人から切り離された)自分だけの道」と解説しているが、訳文では「孤立した道」となっている。pathsは道には違いないが、英語特有の表現を日本として無難な表現に変えるべきだろう。それとseek for truthをランダムハウスなどでは「真理を探究する」と訳しているのだが、今ひとつピンとこない。「真理を探究する」というのは哲学や宗教など一部の分野にかぎった言い回しであって、僕を含めて一般の人たちは「真実(もしくは事実)は何なのかを追い求める」というぐらいに噛み砕かないと状況が見えてこない。さらに「相当数の人が…」うんぬんも微妙に気に入らない。「信念に結ばれる」ではなく「信念で結ばれる」だろうし、if文が原因でthat節が結果になるように訳せば「…という結果になるであろう」は日本語として余分だと思う。これらを踏まえて訳文を推敲する。
(推敲訳) 誰もが何事についても自分だけの意見を持ち、各自のやり方で真実は何かを追求しようとすると、どんな形でも互いに共通の信念を抱いて相当な数の人間が団結すると言うことは今後はなくなるだろう。isolated pathsを「各自のやり方」としてみたが、もうちょっと一工夫すべきだ。後半の部分もno considerable number of menやany common briefなどをそれぞれ丁寧に訳に反映しようとしたので、修飾語が多くなりすぎて日本語としてとっちらかってしまっている。
さらに推敲してみる。
(推敲訳) 誰もが、何事についても自分なりの意見を持ち、真実とは何かを手探りで追求し始めたならば、いかなるものであれ互いに共通の信念を抱いて団結する人々が相当な数になるなんて事は、今後はなくなるだろう。