2014年11月25日

2014年11月の新刊

 もう11月も終わりが見えてきた。なのに、いまさらの「11月の新刊」。しかも「10月の新刊」は出しそびれてしまった。12月の新刊紹介はすでにおなじみの大洋社のHPで掲載されているというのに。それもこれも、本を読むよりも折り紙を折ることに血道を上げてしまったからなのだが、それはまた別の機会にお話させてもらうことにして、とにもかくにも「2014年11月の新刊」から、読みたい本をピックアップしてみよう。

11/07 007 白紙委任状(下) ジェフリー・ディーヴァー(文春文庫) 648
11/07 007 白紙委任状(上) ジェフリー・ディーヴァー(文春文庫) 648
11/07 それをお金で買いますか 市場主義の限界 マイケル・サンデル(ハヤカワ文庫NF) 864
11/07 毒殺者 折原一(文春文庫) 756
11/10 言葉なんかおぼえるんじゃなかった 田村隆一(ちくま文庫) 950
11/10 増補 夢の遠近法 山尾悠子(ちくま文庫) 972
11/10 娘と私 獅子文六(ちくま文庫) 1512
11/21 いま見てはいけない デュ・モーリア傑作集 ダフネ・デュ・モーリア(創元推理文庫) 1296
11/25 「AV男優」という職業 水野スミレ(角川文庫) 605
11/25 ナミヤ雑貨店の奇蹟 東野圭吾(角川文庫) 734
11/28 O・ヘンリー・ザ・ベスト(1) 賢者の贈物 O・ヘンリー(新潮文庫) 529
11/28 言語小説集 井上ひさし(新潮文庫) 497
11/28 失踪当時の服装は【新訳版】 ヒラリー・ウォー(創元推理文庫) 1080
11/28 吹雪の山荘 リレーミステリ 笠井潔ほか(創元推理文庫) 1080
11/28 日本文学100年の名作(4) 1944−1953 木の都 池内紀(新潮文庫) 810
11/28 飛ぶ教室 エーリッヒ・ケストナー(新潮文庫) 594


 ジェフリー・ディーヴァー「007 白紙委任状(上)(下) 」。すでに店頭に並んでいる。最近はディーバーの作品はすべて単行本で読了済みなので、文庫については特にどうという欲求はないのだけれど、いずれ再読用に古本で安くなった文庫を買い集めているから、無関心ではいられない。と言っても、集め出した最初の頃はなかなか古本屋で安いリンカーン・ライムシリーズが入手できずにやきもきさせられたが、今は割と新しめの作品も安価で手に入る。それもこれも、著者ディーヴァーがシリーズ途中から宗旨替えして作品を短期間で発表するようになったことが影響しているように思う。僕としてはライムシリーズをメインの楽しみに据えて、キャサリーン・ダンスシリーズで繋いでいければ言う事はない。ああ、本作は、かのジェームス・ボンドが活躍するスパイ物に著者が果敢に挑戦した一作だ。映画でも確かに超人的な諜報部員ではあるけれど、本作のボンドはさらに超人的だ。映画の歴代のボンド役の俳優を思い浮かべながら本作を読むと、どれにも当てはまらない。他の著作同様楽しく読めたけれど、映画の中のゆるゆる感が足りないのは残念だ。

 マイケル・サンデル「それをお金で買いますか 市場主義の限界 」。こちらも店頭に並んでいる。が、平積みを手にとっていない。あれほどテレビ講義の影響でサンデル熱に浮かされたというのに。でもきっと、ちょっと見開きを読んでみたら、再び魔法にかかってしまうんだろうな。いや、そんなことを考えたら、すぐに書店に駆け込みたくなってきた。

 折原一「毒殺者 」。こちらも中毒性が高い。最近(と言っても半年は前かな)読んだのは、雪山で遭難した、とある会社の山岳部のベテランメンバーの死を描いた作品だった。そうだ、「遭難者」だ。故人を偲んだ追悼集と追悼集別冊の二分冊からなる単行本の趣向が珍しいので、図書館で見たときから気になっていたが、文庫化にあたって一冊にまとめられた。それもつまらないなと思って図書館で単行本を借りて読んでしまった。今度もそうしようかと思って検索したが、図書館の蔵書にはない。もしやと思って調べたら改題していた。1992年出版の「仮面劇」というのが原題だ。しかし、やっかいな事には今回の文庫は「改訂改題して復刊」したそうなのだ。うーむ、やはり図書館に入るのを待って文庫の方を借りるか。悩ましい。

 田村隆一「言葉なんかおぼえるんじゃなかった 」。田村さんと言うと、ミステリーファンにとっては海外の本格ミステリー作品の数々を訳してきた翻訳家というイメージだ。クイーンやクリスティなどの作品名がすぐに思い浮かぶ。ただ、その後、文芸評論関連の本を読むと、日本の現代詩のパイオニアと位置づけられる作家であることを知る。かといって、詩を読む習慣がない僕としては、今ひとつ田村さんのすごさを実感する機会がなかった。本書は若者へのメッセージとともに代表作が掲載されているお得な作品のようだ。

 山尾悠子「増補 夢の遠近法 」。なぜ今回ピックアップしたのか覚えていない。おそらく「夢の遠近法」とうタイトルに惹かれたのだと思う。もっと言えば「増補」という付け足しにも、そそるものを感じたのだろう。「増補 夢の遠近法」という魅惑的なタイトルに導かれて、難解だとも言われる見知らぬ著者の「幻想的な」諸作品に触れてみたいと思う。

 獅子文六「娘と私 」。NHK朝のテレビ小説の第一作の原作。第一作は「おはなはん」だと勘違いしていた。その後の「信子とおばあちゃん」の原作も獅子文六だ。この「私」は著者自身をモデルにした父である。父と娘とのふれあいがテーマになるのは、小津安二郎の数々の名作を思い浮かべればわかるように、この時代ならでは事だろう。ここで描かれる家族は、戦争の影響を引きずってどこかしら後ろ向きの気分を漂わせる父や祖父母の世代と、前向きに生きようとしている若い世代とのいたわり合いがテーマになるだろう。その後に来る高度成長時代まっただ中を生きる家族には、そんな微妙な空気は存在しない。ホームドラマという言葉で象徴されるようなエネルギッシュで、ただただ家族全員が一つの目標に向かって前進するかのような作品が大量に生産されることになる。だからこそ、僕らは小津の、あるいは獅子文六の描く、もはや失われてしまった家族のつながりを再確認するために読むのだろう。

 ダフネ・デュ・モーリア「いま見てはいけない デュ・モーリア傑作集 」。「レベッカ」と「鳥」、このヒッチコックの二つの名作の原作者であるダフネの短編集。前回の短編集に「鳥」が収録されているので、今回の「傑作集」の目玉は何かと思ったら、表題作「いま見てはいけない」という短篇がニコラス・ローグ監督の「赤い影」の原作なのだそうだ。残念ながらローグの映画は見たことがないので原作に対する惹きにはならないのだが、「赤い影」には名優ドナルド・サザーランド(「24」シリーズ主演のキーファーのお父上)と、「天国から来たチャンピオン」でヒロインを務めたジュリー・クリスティが出ている。まずは映画の方を見たくなってきた。

 水野スミレ「「AV男優」という職業 」。綺羅星のごとく現れては消えていったAV女優の総数は数え尽くせないほどだが、AV男優と呼ばれる存在はあまりにも少ないと聞いたことがある。この本では、そんな稀有な職業を生業とした男性たちの日々が明らかになる。当然ながら、同性から一度は羨ましがられ、知れば知るほど過酷な職業である事を思い知らされる。その中で非常に特異な体験と経験を積んできた彼らの言葉は、どう響いてくるのだろう。

 東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇蹟 」。書店に足を運ぶたびに著者の新刊の平積みを見ない日はないのだけれど、このタイトルが目に付く新刊コーナーにならんだときには、あれ、ミステリーじゃないの?と惹きつけられた覚えがある。どうやら心温まるファンタジーのようだ。いや、ファンタジーのような設定でありながら、本格ミステリーお約束の〈真実〉が待ち受けているのかもしれないが、感動作であることは確かなようだ。

 O・ヘンリー「O・ヘンリー・ザ・ベスト(1) 賢者の贈物 」。新潮文庫の「O・ヘンリー短編集」全4巻は大切に持っている。あれを超える作品集はなかなか出ないと思うけれど、ベストとか傑作選とか言われると、ついつい手が伸びてしまう。この作品集はどのようなラインナップなのだろう。訳者も気になる。大久保康雄さんの訳は申し分ないけれど、そろそろ新しい訳で読んでみたいという事も確かだ。「停電の夜に」を訳した小川高義の手際をぜひ拝読したい。

 井上ひさし「言語小説集 」。名作家、名戯曲家であると同時に言葉の達人として一家言あった作家でもあった著者が、特に日本語を題材に書いた短篇が七編も収録されている。内容紹介を読むだけで読みたくなってくる。

 ヒラリー・ウォー「失踪当時の服装は【新訳版】 」。二度読んでる。二度目は犯人を知った上で読む「再読」のはずだが、犯人の名も忘れてるし、内容もほぼ覚えてなかった。ただし、なんというか良質のサスペンスドラマを見せられているかのようなじわじわとしたスリラーの感触が味わえたのだけは覚えている。ああ、真相が衝撃的というよりは別の意味でショックだった。新訳が出るならばもう一度読んでみてもいい作品だ。

 笠井潔ほか「吹雪の山荘 リレーミステリ 」。雑誌「ミステリーズ」の企画でリレー式に書き継いでいく趣向を実現したのが本作だ。作家陣は、笠井潔・岩崎正吾・北村薫・若竹七海・法月綸太郎・巽昌章の六名。クリスティーの「そして誰もいなくなった」ばりの設定である「吹雪の山荘」を舞台に、作家が実名で登場して、別の作家の創造した探偵と共演したりする。ミステリー愛好家たちの興味を掻き立てる一作だ。

 池内紀「日本文学100年の名作(4) 1944−1953 木の都 」。第一巻を購入していながら、ついうかうかしていたら、あっという間に第四巻が出てしまう。ぜひ買いそろえたいと思っているのだが、購入するだけで詰んでおいたら古本屋でも安く買えてしまうだろう。リアルタイムで読んでいきたい、などと思ったが、そうはうまくはいかない。何故か今年に限っては僕に読書の秋は訪れなかったようだ。すでに冬。忙しい師走も来て、さて、もう一度夜長を読書で過ごす落ち着いた日々を取り戻さなければ。

 エーリッヒ・ケストナー「飛ぶ教室 」。ふーむ。なんか、これ、書架にあるはず。講談社文庫か何かで新訳が出た際に購入したはず。この有名な児童文学を僕はまだ一度も読んだ事がない。それはあまりに情けないと思って購入したんだけれど、やっぱり読んでない。そうこうするうちに再び文庫がでる。今度は新潮文庫からだ。じゃあ、新潮文庫で読めばよかったのか。失敗した。しかも、訳者が池内紀さんだ。うーむ。これを機会に家にある蔵書を読むべきか、それとも今回の新刊か。なんとも悩ましい。
posted by アスラン at 19:59| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | あっ、これ読みたい | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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