2012年06月21日

夫婦茶碗 町田康(2004年12月18日読了)

 笑える、こりゃあ笑えるぞ〜。

 妙に古い言い回しを使いたがる主人公の男の語り口は、あたかも落語を思わせる。ところが現代の〈熊さん八っつぁん〉は独善的な思考を止める事を知らない。おまけに、それをたしなめるご隠居がいないのが今のご時世というものだ。

 語り手の男は、「おいおい、そりぁないだろ」と思わずにはいられないところまでどしどし無謀な考えをおしすすめて行動にうつしてしまう。確かに笑える。なのにいつの間にか「笑い」がひきつる。そこまでいっちぁあ(オシマイだ…)という言わずもがなの言葉を思わず飲み込む。でも、やっぱり可笑しい。可笑しいものは可笑しい。では、笑ってしまおう。

 そこで、はたと気づく。そうか。僕ら読者は、著者の底意地の悪い思考実験に単に付き合わされてるだけじゃない。試されてるんだ。人間としてのモラルだとかヒューマニズムだとか、そんなオシキセでアイマイなモノが如何に〈人間という生き方〉をつまらなくしている事か。これは生きる事に日々退屈にしている僕らへの著者なりの挑戦状なのだ。
(2005年6月2日初出)
posted by アスラン at 19:28| Comment(6) | TrackBack(5) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ブログ楽しく読ませて頂きました!私の読書日記ブログでも町田康を取り上げているので、是非、遊びにきて下さい!
Posted by ヒロ斎藤 at 2005年06月02日 20:48
コメントどうもありがとう、ヒロさん。

ブログ訪問しました。「夫婦茶碗」のサイン本の話楽しめました。サイン本って恥ずかしい。なによりもらうときが恥ずかしい。
僕もかの元東大総長・蓮実重彦がまだ一介の映画評論家だった頃に、六本木シネヴィヴァンでサインをもらいました。サイン会でもないからロビーにいた彼に声をかけるのがこれまた勇気がいりました。
 でももっと恥ずかしいのは、それを今も後生大事にとってある自分かもしれません。
Posted by アスラン at 2005年06月03日 04:19
はじめまして。ヒロ斉藤さんのところから寄らせてもらいまして、早速トラックバックなどしちゃっています。今後ともよろしくお願いします。

「空中ブランコ」予約中なんですね。(と違うところに反応)むっちゃくちゃ面白いですよ。今からあれを初体験できるなんてうらやましいです。

ではではまた寄らせてもらいますね。
Posted by ざれこ at 2005年06月13日 01:20
ざれこさん、コメントありがとう。

TB返ししましたよ。
ざれこさんのページの充実度スゴイですね。
「空中ブランコ」待ってますがなかなか来ません。
「デッドエンドの思い出」読まれてるようですが、僕はとっても気に入ってます。

これからもよろしく。
Posted by アスラン at 2005年06月14日 00:42
はじめまして、TBさせて頂きました。
町田康の作品は初めてで、私があまり読んでない文体だったので、とまどいました。
少しずつ読んでいきたいと思っています。
Posted by 早乙女舞 at 2005年06月22日 19:37
舞さん、コメントありがとう。

町田作品を楽しく読むコツは一言。
「翔んでみな!」って事だと思います。
既存のモラルにとらわれるのは現実だけで充分。
それでなくても僕らを取り巻く現実は、うさんくさいヒューマニズムに満ちあふれています。

せめて小説の中だけでも「ちまちままとまった自分」を壊してしまいましょう。
Posted by アスラン at 2005年06月23日 01:21
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