2012年05月30日

東京湾景 吉田修一(2004年11月7日読了)

 遅ればせながらドラマ化された本作を読んだ。ビックリした、ホントにビックリしました。全然違うじゃない、内容が。フジテレビのドラマは明らかに「冬ソナ」に便乗していて、和製韓流純愛ドラマにしてしまったけれど、原作にはそんな部分は影も形もない。これはハッキリと書いておこう。一行も一言すらない!

 「出会い系サイトで純愛なんて笑っちゃうよね」って口さがないOLたちの会話をどこぞのテレビで耳にしたけれど、彼女たちだけでなく誰だってそんなシチュエーションを信じているわけじゃない。だけど、この小説で著者は、出会い系サイトの出逢いのうさんくささの中で互いを求め合う事を期待する男と女の物語を、あえて描きたいと思った。当然ながら純愛にはならない。

 テレビドラマが韓流テイストを持ちこみたかった気持ちもわからないではない。原作では、「太陽はひとりぼっち」という映画の別れのシーンにインスパイアされたクライマックスを採用しているからだ。一言で言えば「愛する男女の移ろい」が主題と言っていい。。原作を読むかぎり、決して難しい事を書いてあるわけではない。でも、もしテレビドラマで同じ主題を取り上げるならば、演出には力量が問われるだろう。

 さてドラマの事はおいといて小説の方だけど、純愛物でないにも関わらず吉田作品としては最もロマンティックな結末になっている。映画的なシーケンスがちりばめられているから、映画できちんと作ったらさぞかし面白い作品になりそうなんだけどな。
(2005年5月30日初出)


[追記(2012/5/30)]
 今となっては書評と一緒に織り込んだテレビドラマ時評の方が古くさくなってしまって、一体どんなドラマだったのか誰も分からなくなっている。僕自身も連続して見続けていたわけではなく、なんとなく仲間由紀恵主演だったのと、吉田修一原作という点に牽かれて見てみたら「なんかヘンだな」と感じてしまったのだ。吉田作品らしくない設定だったからだ。仲間由紀恵が在日韓国人という設定も無理があるが、それだけ当時は「冬ソナ」の影響が大きく、しかも今のように韓流ドラマの放映枠もなかったので、NHKの「冬ソナ」は別格として民放がニーズに応えるためには、このような中途半端な設定のドラマが必要だったという事かもしれない。出会い系サイトで出会う相手は和田聰宏だ。当時、日本でのタレント活動を渇望していたパク・ヨンハがゲスト出演して話題性を盛り上げていた。(などと書いたが、パク・ヨンハのくだりはWikiを見て思い出したくらいで、忘れていた。)
posted by アスラン at 12:57| Comment(0) | TrackBack(3) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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