2014年03月27日

2014年4月の新刊

 毎度おなじみ新刊紹介(大洋社の文庫発売一覧調べ)です。うっかりして、マエセツを書いてない事に気づきました。そろそろ桜が咲き出して、ようやくに春の訪れを実感しだしたと思ったら、今日は小雨がそぼ降る寒い朝になりました。三寒四温なんて便利な言葉を昔の人は考えてくれたので、ついつい紋切り型の言葉をつなぎ合わせていけば、これまた毎年のように、春先にかわされる挨拶文ができあがりました。
 これでよし、と。

04/25 訓読みのはなし 笹原宏之(角川ソフィア文庫) 821
04/18 行人 夏目漱石(集英社文庫) 未定
04/24 華氏451度〔新訳版〕 レイ・ブラッドベリ(ハヤカワ文庫SF) 972
04/08 縦横無尽の文章レッスン 村田喜代子(朝日文庫) 734
04/30 岩合光昭のネコ 岩合光昭(新潮文庫) 未定
04/30 僕は9歳のときから死と向きあってきた 柳田邦男(新潮文庫) 680
04/30 転迷 隠蔽捜査(4) 今野敏(新潮文庫) 724
04/下 リッジウェイ家の女(仮) リチャード・マシスン(扶桑社ミステリー) 未定
04/10 おもひでぽろぽろ シネマ・コミック(6) 岡本螢(文春ジブリ文庫) 1620


 笹原宏之「訓読みのはなし」。同著者同タイトルの新書が2008年に光文社新書から出ている。これが角川から再出版されるという事だろうか。最近、仮名遣いに関する新書が出版されたので買って読んでいるんだけれど、仮名の使い方には日本語が書き言葉にどう読みを当ててきたかという歴史と密接な関係があるという出だしになっていて、何をいまさらという人もいるだろうけれど、改めてそう把握しなおさないと、あたり前としてやり過ごしてきた日本語の読み(音)も仮名(形)の持つ意味全体を十分に知る事など出来ない。訓と音という分け方も、僕らは学校教育として習っているからなんとなく知っているの過ぎない。ちょっとでも深く考えると、途端に躓く事ばかりがわき起こってくる。うーむ、この本は気になるけれど、いや待てよ。光文社の新書の方を僕はすでに買って寝かしてるんじゃないだろうか?

 夏目漱石「行人」。集英社文庫は毎月のように漱石コレクションを増やしていく。今は「彼岸過迄」が店頭に置かれている。解説・三浦雅士、鑑賞・島田雅彦という豪華な取り合わせだ。「彼岸過迄」は漱石作品中、最も現代的な評価が高い作品とされている。「都市で暮らす孤独な人々」の内面を先取りしている作品だからだろう。オムニバス形式の連作になっているところも、今でいうところの「日常の謎」型のミステリーとしても読めるところも、今の若い読者が読みやすい作品だと思う。それと比べると「行人」は、「こころ」や「彼岸過前」のようにわかりやすい作品ではない。日常の謎ではなく、どうしても愛すべき人の心が信じられずに自滅していく現代人を描いている。鬱々としたストーリーと結末がつかない構成も、晩年の漱石にしてはいびつな作品だ。だが、漱石の長編はどれ一つとってもやり過ごす事ができない。「行人」というタイトルが意味深で、もう何度も読んできたにも関わらず、今もって「行人」というタイトルが意味するところに納得のいく説明をした評論や解説と出くわした事がないような気がする。だからか。腑に落ちない僕は、またまた読み直してしまうわけだ。

 レイ・ブラッドベリ「華氏451度〔新訳版〕」。まだ多感な時期に深夜にやっていた同名の映画を見た体験が、あとあとまで心に刻まれる事になった。映画好きになっていっぱしのフリークを気取るようになって、ようやくその映画が名匠フランソワ・トリュフォーの作品だと知ったわけだ。とにかく、禁書により本自体を読む事も所有する事もできないという近未来SFの設定に魅力を感じたし、人間としてのアイデンティティを揺さぶられるほどの衝撃を受けた。その後、ペーパーバックでブラッドベリの本作を手に入れて、どうにかこうにか読んだ。いや、最後まで読んだのかな。主人公の男性の仕事がファイヤーマンなんだけれど、いわゆる消防士ではなくて、本を焼くのが仕事。本が燃える時に温度が「華氏451度」なんだそうだが、それよりも原作の序盤に何度も現れる本を焼くための器具に装填された燃料がkeroseneという言葉で出てくるのが、とっても印象に残っている。とにかく新訳で読めると思うと、今から楽しみだ。

 村田喜代子「縦横無尽の文章レッスン」。村田喜代子というと、黒澤明監督の最晩年の作品「八月の狂詩曲」の原作者という事だけしか知らない。映画を見た原作者が、原作とはあまりにかけ離れたストーリーに、映画化を許可した事を後悔したという話が伝わっている。僕は「八月の狂詩曲」から初めて黒澤映画を同時代の映画作家の作品として味わえた幸せに浸って映画館を出てきた記憶しかないので、原作者には悪いけれど、すでに作者の手から離れた作品が異なるメディアで花咲くためには、まったく違った想像力を要するのは当たり前なのだと自覚していただきたいと思った。とはいえ、村田さんの作品をいずれは読んでみたいとは思っていたのだが、この「文章レッスン」の文庫化は絶好の機会になりそうだ。

 岩合光昭「岩合光昭のネコ」。岩合さんと言えば「猫」。猫の写真と言えば岩合さん。というくらい切っても切り離せない関係なのだが、いよいよ猫好きが高じて猫ボケ状態になってしまったのだろうか。「ニッポンの猫」などとまどろっこしい事を言わずに、「岩合光昭のネコ」という、もう誰にも有無を言わせないネコへの愛情全開のタイトルになっている。すごいなぁ。岩合さんの猫の写真は、躍動感にあふれているとか、かわいらしいとか、そんなありきたりな枠にとらわれてはいない。もう、なんというか、あの街中にあふれるダラダラ寝そべっては我が世の春を興じきっている猫そのものを、そのまま「ハイ、これがネコです」と見せてくれているのだ。だから血統書付きの飼い猫をかわいがる猫好きよりも、僕みたいに「猫に呼ばれる」事を期待している猫人(ねこびと)たちを引き寄せる、怪しげな魅力に満ちているのだ。

 柳田邦男「僕は9歳のときから死と向きあってきた」。僕は著者の一連のガン治療をテーマにした著作が好きだ。どうやらノンフィクション作家としての著者の力量を評価しているというよりは、僕の子供の頃からのトラウマを解消してくれた恩人として評価しているみたいだ。だから、実はNHKの記者から解説委員という経歴を持つ著者の文体が、非常に精度はあるけれど意外と単調で地味なゆえに、テーマによっては読みづらいのではないかと、かねがね思ってきた。でも「恩人」にそんなひどい事は言えない。言わないで済むには「読まない」というのが礼儀というものだろう。特にガン治療の最前線への関心が終末治療へ移り、さらに医学ではなく死にゆく人々たちへの関心に移っていった時に、僕は彼の著作に向き合えなくなった。特に自分自身、この歳になると親兄弟の病や死に寄り添う事になる。渦中にある自分にとって、著者の「生と死」を見つめ続ける作品は重すぎた。でも、もういいだろう。父が亡くなり、昨年兄が逝った。物言えぬ母が残されているが、いまこそ、僕には著者の真摯な言葉が必要な時かもしれない。

 今野敏「転迷 隠蔽捜査(4)」。つい最近、第一作「隠蔽捜査」を図書館で借りて再読した。テレビドラマが進行中で、それはそれで楽しんで見ているのだが、主人公の竜崎ってこんなに愚直な男だったっけ?と思わずにいられないほど、杉本哲太版竜崎はなかなかのいい奴なのだ。「変人」と言われるほどの変わり者には見えない。だが久しぶりに読んだ第一作ではっきりと思い出した。嫌な奴なのだ。エリート官僚である事が鼻につくほど、自分の生き方に自信がある。だから、まわりと軋轢を生む。そういう男がエリート官僚としても「変人」であるところに、このシリーズの面白さがある。というわけで、この終末に第二作「果断」も借りてきてしまった。本当は文庫で揃えたいところだが、人気シリーズなのでブックオフでもまだ400円程度する。
もうしばらくは単行本とつきあう事になりそうだ。

 リチャード・マシスン「リッジウェイ家の女(仮)」。これは「2014年3月の新刊」で紹介した「リチャード・マシスン短編集(仮)」の事だろう。どうやら今月下旬には間に合わなかったようだ。相変わらず「(仮)」がとれていないが、ましなタイトルがついた。短編集のラインナップはどうなるか、そろそろ情報を仕入れようと扶桑社のHPにアクセスしてみたが、ここは近刊情報がまったくないなぁ。いや、今月出す予定だったんだから、新刊情報として挙がっていてもおかしくないのに。というわけで、これ以上、この本について書く事はない。

 岡本螢「おもひでぽろぽろ シネマ・コミック(6)」。同名のジブリアニメに関するあれこれを集めた本。「おもいでぽろぽろ」ではなく「おもひでぽろぽろ」だったんだ。このアニメはテレビ放映で断片的にしか見てこなかったので、それほど思い入れはないけれど、どの場面から見てもエンディングに至る淡々とした情感に包まれてしまって、結局最後まで見てしまう。やはり高畑勲監督の演出のうまさが際立っている。ところで、この本の岡本螢って誰だろう?と思ってWikiなどを調べてみたら、原作者だった。というか元々は同名の漫画が存在して、その漫画の原作者が岡本螢さんだった(絵は刀根夕子)。ジブリアニメの功罪の一つに、原作が一気に目立たなくなるという点があるんじゃないかな。原作ともどもWINWINの関係になる事はあまりなくて、ほぼ原作はジブリアニメに飲み込まれてしまう。ただし、今回の作品は原作者がジブリに企画を持ち込んだという話なので、それほど問題ではないのかもしれない。でも、あらためて原作であるマンガを読んでみたい。といってもなぁ、買わなきゃダメか。
posted by アスラン at 12:50| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | あっ、これ読みたい | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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