2007年04月04日

リサイクル図書の魔力(図書館のすべて)

 図書館封印の決意をしたキッカケの一つに年度が変わるこの時期が関係している。

 3月になると最寄りの図書館が入っている公民館では春まつりが開催される。週末にコンサートが開かれたり、公民館を日頃利用するサークルが展示を行ったりしている。図書館もそれに合わせて〈リサイクル図書〉を入口前に陳列するのが恒例となっている。

 たぶん〈リサイクル図書〉というのは棚卸しで不要となった本をこの催しのためにとっておいたものだろう。これが僕の毎年の楽しみになっている。

 初旬の土曜日に出かけたら春祭りの賑わいとともにリサイクル図書のワゴンにも本好きが集まっている。ある老人が係の人にどういった本が出ているのかと聞いていた。聞くまでもないと思うような事を代わりに聞いてくれるのはありがたい。思わず聞き耳を立ててしまった。

 丁寧すぎるくらいの係の説明によると、

・あまり貸出しされなくなった本
・古くなって痛みが激しい本


がリサイクル図書となるようだ。分かりやすいのは、毎年必ず数冊は置かれるハヤカワミステリのクリスティ作品だろう。これは貸出し回数が今も多くてボロボロになったからだとわかるが、さらに言うと先年「クリスティ文庫」が創刊されて旧版との置き換えが進んだ事が大きい。

 昨年はそういったクリスティ作品をかきあつめていた。読破しようと意気込んでいたからだが、諸事情から最初の5冊程度で中断して一年たってしまった。今年も見かけたが拾うのはヤメにした。自宅の積ん読が多すぎる。なにより昨年・一昨年・そのまた前の年のリサイクル図書がそのまま書棚に保存されている。もちろん拾ってきたクリスティも読み切っていない。

 だったら今年こそはまったく拾わないという覚悟が出来ればいいのだが、図書館に出向くたびにワゴンをねめつけるのが習いとなってしまった。オモチャ箱のようにごちゃごちゃと宝が詰まっていそうで、その上タダでいただけるものだから、ついつい惜しくなって拾ってしまう。

 行くたびに2冊を持ち帰る。最初は土曜に行って日曜も出かけたので2週にわたって計6冊を持ち帰った。以下がこの春に拾ったリサイクル図書だ。


ウは宇宙船のウ レイ・ブラッドベリ

 昨年だったか、この短編集から映画化された。それにともない新訳か新刊が創元、早川両方から文庫で出版されたので置き換えられたのだろう。映画公開とともに借りてきたが、敢えなく<図書館に積ん読>となった。仕切りなおしだ。

フォックス家の殺人 エラリイ・クイーン

 クイーンもいまなお新しい読者を獲得して借りられているはずだ。置き換えだと思いたい。「フォックス家」は後年のライツヴィル物の中でも渋い味わいの作品で、僕の好みでは上位の作品だ。そして結末の意外さと印象深さもクイーン作品の中で上位にくるだろう。

ふらんす物語 永井荷風

 独身のころは映画館の暗闇を出て天気があまりにいいと、ブラブラとそのまま街をあてどもなく歩いた。決して名所・旧跡を歩くのではなく、不案内な街を歩いて無機質な建築物とささやかな自然がいりまじった都会を見るのが好きだった。今でもこの時期になるとそんなのんびりした気分にひたりたくなる。出かける余裕がないから、せめて荷風さんの散歩に付き合わせてもらおう。 

車椅子に乗った女 E.S.ガードナー

 ガードナーのペリー・メイスン物は代表作を何冊か読んだきりだ。高校生の頃は書店にずらっと並んでいたものだが、いまや新しい流行作家のミステリーに場所を譲っている。特徴を言えばハードボイルド風に煽情的なスキャンダルに満ちた依頼人たちの窮地を、弁護士ペリー・メイスンが後半の法廷であざやかに引っくり返すという切れ味に尽きる。読みやすいしスリリングな展開で飽きさせない。それでいて単なるハードボイルド物と違ってなしくずし的に謎が明かされるのではなく、それなりに謎解きの醍醐味も味わえる。

 難点を言えばタイトルからどれが面白いかどうかが全く判別できない。どれも似たり寄ったりの平板なタイトルだ。本作も読む価値があるかは分からない。でも久々に一冊くらい読んでもいいかなぁ。

チョールフォント荘の恐怖 F.W.クロフツ

 ディクスン・カー読破の暁にはクロフツ読破を宣言しようと思うのだがいつになるやらわからない。とりあえず〈代表作を読む〉としておこう。決意のグレードを下げてはみたものの、あまり聞いたことのないタイトルの作品を拾ってきてしまった。昨年のクリスティの二の舞だ。

伊豆の踊子 川端康成

 昨年のちょうど今頃、川端康成にハマっていた。「伊豆の踊子」も岩波文庫で読んだが、併録の作品が出版社によって違っている。今回拾ったのは新潮文庫。それもかなり古い。70年代っぽい表紙だ。ちなみに併録の作品はそれぞれ以下のとおり。

(岩波文庫版)
 十六歳の日記
 招魂祭一景
 青い海 黒い海
 春景色
 温泉宿
(新潮文庫版)
 温泉宿
 抒情歌
 禽獣

 さらにおまけ。3週目ともなるとワゴンにはめぼしい文庫や単行本はなくなり、古い雑誌や聞いたことのない児童本がほとんどだ。児童本の流行りすたりが一番はげしいのかもしれない。そんな中に河出書房から出された

ブック・ガイド・ブック・1983(河出書房)

を見つける。かなり汚いし、パラパラと見ると河出らしく結構難しいジャンルのガイドにページを多く割いている。こんな本を拾うのは僕ぐらいなものだろう。

 83年と言えばまだ大学でノンビリしていた時期だ。ニュー・アカブーム真っ只中で、浅田彰が大学助手の身のほどで、やれ構造だリゾームだとカタログ的趣味で柄谷行人や蓮實重彦の著作を含むポストモダン本の数々を紹介している。そこに使われる語彙のほとんどが今や使い捨てられたギャグのように精彩を失って、〈空虚〉という記号と化している。〈浮遊するシニフィアン〉という言葉を誰かが言っていたと思うが、今読むとまさに意味(シニフィエ)と乖離した表記(シニフィアン)だけが虚しく漂っている感じがする。
posted by アスラン at 12:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 図書館のすべて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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