「パレード」を読んで吉田修一の手口をすっかりわかっていると思っている読者は、本書の表題作でもある「パーク・ライフ」でも、あんな終り方するのかしらと思うかもしれない。なにしろ出だしから、日比谷公園でののどかな風景が描かれる。深刻にならない程度に孤独で、それを楽しんでもいる人々がいる。そこにちょっとだけ変わり者の主人公が、ちょっとだけ好奇心の強い女性と公園で再会する。それが物語の始まりだ。と思って何事か起きるのを期待しているうちに二人の物語は終わってしまう。いやもしかしたら始まってもいない。
でも、やはり何かが確実に終わりを告げ、そして何かが始まったのだ。それが女性の別れ際のたった一言であり、しかも語り手でもある主人公の青年にも真実を知らされる事のない何かだ。僕らは、そのあっけない一瞬に呆然とするしかない。読み手だけでなく語り手にも秘密のまま著者は作品を終わらせてしまうところが、なんともスゴい。柔らかい文体の体裁とはかけ離れて、きわめて悪意に満ちた一撃だ。それに比べれば、もう一編の「flower」なんて分かりやすいものだ。
(2005年5月20日初出)



