2013年07月22日

発見!角川文庫2013

 角川文庫の貪欲さには、ほんとに感心させられる。いよいよ「新潮文庫の100冊」が大きく変わり老舗の余裕をかなぐり捨てた夏に、ナツイチがナツイチらしさを放棄してまでAKBという千載一遇のキャラクターと心中しようと決めた暑い夏に、唯一残された角川文庫は、いわば王道を往く道を選んだ。

 表紙には「名作大漁」の大書とともに、いつもの「ハッケンくん」が鼻のビックリマークを強調させてドドーンと真ん中に居座っている。最初の見開きにはハッケンくんの旅が今年も変わりなく続くことが語られるのだが、いったいナツイチのように不思議ちゃんキャラの文学少女が、背伸びしてまだ見ぬ世界を見すえる言葉が綴られるわけでもなく、およそ意図というものが感じられない、たんなるお約束のページに見えない事もない。だが、最大のライバルだったYonda!はいなくなった。避暑地のハチも影が薄くなったようだ。いまや、ハッケンくんは何をやってもゆるされる愛されキャラへと育った。ストラップでは、貞子になり、ケロロになり、そして犬神家のスケキヨになって逆立ちまでしてしまった。天晴れとしか言いようがない。

 スペシャルカバーと言えば、まずは新潮文庫のスタイリッシュなカバーが思い浮かぶが、それも今年は無くなってしまい、新潮に追従した角川文庫の「てぬぐいかまわぬカバー」が、レトロでモダンなスタイルをつらぬく事になった。さらには有名漫画家とのコラボカバーに力をそそいだナツイチも、今年は一休み。やはりナツイチに追従したはずの角川は、今年はジブリの近藤勝也氏を起用して「海がきこえる」を彷彿させるような見事に情感にあふれたイラストを、名作3作品に提供してくれた。

 そう、今年の角川の目玉はジブリだ。公開前から妙に評判のいい宮崎駿監督の新作「風立ちぬ」をフィーチャーした文庫フェア企画は最強の布陣だ。<堀越二郎と堀辰雄に敬意を表して>生み出された宮崎監督渾身の一作に寄り添うように、一冊の短編集と一冊のドキュメントがラインナップされている。角川お得意のメディアミックス戦略と簡単には言えないくらい、完璧な三角形だ。それに比べれば、原作有川浩映像化作品と題した「図書館戦争」と「県庁おもてなし課」は、角川のあざといメディア戦略の鑑ともいえる企画だ。

 ナツイチは、AKBによる感想文イベントをお台場合衆国に持ち込んでいるが、まだまだ甘い。角川文庫は昨年からniconicoと手を組んで、スペシャルコラボ「角川の夜 ニコニコ超夏祭り2013」なるものを開催(開祭)している。このイベントでは批評バトルが暑く繰り広げられる。なんだか面白そうだ。それに感想文についてもPOP感想文と、ちょっとひねった形式で中高校生に受け入れてもらおうとしている。

 このなんでもありの姿勢は本来ならば「垢抜けない」と苦言を言いたくなるところだが、今年に関しては新潮もナツイチも「らしさ」を捨ててチャレンジしてきた事もあって、「発見!角川文庫2013」だけが本来の「らしさ」を徹底した結果、掲げたキャッチコピーにもあるように「大漁」と言いたくなるような賑わいだ。
posted by アスラン at 19:36| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 夏の文庫フェア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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