2013年07月16日

ナツイチ(2013年)

 すでに昨年から、恒例だった「夏の文庫フェア比較」の企画をやめてしまった。手間がかかるうえに、毎年毎年、前年の内容と見比べて詳細な比較記事を書くことがだんだん面白くなくなってしまったからだ。決してフェアの内容が代わり映えしなくなったというわけではない。ナツイチも「発見!角川文庫」もそれなりに意欲的に夏恒例の企画に取り組み、少しでも飽きさせない努力を重ねているのだろう。ただし、それは人生の特別な時期を過ごす事になる中高生に対してアピールする企画という事であって、僕のようなすれっからしのおじさんにとっては、そういった工夫を素直に受け止めるというよりは、ついつい「今年の工夫のセンスや意図」の妥当性を検討してみたり、アイディアを絞った編集部あるいは出版社の思惑が透けてみえるようなあざとい小細工に対しては、いたずらに邪推してみたりしてしまう。

 そんなに「夏の文庫フェア」にあれこれ口を出しているくせに、肝心の読書という点ではわざわざ購入して読もうとした事が最近の記憶ではほとんどない。いくら読書感想文が義務づけられていない気楽な身の上とはいえ、これではあまりにも「文庫フェア」を斜に受け止めているのではないか。まあ、そういった反省が出てくるのも、比較記事をやめてしまった余裕から出ているにちがいない。今年はナツイチから1冊買って読むことにしよう。

 なんてことを、さも殊勝な心持ちで言っているように書いているが、正直言えば、今年のイメージキャラクターがAKBだからに過ぎない。ついにやったかぁ。AKBとナツイチ、これまでのメインキャラの選び方からすれば、今現在、最強のアイドルグループであるAKBに登場ねがうのは、そう間違っているわけではない。グラビア的な効果、ういういしく瑞々しい夏のイメージにはぴったりのキャラだろう。

 なので、ブックカバー(それも大島優子がイチオシな僕としては、当然のように彼女と高橋みなみが並んでいるカバーを選択)を手に入れるために、枡野浩一「石川くん」を購入。カバーを入手する事が何よりも優先されるので、なるべく安い本、そしてそれなりに楽しめる本を探した。以前から読みたかった本なので、ちょうどよかった。

 今年のナツイチの目玉は「AKB48」、これに尽きる。彼女たちの中から85人が選抜され(今回の選抜は、感想文を書くことにたじろがない国語力の持ち主を集めたのだろうか)、ナツイチの85冊の文庫から課題とされた作品をそれぞれが読み、感想文を書く。もう中高生たちの悩みをガチに受け止めた企画だ。だから、AKBの誰が、どの作品を課題著書にしているかに関心を寄せ、好きなメンバーの課題図書を自分も読んでみようかなどと、少々浮ついた動機からでも、この夏の感想文苦行にアプローチしてみるのも決して悪くはないだろう。適材適所を旨に課題図書が割り当てられているのを一つ一つ確認しながらも、やはり大島優子には、あの芥川賞受賞記者会見で度肝をぬいた田中慎弥氏の「共喰い」が当てられていて、どれだけ彼女はアイドルとしての、一女優としての度量を試されている事に平然としていられるんだろうなぁと、改めて感心してしまった。

 ただし残念と言えば、そういうガチなイベントとは無関係な従来からのナツイチファンにとっては、AKBという祝祭的キャラが全面に押し出された今年のナツイチに、「なんだかねぇ」という感想をもってしまうかもしれない。これは単なる邪推に過ぎないと前もってことわっておくが、ナツイチはそろそろ大きく変わる時なのかもしれない。つまり、潮時を迎えているのかも。ナツイチと言えば、軽井沢を思わせるような夏の避暑地感が売り。そこにうまく当てはまる不思議ちゃんキャラの女の子と、夢見るようなポエムが同居する。そこには遊び心も満載で、次に何を読めばいいかを先読みした「次はコレ」ナビや、ナツイチの名物ともなった「文豪×有名漫画家コラボ」のスペシャルカバーが楽しかった。
 
 有名漫画家のスペシャルカバーが画期的だった事はまちがいないが、最近の集英社文庫の装丁は非常にデザインが活き活きとしていて見ばえがするものばかりになった。あえてスペシャル感を強調しようとしても埋もれてしまうくらい、ティーンズ向けやOL向けのデザインが増えてしまった。いまさらスペシャルを掲げる必然性が感じられない。

 そこへきてAKBだ。もちろん今年だけの企画ではないかとも思うのだが、ひょっとしてAKBが感想文を書き、それを「お台場合衆国特設ブース」でお披露目するというイベントが中高生に好評であれば、今後も続く可能性も考えられる。ただし、いっきに「ナツイチ感」が希薄になった事だけは確かだ。

[追記(2013/07/22)]
 先日、立川南口のオリオン書房アレアレア店に行って何気なく文庫フェアの平積みを見て回って驚いた。集英社文庫、つまりナツイチの文庫フェアラインナップがすべてラッピングされている。なんじゃこれは!で、すぐに思いついた。ナツイチの文庫のオビには、それぞれ感想文の課題図書としている85人のAKBメンバーの顔写真が印刷されている。推しメンが多いファンは出費がかさむ事だろうが、それより何より、そのせいでオビの万引きが絶えないのかもしれない。結果としてラッピングしてしまうのは書店の防衛策だから致し方ないが、毎年文庫フェアを楽しみにしている読書好きや、今年の感想文に悩む中高生が中身を確かめられないなんて本末転倒だ。もし来年も続く企画ならば、改善を求む!
posted by アスラン at 12:41| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 夏の文庫フェア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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