2011年12月08日

サム・ホーソーンの事件簿(1) エドワード・D・ホック(2004/07/09読了)

 ホックの短編をまとめて読むのは初めてかもしれない。高校時代にはエラリー・クイーン好きが高じてEQMM(エラリー・クイーンズ・ミステリー・マガジン)を毎月買ってはダラダラと読んでいた。ホックは当時のEQMMの常連作家だったので、タイトルは記憶してはいないが、何編か有名なものは読んでいると思う。クイーン(フレデリック・ダネイ)がホックの短編作家としての才能を認めていたので、クイーンつながりでお付き合い程度に読んでいた。好きな作家かと言えば、よく分からない。どうしても短編だけだと作家としての関心が薄くなってしまう。長編は一作も読んでいないと思う。なので、このように不可能犯罪だけがならんでいる短編集を読んだ読後は、実に爽快だ。

 いまちょうどホームズを読み直しているところなので、なおさらホックの生み出すストーリーの巧妙さが際だって感じられる。ドイルの場合、やはり語り口のおもしろさに重点があり、本格推理というよりは奇譚、伝奇といった物語に作者の関心がある。一方、ホックはクイーンやチェスタトンといった本格ミステリーの作家たちの洗礼をうけているため、不可能犯罪にこだわっているので僕らミステリーファンの期待を裏切らない。

【有蓋橋の謎】
屋根付きの橋に入った馬車が途中で消失してしまう。あざやかなミスディレクション。

【水車小屋の謎】
 水車小屋に住み着いた作家が作品を書き上げて町を去る夜に焼死体となって発見される。
 しかも汽車にのせたはずの作品が金庫から消えてしまう。冒頭から手がかりがある。その大胆さ。

【ロブスター小屋の謎】
 ロブスター小屋で奇術師が脱出を試みるはずが、密室の中で殺される。

【呪われた野外音楽堂の謎】
 野外音楽堂で黒人の幽霊に町長が刺殺される。しかしマント姿の幽霊はみんなの前から忽然と消える。

【乗務員車の謎】
 宝石をいれた金庫がある乗務員車で、密室状態で乗務員は殺害され、宝石が盗まれる。

【赤い校舎の謎】
赤毛の少年が校庭のブランコから誘拐される。先生がちょっと目を離しただけなのに、周囲のどちらにも少年がつれさられた痕跡がない。

【そびえ立つ尖塔の謎】
 協会の尖塔の頂上で牧師が刺し殺され、近くにはジプシーの男が。しかし彼は殺していないと言う。

【十六号独房の謎】
 有名な「13号独房の問題」と同様、独房からとらえた容疑者が消え失せる。しかも独房はきちっと鍵がかかったまま。

【古い田舎宿の謎】
ある渡しの近くに宿で強盗が押し入り、主人が銃で撃たれ、犯人は裏口から逃走。
目撃者は使用人の青年。だか裏口には内側から鍵かかかっていて、青年に狂言殺人の容疑がかかる。

【投票ブースの謎】
床屋の奥にしつらえたカーテンで仕切られた投票ブースに入った男が出てくるなり刺されて殺されている。しかし凶器も犯人の姿も見あたらない。見事な密室の謎。

【農産物祭りの謎】
 祭りの最中に一人の男が行方不明に。しかも100年後にあけるというタイムカプセルから男が見つかる。

【古い樫の木の謎】
 飛行機からパラシュートで飛び降りた男は、針金で絞殺されて樫の木にひっかかる。
(2005/5/17初出)


[追記(2011/11/17)]
 僕の好みは「有蓋橋の謎」とか「そびえ立つ尖塔の謎」などだろうか。書評を書いた当時は「事件簿1〜2」までだったが、今や「事件簿6」まで出ている。いやぁ、書きも書いたりという感じだ。カーのようなガッツリした味わいではないが、一つ一つが粒ぞろい。そういえば、その後「密室物」の作品を集中して読もうと思って、まず手本としたのが「有栖川の密室大図鑑」なのだが、本作の中の「投票ブースの謎」がラインナップされている。今トリックを思いだそうとして、また忘れてしまった。書評で「見事な密室の謎」と書いているのだから、そりゃ見事な作品だったはずだ。やれやれ、また読み直さねば…。
posted by アスラン at 12:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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