2005年05月13日

姑獲鳥の夏 京極夏彦(2004/06/28読了)

 初めての京極作品。しかもデビュー作。例の「箱本」というとんでもなく長い作品を立て続けに世に送り出し、あっという間に流行作家になってしまった彼も、彼の作品も、彼をとりまく環境も、なんとなく胡散臭いと思いこんで今日までずっと読んでこなかった。

 今回、初めて読んでなかなか楽しめた。いや素直に面白かった。要は、妖怪もの(ホラーやオカルト)とミステリーをうまく融合した娯楽作品という感じだ。

 確かに会社の同僚が読んで躓いたように、推理小説を期待すると躓く。必ず躓くだろうな。でも、なんとなく時代背景や大仰な探偵像からは、乱歩や横溝などが作り出した探偵小説の香りがする。

 その上、うんちくを語りまくる京極堂は、ヴァンダインのような本格ミステリー黄金期の探偵そのものに見える。つまり、本作はケレン味たっぷりのエンターテイメントというわけだ。どうして女性ファンが多いのかは、もうちょっと読み継がないとわからないが、京極堂の訳の分からないうんちくに躓きさえしなければ、思いの外読みやすい。

 しかしそれにしても、この内容で600ページも必要かと言われるとどうだろう。乱歩や横溝だったら、この半分以下で書けるんじゃないだろうか。饒舌すぎてサービス過剰なところが、この作品の数少ない欠点なのかもしれない。

本
「塗仏の始末」まで読み継いでしまった今となると、本作はそれほど厚くない。600ページ。いいんじゃないんですか。
もう一度読みに戻ってくるよ。
 だって単なるミステリーじゃない。
 単なる妖怪話じゃない。
 単なる憑き物落とし、陰陽師の話じゃない。
人間群像なんだ。ゆめゆめ、サブキャラをサブキャラと読み飛ばすなかれ。

(2005/05/13初出)
posted by アスラン at 23:29| Comment(0) | TrackBack(3) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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