2013年05月23日

2013年6月の新刊

大洋社のHP「Book Index」調べの新刊チェック。

久々に文章を投稿する。
仕事が正念場だったことやプライベートでよんどころな事情ができた事が諸々あって、ブログは開店休業に追い込まれた。丸一年とまではいかないが、9ヶ月程度は休んでいたことになる。
ちょうど昨年の8月25日に人類初のムーンウォーカーでアポロ11号の船長であったニール・アームストロングさんがなくなった際に、哀悼を表して一文を書き記したのが最後だった。

この9ヶ月間に決して読書まで休業状態だったわけではなく、ペースは落ちたが読んではいた。ただし書評を書くという作業はストップしていたので、リハビリが必要だ。まずは新刊案内のチェック。

06/7 一神教 VS 多神教 岸田秀(朝日文庫) 756
06/7 『こころ』で読みなおす漱石文学 石原千秋(朝日文庫) 660
06/14 大人にはわからない日本文学史 高橋源一郎(岩波現代文庫) 903
06/14 存在と時間(2) ハイデガー(岩波文庫)  1323
06/25 夢をつなぐ 宇宙飛行士・山崎直子の四〇八八日 山崎直子(角川文庫) 500
06/25 ギリシャ棺の秘密 エラリー・クイーン(角川文庫(海外)) 940
06/26 丕緒の鳥 十二国記 小野不由美(新潮文庫) 578


こんな感じだ。とりとめがないのはいつものこと。小説よりもノンフィクションや書評・評論についつい関心が向いてしまう。

岸田秀というと高校から浪人時代を経て大学に入った頃に「ものぐさ精神分析」という本に大変にお世話になった。なんだか大学に入ったとたんに精神的におかしくなった。地に足が付かない状態で大学に通う期間が数ヶ月続いた。今なら医者に訴える事も考えただろうが、そのときは自分がなんとなく後ろ向きになるばっかりで誰にも相談できなくなっていた。その時に一生懸命読んだ記憶がある。それ以前に友人に勧められて読んではいたが、おもしろいというだけで自分の身の上に当てはめて考える事が起こりうるとは思わなかった。その時期にはまってからいつの間にか忘れられた存在となった。読むかどうかは別にしても、店頭でちょっと中身を見てみるくらいはいいだろう。

石原千秋さんはテクスト論を武器に日本の近代文学を研究する大学教授であり、評論家だ。特に漱石に関する評論が多い。当初はあまり説得力がなく、反論したい文章も多かった。テクスト論の根幹には「作者を埒外に置く」という基本姿勢があるのにも関わらず、特定の作家(漱石)にこだわるのは矛盾している。絶対、漱石にこだわる内的理由があるはずで、それを押し殺したような評論はつまらない。だが、石原さんの中で象牙の塔で売れない、誰も読まないような本を書いては研究者たちしか関心を持たないような議論をするのではなく、もっとオープンな視点で自由に漱石を論じたいという欲求が高まった時期を経たらしく、最近の彼の本は少しだけ信用がおけるようになった。まあ、偉そうにいう資格が僕にあるわけではないが、少なくとも漱石を好きで読み継ぐという事にかけては、何も専門家に負い目を感じる必要はないのだ。「『こころ』で読みなおす漱石文学」は、まさに格好の評論と言える。

「大人にはわからない日本文学史」は読んだはずなんだけどな。荒川洋治,加藤典洋,関川夏央, 高橋源一郎,平田オリザの6人が「ことばのために」というテーマで一人一冊ずつアイディアを持ち寄って自由に書いたシリーズがあった。これも読んだはずだが、文庫になったのを機にもう一度読んでみよう。だが、あれ?中身をよく覚えてない。読んだはずだが、高橋源一郎さんの著作は小説も評論もエッセイもすべて文学への好奇心と、かつての古びた文学史を新しく現代に再生するという姿勢が一貫しているせいか、どれを読んだのか忘れてしまうことも多い。あっ!思い出した。残念。単行本を僕は持っているんだった。持っているのに安心して読み損ねている。残念というのは文庫を買って読む機会を損ねたということだ。文庫が出る前に、あるいは出たのをいい機会に、本棚の奥から引っ張り出してさっさと読んでしまおう。

「存在と時間」。もちろん読む気などない。いや読んでみたい下心はかつてはあったはずだが、岩波文庫の旧版は挫折。代わりに竹田青嗣さんの「ハイデガー入門」(講談社選書メチエ)を読んでお茶を濁した事はある。フッサールやメルロ・ポンティの現象学には並々ならぬ関心を抱いていた時期があったので、ハイデガーをつまみ食いするのは竹田さんの文章に感化された当時の自分にとっては当たり前の事だったが、やはり用語の難しさがあって当然のごとく挫折する。その「存在と時間」が新たな訳で岩波文庫に再登場するのは意義深い事だろう。だが、やっぱり挫折するんだろうな。

「夢をつなぐ」は女性宇宙飛行士・山崎直子さんの宇宙滞在生活を自ら書いたエッセイだ。「はやぶさ」の奇跡が僕にもう一度宇宙に対する好奇心を新たにさせてくれた。ならば、パイオニアたちの栄光をいつまでも振り返るのではなく、今まさに最前線で活躍している宇宙飛行士たちの現実に関心をもたないでどうするというのだ。

そして今月の終わりでは久しぶりに幸せな読書体験が待ち受けている。角川文庫版の新しく若々しいエラリーによる、生き生きとした国名シリーズの頂点とも言える一作「ギリシャ棺の秘密」を越前敏弥さんの翻訳で読める幸せが今から待ち遠しい。それと、いわずとしれた小野不由美の代表作「十二国記」の新作がいよいよ満を持して登場。いったい前作「華胥の幽夢」(短編集)から僕らファンはどれくらいじらされたのだろう。なんと2001年だ。あれから12年も待ってしまったのか。北村薫の「円紫さんと私」シリーズ同様、いくつか僕も待たされてはあきらめざるをえない作品がこれからまたひとつと増えていくのかもしれないが、とにかくは、夫ともどもじらすことにかけては手加減のない彼女の作品をこれからも待ち続けるとしよう。
posted by アスラン at 20:13| 東京 ☀| Comment(4) | TrackBack(0) | あっ、これ読みたい | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
書評再開して下さって嬉しいです。
次に読む本を選ぶ参考にしたり、過去に読んだ本に再発見があったり、いつも面白く読ませて頂いています。
Posted by まっきー at 2013年06月14日 09:46
まっきーさん、うれしいコメントをどうもありがとう。

もしかして昨年夏にコメントを残してくださった「まっきぃ」さんと同一人物でしょうか?

ひたすら自分自身をサンドバックに見立てて「打つべし!打つべし!」を繰り返してきただけのブログですが、一人でも定期読者がいると思うと、心強いです。
Posted by アスラン at 2013年06月17日 20:59
まっきぃさんとは別人です。
過去のコメントに目を通してなかったもので、紛らわしい名前にしてしまって申し訳ないです。
初めてコメントさせて頂きますと付け加えるべきでした。

これからも応援しています。
Posted by まっきー at 2013年06月23日 22:41
まっきーさん、失礼しました。

長音記号と母音文字(しかも小文字)との違いを、あだやおそろかにしてはいけないという事を改めて感じいりました。

こちらが一方的に勘違いしてしまっただけですので、お気遣いなきように。
今後もよろしく。
Posted by アスラン at 2013年06月24日 19:16
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