暗黒の館の冒険 エラリー・クイーン
いわずとしれた本格ミステリーの大家エラリー・クイーンの短編。「エラリー・クイーンの新冒険」(創元推理文庫)に収められている。久しぶりに読んで十二分に楽しめた。創元推理文庫だと、クイーンの長編はさすがに時代がかった翻訳なので、途中で中だるみしてしまう事が多い。だが、短編はストーリー重視で切れ味が鋭く、今でも読みやすい。思うに、もちろん長編は読みごたえがあるのだが、クイーンは本来短編作家向きだったのではないかと考えた事がある。「冒険」「新冒険」の作品はどれも出来が良い。オススメの短編集だ。
黄色い下宿人 山田風太郎
ホームズと漱石が同時代の人である事は知っていたが、これほどホームズ作品の登場人物にうまくとけ込ませた短編は他にないのではないだろうか。クレイグ先生や下宿のエピソードなどもうまく取り入れた上に、ホームズもののパスティーシュにもなっている。そして、夏目漱石に関するエピソードとして読んでも非常に興味深い。
密室の行者 ロナルド・A・ノックス
おそらくミステリー好きなら誰でも知っている密室トリックではないだろうか。というのも、よくある推理トリック本のたぐいには必ず載っていたような気がするからだ。ほら、1分だか5分で読める問題と解答との分かれているお手軽なクイズ本に。僕がこのトリックを知っていたのは、てっきりクイズ本のせいかと思っていた。江戸川乱歩が編んだ「世界短編傑作集」(創元推理文庫)で既に読んでいた。すっかり忘れていた。
妖魔の森の家 ジョン・ディクスン・カー
これは不可能犯罪の第一人者ディクスン・カーの短編だからというより、ミステリーの短編の中で一、二を争うほど忘れがたく、衝撃的な作品だ。なんども読んでるし、やはり先ほどとりあげた乱歩の「世界短編傑作集」に入っている。トリックの説明もわかりやすく、文章も読みやすい。
長方形の部屋 エドワード・D・ホック
さてタイトルにはどんな意味があったんだろうか?別に真四角でもまんまるでもよかった。
つまりタイトルは一種のレッド・ヘリング(誤導)だったわけだ。ラストの意外性に関しては、「そう落とすのかぁ」と、ちょっとはぐらかされた感じがした。
カニバリズム小論 法月倫太郎
これはまいった。食肉(カニバリズム)について長々と解説していて最後には不気味な結論に落ち着く。確かに気持ちの良い話ではないし、題材だけではミステリーとして面白いとは思えない。ところが最後に小気味よく落としてくれた。デビュー当時の作品は読んでいたが最近の作品は読まなくなってしまった。法月さん、なかなかです。
病人に刃物 泡坂妻夫
泡坂作品を初めて読んだ。綾辻が言うように、まるであのG.K.チェスタトンの手際に似て、物事の解釈を反転させてあざやかに真実を示してみせる。なかなか面白い。今度、亜愛一郎シリーズでも読んでみようか。
過去からの声 連城三紀彦
連城三紀彦というと恋愛もの。そうイメージしていた自分の先入観を大いに裏切ってくれた短編。やめていった刑事が一年後に同僚の刑事にあてた手紙の中で、やめた理由をふりかえるという凝った趣向。しかもそれが意外な結末に。連城のミステリも読んでみたい。
達也が笑う 鮎川哲也
これは「犯人当て」の趣向で作られた作品。トリックは見破った。でもそれは折原ーや東野圭吾や歌野正午など近年の叙述トリックなどで当たり前のように語られた手法だからこそだ。つまり彼らは鮎川チルドレンであるという証拠なのだろう。
(2005/05/11初出)



