[2006/9〜10]
文芸時評という感想 荒川洋治
今年の「小林秀雄賞」受賞作。「詩とことば」を読んだ直後だったので、著者がどんな時評を書いているか興味があった。最近高橋源一郎の「ニッポンの小説」で著者の文章の引用があって、この作品も取り上げられている。気分が高まっているうちに読まないと。
「近代日本文学」の誕生 坪内祐三
こういう明治を起源とした、もしくは明治国家を起源とした誕生物語は繰り返し繰り返し語られる。それは分かりやすく心地よい物語の典型だからだろう。笙野頼子だったら真っ先に批判するだろうな。でも面白い書き方ができるかどうかも大切な要素じゃないだろうか。坪内祐三は今のところは面白い。
エジプト遺跡ウォーキングガイド
エジプトを旅行する人向けに毎シーズン出されている雑誌らしい。神保町の書肆アクセスで見つけた。僕などはピラミッドの内部を丁寧にイラスト(しかもカラー)で紹介されているだけで800円はお徳だと思ったのだが、会社の派遣社員でバックパッカーの女性に話したら「高い!」と言われてしまった。彼女とは書籍に対する価値観が違うんだな(もちろん旅の対する価値観も彼女と僕とでは大きく違う)。
バックナンバーを見ると「ロゼッタストーン」の特集号があって表紙が石板のアップで魅力的。残念ながら図書館では蔵書なし。取り寄せるか思案中だ。
10ドルだって大金だ ジャック・リッチー
前作で初めて単行本が出版されたショートストーリーの名手の短編集。今回も冴えた短編がそろっている。特に僕のお気に入りは後半に何作かはいっているカーバンクル刑事もの。探偵すればするほど間違いだらけ。だけど解決の糸口を与えるのは彼自身というおかしさ。すでに読んだので実は積ん読ではない。
殺しの時間 若島正
あの<乱視読者>シリーズでおなじみの著者の、ミステリーばかりの書評を集めた本(?)だ。例のクリスティ「そして誰もいなくなった」を再読して、クリスティの巧妙な作品構成を分析した著者が、おそらくは同じように再読によってミステリー作品の巧妙さを語るのだろうか。ちょっとおよび腰になるのはネタバレの心配があるのかどうかということ。それと目次を見る限り僕の趣味と重ならないので興味がもてるかどうかという点だ。
と、ここまで書いて図書館で立ち寄って目次をみるとちょっと趣向が変わっている。ミステリーの書評には違いないのだが、目次のタイトルが<**を殺す>のオンパレードで、モチーフになんらかの形で<殺す>ことが含まれている作品を取り上げているようだ。<父親を殺す>とダイレクトなものもあれば、<時間を殺す>と比喩的なものもあり、さまざまだ。なんだ、やっぱり面白そうではないか。
文学全集を立ちあげる 丸谷才一 鹿島茂 三浦雅士
タイトルが魅力的な対談。しかもいずれ劣らぬ本読みの3人がどのような全集を作るのか楽しみ。ついでながら僕の好みから高橋ん源一郎・坪内祐三・目黒考二の3名で<全集を立ち上げ>てもらえないだろうか?
アンフェアな月 秦建日子
これもすでに読んでしまったので積んどくではない。書評も書いたので関心があるかたはそちらを読んでください。前作「推理小説」やテレビ「アンフェア」が面白かった人にはオススメです。スペシャルドラマ「コードブレイキング」があまり面白くなかったと思う方には、よりオススメします。
漱石先生大いに悩む 清水義範
まあ、これも読んじゃったよ。これも漱石つながりで読みたくなった。著者には珍しくパスティーシュではない。漱石とそれを慕う架空の女性とのやりとりを描いて、ちょっとしたミステリーじみた構成になっている。
贅沢な読書 福田和也
福田和也という人の本を実はまだ一冊も読んでいない。江藤淳の弟子をきどって、江藤が生きている間はお行儀よく猫をかぶっていたのに、死後はとたんにスキャンダラスな作品ばかり送り出しているように感じる。要するにやりたい放題だ。どこからつきあってどこまで付き合えばいいんだろう。この書評はひとつのキッカケになるかな。
エンデュミオン・スプリング マシュー・スケルトン
本を主題としたファンタジー。世界を支配できると言われる「最後の書」をめぐる物語。グーテンベルグなど歴史上の人物も登場するところなど、オーソドックスなテーマながら<本>に関する物語というところに惹きつけられる。
フロイトの函 デヴィッド・マドセン
こちらも歴史上の人物ジークムント・フロイトが登場する。精神分析をモチーフにしてかなりあくどい趣味で物語が紡ぎ出されているようだ。平積みされた新刊のオビに「本の雑誌」の吉野朔実の漫画でおなじみの春日武彦が推薦していたのも読んでみたくなった理由のひとつだ。
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