2007年02月07日

ウルトラマンの東京 実相寺昭雄

 実相寺昭雄さんが亡くなって始めたお弔い読書の第2弾だ。いや正確には「ウルトラマン誕生」という文庫に、単行本で出版された「ウルトラマンのできるまで」と「ウルトラマンに夢見た男たち」が含まれていたから、本作でいわゆるウルトラマン物語3部作の完結となる。

 「ウルトラマンのできるまで」はウルトラマンがどのような経過を経て誕生したかを著者の円谷プロとの関わりを中心に描いている。その際にもちろんウルトラマンやウルトラセブンで著者自身が監督した作品についてもひととおり触れている。

 「夢見た男たち」の方は、製作現場とスタッフに焦点をあて、素人にも玄人にも興味深い製作過程を分かりやすく説明している。また当時のスタッフそれぞれの熱い思いや苦労話を著者自らがインタビューして書いている。著者自身も詳しくは知らなかった事を面白がって聞き出しているので、こちらまで楽しさや当時の熱気が伝わってくる。

 ただし、正直「できるまで」に書かれている誕生秘話はどこかしらで一度は読んだ内容が多いので目新しさはない。「夢見た男たち」の方は詳しくは知らない事だらけだったし、現場に携わった著者ならではの企画で面白かった。

 そして今回のエッセイは趣向をグッと変えて、若き日の著者が実際に見た風景を求めて円谷プロ周辺の世田谷・砧(きぬた)を皮切りにロケに使用した場所などゆかりの地を訪ね歩く。

 結構ノスタルジックなテーマなので前の2作に比べると見劣りがするが、それでも昭和30〜40年代の東京の風景は、僕の微かな記憶と子供時代の暖かな記憶を結びつけるかけがえのない時代の風景なので、個人的には興味深く読めた。

 例えば、環状八号線はまだ出来立てで、道を横切るようにして「怪奇大作戦」のロケをしたという今では考えられないような思い出は楽しい。

 また著者が語っているように「ウルトラマン」のガヴァドンの回で、子供たちが落書きして遊ぶ空き地には必ず土管があった。地中に埋めて水道やガスなどを通すためのコンクリート製の太い土管は何故かわからないが無造作に置かれていて、あの当時の空き地には無くてはならない風景の一部であった。と同時に僕ら子供たちのかけがえのない遊具だった。

 もちろんそんな風景が残されているわけではない。ただ、多摩川の河原で撮影したという<夕日に向かってガヴァドンが消えていくシーン>が、今なお懐かしい心の風景として刻み込まれている。

 かと思うとテレスドンの回で、非常に近代的な都市のイメージを求めて夜の赤坂界隈をロケしている。当時出来たばかりの近未来的な建物(どこかの美術館?)の前景を効果的に利用していた。

 ちょっと意外だったのは、僕が思っていた以上に実相寺さんは和風へのこだわりがあったと「和風、洋風」という章で書いている。ウルトラセブンはSF色が強いドラマが多く、著者の監督した「第4惑星の悪夢」などはその典型だった。しかし著者はどこかに和風のテイストを入れたいと、例えば「狙われた街」の回でメトロン星人とモロボシ・ダンが座敷でちゃぶ台をはさんで相対するシーンを撮っている。

 これなど僕から見ると非常に斬新なアイディアに思えて、他の回の監督作品のイメージと合わせてスタイリッシュな映像作家だと単純に想像してしまっていた。でもあのシーンは、監督もスタッフも大笑いしながら撮っていたようだ。それでも僕には、緊張感もふっとぶほど強烈なユーモアに彩られたシーンは、川崎の町工場の夕景と絶妙の取り合わせに思えた。いつか書いたように、すでに隣人はエイリアン(宇宙人)なのかもしれないという想像がかき立てられるシーンだった。

 ペロリンガ星人という人を食った名前の宇宙人の回でも、退屈な暮らしに飽きたフクシン君という若者を励ます少年の家に行くと、奥の座敷には宇宙人の円盤群を映し出す大きなモニタが出現する。少年はペロリンガ星人だったのだ。この設定も、著者の和風趣味から採用されたものだそうだ。あまりうまくいかなかったと反省する著者だが、いまだに印象が強く残るのは、著者のこういう意外性に富むシークエンスなのだ。

 現在MXテレビでは円谷劇場という枠で「ウルトラセブン」を放映しているので、終盤にペロリンガ星人の「円盤が来た」が放映されるはずだ。もう一度著者の意図をかみしめながら見るのも楽しいだろう。

 実はその前に「怪奇大作戦」を放映していて録画していた。見たらその場で消してしまったので、著者の作品をあらためて見ることは叶わないが、まだ見てなかった「京都買います」を先日ようやく見た。これなどは著者の寺好きが反映されていて、まるで京都の観光案内のように様々な寺や庭園を独特なタッチでモンタージュしている。

 本書は世田谷の円谷プロ社屋から始まって、再び円谷プロに戻る。「帝都物語」を監督した著者らしいが、円谷プロの旧社屋には自分を含めてかつてウルトラマンを生み出した人々の情熱が<地霊>として残っていると感じている。数々の怪獣たちも今なお倉庫となった旧社屋で出番を待つかのように眠っている。

 そして今、実相寺昭雄自身も地霊となり、円谷プロの行く末を、ウルトラマンの未来を見守っているはずだ。

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posted by アスラン at 02:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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