2006年09月25日

何故二人は同じ本が読めないのか?(4)

 羅喉さんと僕アスランの読書リストの比較の続きです。

 再び視点を変えて、出版社別の集計を出してみる。

[出版社数]
 羅喉  18社
 アスラン27社


 ほら、今度も僕の方の乱読度を証明する形になった。が、何より出版社の数の差は、読書の傾向の違いとテーマの有無を示すものに他ならない。ではどんな出版社から本を選んでいるのだろうか。以下にベスト5を挙げてみよう。

[出版社ベスト5]
〈羅喉〉
  1.岩波書店 24冊
  2.中央公論社 7冊
  2.早川書房  7冊
  4.新潮社   4冊
  5.文藝春秋  4冊
〈アスラン〉
  1.講談社  10冊
  2.新潮社   9冊
  3.文藝春秋  8冊
  4.角川書店  5冊
  5.早川書房  4冊
  5.岩波書店  4冊
  5.幻冬舎   4冊


 まず僕のベスト5を見ると、講談社がトップなのはちょっと意外だったが、いわゆる大手出版社からバランスよく読んでいるという印象だ。特に専門性の高い本は少なくごく一般的な小説を中心に読んでいる事が、知名度が高い大手出版社に偏る理由だろう。一方の羅喉さんはというとダントツで岩波書店の本が多い。他を圧倒している。この24冊のうち21冊までが岩波文庫だ。そうなのだ。羅喉さんは単なる読書好きや読書フリークではなく、筋金入りの岩波文庫読みだったのだ。

 いわゆるテーマ読みなら僕も時々やっている。たとえば同じ作家の作品を全部読む。漱石やクイーンなどを読破したし、最近ではディクスン・カーを入手可能な限り読んできた。それ以外にイスラエル紛争の起源を探るというテーマを思いついて、わざわざ旧約聖書・新約聖書を読破し、ポール・ジョンソン「ユダヤ人の歴史(上・下)」を読み継いで、コーランまで手を出したところで冷静と情熱のあいだに入ってようやく一段落した事もある。

 ただ同じ出版社の本を踏破するという試みはしたことがない。もちろん講談社文庫や新潮文庫を読み継ぐという事と違って、岩波文庫を全部読むという事は、人類の叡智を読むという事と同義と言っていいだろう。羅喉さんのテーマ読みの詮索をした事もないし、本人にモチベーションの在りどころを伺った事もないので推測してもしょうがないが、読書の達人を目指す人ならば一度は夢見るテーマであることは確かだ。

 では僕はどうだろう?正直やってみたい気がしないでもない。ただし数あるマイブームの一つとなることは目に見えている。岩波文庫の敷居の高さに怖じ気をふるうという事もあるにはあるが、「人類の叡智」以上に、自らにわき上がる雑多な好奇心を無視できないというのが本音なのだ。

 最後にジャンル別の集計を検討してみよう。どのようにジャンル分けしようかと考えたのだが、やはり図書館で使用されている「日本十進分類表」に基づいて分類することにした。図書館の書籍についているあの数値である。普通は3桁の数字で一つのジャンル細分を意味する。小数点以下の数値にもさらに意味づけがあるらしいが、そこまで詳細に分析しても僕の手に余るので無視する事にした。以下がジャンル総数の比較である。

[ジャンル総数]
 羅喉  34種類
 アスラン12種類


 いやあ、予想していたとは言え大どんでん返しをくった気分だ。何のことはない。真に乱読度が高いのは羅喉さんの方だった。岩波文庫のテーマ読みの必然的帰結ではあるが、人類の叡智は全方位に知識の触手を伸ばす。要するに羅喉さんの読書には偏りがない。に引き替え僕の読書はジャンルにおいて偏りまくりだ。ではどんなジャンルを二人は読んでいるか?ベスト5を挙げる。

[ジャンルベスト5]
〈羅喉〉
  1.英米文学(小説) 11冊
  2.日本文学(小説)  8冊
  3.日本文学(評論、随筆、小品) 5冊
  4.日本文学     4冊
  5.ロシア文学(小説) 3冊
〈アスラン〉
  日本文学(小説) 40冊
  英米文学(小説) 11冊
  文学理論     2冊
  日本文学     2冊
  日本文学(評論、随筆、小品) 2冊


 羅喉さんの岩波文庫21冊なんてものともしない。僕は40冊も日本の小説を読んでいたのだよ。もっとノンフィクションや評論を読んでいる気でいたのだが、特にこの時期には小説ばかり読んでいたようだ。これが図書館のウェブ予約システムをめいっぱい利用してミーハー心をめいっぱい満たすような借り方をした結果なのだろう。購入して読むとなるとこれほどではなかったはずだ。

 羅喉さんのベストはちょっと修正が必要だ。一位の英米文学の10冊までもがお仕着せのSFだった。では真の一位は日本文学(小説)で僕と同じなのだが、たったの8冊。偏りがない。では5位のロシア文学(小説)の次点はなんだったかと調べると、

 6.ドイツ文学(評論、随筆、小品) 2冊
 6.フランス文学(評論、随筆、小品) 2冊


というようになんとバリエーションに富んだ文学空間なのだろう。岩波文庫を読むということは、洋は英米のみを意味するのではなく、ドイツ、フランス、ロシア、イタリア、ギリシャなどの文学を読む事をも意味するのだ。

 しかも羅喉さんの読書のバリエーションは岩波文庫を読む事で必然的にもたらされているかと思えばそうではないのだ。岩波文庫以外の読書でも

 宗教、刑法、民話、遺伝、動物学、薬学、河川工学、食物・料理、家畜飼養

といった多岐にわたるジャンルを読書に取り込んでいる。素晴らしい!

 あまりに見劣りがするままで終えたらくやしいので、読書ジャンキーを自称している僕にもせいいっぱいの見栄を張らせてもらうとすれば、

 装幀・製本、出版、雑書、日本史(関東地方)、論集、婦人問題、動物学、映画、文学理論、文学史

といったジャンルに手を出している事は言っておこう。もっとも分類表の限界というかラベルと中身が釣り合ってない場合がある事も言い添えておく。何しろ上記の「婦人問題」にあたる本は何かと言えば、酒井順子「負け犬の遠吠え」なのだ。いやはや、本当かいな、川崎図書館さん。

参考
 何故二人は同じ本が読めないのか?(1)
 何故二人は同じ本が読めないのか?(2)
 何故二人は同じ本が読めないのか?(3)
 アスラン読書リスト(2005年10月〜2006年4月)

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posted by アスラン at 03:33| Comment(1) | TrackBack(1) | 評論・エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 此処まで詳細な解析をいただくとは想いませんでした。感謝です。

 岩波が多いのは、父や祖父の物を拝借して読む事があるのと、一番初めに手にした文庫が岩波だった為、親しみやすいからなのではないかと想います。帯で色分けしてあるので、ジャンル別に探せますしね。案外私の様な初心者、初級者は、岩波文庫を愛用しているのではないでしょうか。

 昨年度後半は、積読消化期間でしたので、読み止しの物や、後手に廻しがちだった本をこなしていったため、小説以外の物が占める比率が多かったのだと想います。意識して小説以外のものも間に挟む様にはしていますが、普段はそれほど多岐に渡るジャンルに手を出してはいない筈です。若しこれが私の読書傾向のひとつであるとすれば、それは私の無知さのなせる業だと想います。基礎的な事や一般常識的な事で余りに知らないものが多いので、補わなければならない部分をあれもこれもと手にしてしまうのではないかと推察されます。(併しジャンルで34とは、私は何を考えて読んでいたのだろうか・・・・・・)
 只、文学については、日本、欧米、ドイツ、フランス、露西亜、その他のものと出来るだけ手広く読む様にはしています。中国(漢詩をたまに読む程度)、韓国などアジア系にまでは余り手を出していませんが、機会があればチョイスしてみるつもりではいます。
 私は、時事問題、哲学・工学系は苦手であっても簡易なものを選んで読む事はありますが、政治経済系については手を出す気は毛頭ありません。
 つまりは満遍なくアンテナを立てているのは、アスランさんの方なのではないかと思うのですが。
 限られた書籍しか手にすることが容易ではなかった昔と比べ、現代では余りに多くの出版物が氾濫しています。一方人の読書力は限られていますので、その全部に眼を通すのは到底無理であり、或る程度かっきりと自分の中に基準を持っていないと、その膨大な情報提供量に圧倒され、私の様に礎が心許ない者は舵操作が危うくなってしまいます。要は、立ち向かう勇気も度量も力量もないのです。それ等に対して怯まず泳ぎきっているアスランさんこそ凄いのではないでしょうか。

 この解析のお陰で、幾つかの事が解りました。先ず、少しは共通性のあると思われた(日本文学など)アスランさんと、何故読む本が重ならないのかと云うことに関してですが、共通性があると思われたものについては、アスランさんにとっては既読本で、私にとっては初読みであったのですね。私は読書ペースが遅い上に本を読んでいなかった期間が長くあったので、読書量が他の方々に比べて極端に少なく、「今更読書」が多い処にも要因があると思います。読書暦での年齢で云えば、大学生以上の大人(アスランさん)と、学童(羅喉)ですので、その二人を比べても同じ本に手を出す確率は極端に低くなってしまうのも肯えんぜます。

 次いで自分の読書傾向ですが、
@岩波好きであること:これは書店で先ず立ち寄るところが岩波文庫であることからして納得しました。
A古典が多い、B文学は多国籍に手を出している:意識してその様にしています。ドイツ文学が意外に少なくて驚きました。この時期は手にしなかったのですねえ。改めて吃驚。
C多分野に渡っている:これは先にも述べましたが、無知の穴埋め作業をしているのと、たまたま「積読消化期間」が間に入ったためです。ただし、読書録には一冊きちんと読み終えていないと記載しないようにしていますので、所謂資料読みで手にした本は、例え半分以上に眼を通したものでもカウントしていません。これ等のものは年間数十冊ありますので、これを加えると更に乱読度がアップする可能性が大きいと想われます。「積読消化期間」の影響を差し引いたとしても、自分で想っていたよりも乱読度数が高い事に、改めて愕然とさせられました。

 因みに、前:読み終えたばかりの本、今:今読んでいる本、後:次に読む予定の本を見てみると

○前:『テーバイ攻めの七将』:アイスキュロス/高津重視春;岩波文庫(赤)1973年初版(もとは1964年初版筑摩の全集に納められていたもの)AC467年作
○今:『タウリケーのイーピゲネイア』:エウリーピデース/久保田忠利;岩波文庫(赤)2004年初版(もとは1991年初版岩波の全集に納められていたもの)AC414〜413年作
○後:『胃は病んでいる』:伊藤漸;岩波新書自然科学V 1997年初版

 今月読み終える(であろう)本は、上の本に露西亜文学:ゴーリキイ(随筆)2冊とフランス文学:モリエール(戯曲)・ギリシャ悲劇:エウリーピデース各1冊を加えた7冊。

 これまたアスランさんの分析傾向通り(岩波が多く、旧いものが多く、文学については諸国にまたがっていて、乱読?)の結果と相成りました。
このままでいくと、今月は多分岩波ばかりになり、例え冊数は少なくとも、岩波フリークの岩波文庫読みと見做されるのも最もだと想います。予定の本を変更しようかしら。
Posted by rago at 2006年09月25日 19:47
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