メインキャラが、昨年の岡田将生・山下リオのコンビから多部未華子にバトンタッチ。なんとなく「ナツイチ」ブランドになってからというもの、同系統の女性が起用されているように思う。蒼井優・山下リオ・多部未華子。正統的な美少女、あるいは文学少女。なぜ「多部未華子」かというと、そこには単なるナツイチらしさという以外に「したたかな理由」があるが、それは後で触れよう。
テーマは「世界をめくろう。」だ。昨年は「はじまり。」だった。
(2006年)好きなほんんを一冊つくろう。
(2007年)ただ言葉がならんでいるだけなのに
(2008年)世界を変えよう。
(2009年)はじまり。
(2010年)世界をめくろう。
カタカナの「ナツイチ」になってからというもの、表紙のキャッチフレーズは、一年おきに「〜ろう」「〜よう」「〜ろう」と、前向きさ・ひたむきさを追い求める。「本をよむこと」が、世界につながる〈入り口〉であり〈はじまり〉だと、終始僕らに問いかけている。永遠なるマンネリではあるが、本はティーンエイジャーを人へ、モノへ、社会へ、世界へ、と誘うツールなのだ。
[スペシャルカバー(16冊)]
(ラインナップA)
注文の多い料理店 宮沢賢治
遠野物語 柳田国男
回想電車 赤川次郎
機関車先生 伊集院静
行動することが生きることである 宇野千代
岳物語 椎名誠
幸福論 アラン
はちノート絵日記
(ラインナップB)
銀河鉄道の夜 宮沢賢治
シャーロック・ホームズ傑作選 コナン・ドイル
人間失格 太宰治
汚れつちまった悲しみに 中原中也
こころ 夏目漱石
たけくらべ 樋口一葉
十五少年漂流記 ジュール・ベルヌ
(ラインナップC)
マリア様がみてる
スペシャルカバーは昨年の7冊から一気に16冊へと倍増した。昨年はナツイチ恒例となった「文豪の名作×人気漫画家コラボ」の表紙が6冊、残り一冊が岡田将生のグラビア表紙の「生れ出ずる悩み」だった。今年も人気漫画家の手になる表紙は7冊。昨年からの持ち越しは「こころ」と「人間失格」、それに「十五少年漂流記」だ。
あれ?「十五少年漂流記」は昨年からすでに今の表紙だったのに、なんでスペシャルカバーじゃなかったのかな。遅ればせながら今年は堂々と「ZETMAN」の桂正和×ジュール・ベルヌのコラボだと宣伝している。昨年までは国内の「文豪の名作」だったのqを、今年から「シャーロック・ホームズ傑作選」も含めて外国の「文豪の名作」を2冊増やしましたと言いたいのかもしれない。
ラインナップAは、マスコットの「はち」たちのイラストだ。蜂は夏のリゾート地の花や木や草原をイメージさせる。夏休みの象徴と言っていい。特にコンセプトが見えるデザインではないが、とにかくほのぼのとして癒される。あれ?こうなると、角川文庫のスペシャルカバー戦略との関係が気になるなあ。こういう企画ってどこでもダブりやすいもんなんでしょうか。それとも事前に他社の企画情報が耳に入ってきて、牽制しあうものなんでしょうか?
今年のラインナップは全部で101冊。新しく入った本が78冊、消えた本が64冊だ。全体の8割が入れ替えというのはほぼ昨年なみだ。毎度のことながら非常に高い入れ替え率だ。
[躍進した作家(3人)]
本多孝好(1->2)
三田誠弘(1->2)
村山由佳(1->2)
[後退した作家(4人)]
乙一(2->1)
関口尚(2->1)
太宰治(2->1)
林真理子(2->1)
躍進した作家、後退した作家、あるいは「今年入った作家(36人)」「今年消えた作家(31人)」。どれをとってみても、特に何か言うべきことばが見あたらない。いつものようにたくさん作品も作家も入れ替えがあって、しかも満遍なく配分されている。文豪の割り当てが極端に増減することもなければ、作家の傾向が若向きになったかと言われれば、そういう気がしないでもない。何か切り口があるはずだが…。
いや、「入った作家」「消えた作家」を比べてみると、なんとなく見えてきた。田辺聖子・杉本苑子・宇野千代が入り、池波正太郎・遠藤周作・開高健・吉行淳之介などが消え去っている。昭和以降のベテラン勢の入れ替えかなぁ。いや、今年は女性作家が増えているんだ。うん、間違いない。
(2010年) 女37人(45% 男45人(55%)
(2009年) 女24人(30%) 男57人(70%)
なんと昨年の30%から45%へと、女性作家が大幅躍進だ。参院選の大小政党の群雄割拠とくらべると、男性作家党と女性作家党はいつでも二大政党の綱引きになる。どうしても男性作家の比率が高いのは、歴史的・社会的経緯があるのでいたしかたない。それを乗り越えて女性作家党が大躍進した今年は、いわゆるポリティカルコレクトな革新をねらったのだろうか。だとすると、意図的に「作品本位」を妥協しなければならかったはずだ。それが成功しているかどうかは、ナツイチどまんなかのティーンや女性読者に聴いてみなければわからない。
[コピー・解説]
今年のナツイチは今ひとつ面白みに欠ける。たぶん、それは僕の勝手な思い込みからだ。スペシャルカバー戦略に力が入った分、肝心のキャッチコピーや本文の部分に工夫が見られなかったのだ。正確にはレイアウトの点で工夫は感じられる。昨年から導入された「読者の感想」だ。それまでの出版社側からのお仕着せのオススメポイントよりも「読者の声」の方が説得力があるし、素人っぽい感想でも読んでみようという気にさせてくれる。このアイディアが功を奏したのかもしれない。今年は「VOICE」とタイトルが付き、薄茶の背景色に黒色のフォントで、解説以上に目に入ってくる。
一方で解説自体は少し控えめになった。少ないながらも3割ある昨年から持ち越しの作品では、ほぼコピーも解説も変更はない。ただしVOICEを際だたせるために、解説の文字数を減らす工夫を行った。それがなんとも「コンビニエンス推敲」とでも言いたくなる手際なのだ。
岳物語 椎名誠
(2010年)シーナ家の長男・岳は、坊主頭でプロレス好き、釣り好き。…
(2009年)「さん」をつけるほど偉くないから『おとう』で十分だ。シーナ家の長男・岳は…
娼年 石田衣良
(2010年)…、ふとしたきっかけでボーイズクラブで働くことになる。魅惑的な大人の女性に出会い、さまざまな「性」のあり方に翻弄されながらも、年齢や見た目ではわからない女性の愛らしさ、欲望の哀しさを見出していく。
(2009年)…、ふとしたきっかけでボーイズクラブで働く事になる。さまざまな「性」のあり方に翻弄されながらも、女性の愛らしさ、欲望の哀しさを見出していく。
おわかりだろうか。本の解説にほとんど手を入れることなく、フレーズを削ったり、短い単語に置き換えたりするだけなのだ。
白夜行 東野圭吾
(2010年)1973年、大阪で中年の質屋が殺されるが、…その後の人生に浮かび上がる数々の犯罪。2人の心理描写を排した、痛いほどの悲壮感が漂う…
(2009年)1973年、大阪の廃墟ビルで中年の質屋が殺されるが、…その後の人生に浮かび上がる数々の証拠なき不審犯罪。主人公2人の心理描写を一切排した、痛いほどの悲壮感が漂う…
マイナス・ゼロ 広瀬正
(2010年)…昭和38年の約束の日、彼が目にしたのは、銀色に輝くタイムマシンだった。わずか47歳でこの夜を去った天才SF作家の代表作。
(2009年)…そしてその日、大人になった彼が目にしたのは、昔のままの苦く美しい"啓子さん"と、銀色に輝くタイムマシンだった。失われた昭和が鮮やかに蘇る、夭折した天才SF作家の代表作。
こんな事(文字数の削減)ができちゃうのを目の当たりにしてしまうと、そもそも無くてはならない言葉がちゃんと書かれていたのだろうかと心配になってくる。他の本でも多数見られるのだが、同じような削り方なのでもういいだろう。
コピーはレイアウト的な制約がなかったせいか、ほぼ手が入っていない。一冊だけ明らかに変わったのは「君に届け」だ。
君に届け 下川香苗(原作・椎名軽穂)
(2010年コピー)この秋、実写映画化!大ヒットコミックの小説版!
(2009年コピー)2009年秋からTVアニメ化!大ヒットコミックの小説版!
これも「コンビニエンス推敲」と言えない事もない。いずれも感嘆符で締めくくる2フレーズからなる。いくらなんでも強調しすぎだって!昨年は原作のマンガがアニメ化され、同時にノベライズがナツイチに入った。本来ならば企画ものなので昨年限りで消えてゆくパターンの本だ。ところが、TVアニメから実写映画が作られ、秋に公開されるようだ。少なくともひと夏は越したわけだ。
この実写映画の主役こそが、我らが多部未華子だ。表紙の項で触れた出版社の「したたかな戦略」とはまさにこれの事だ。多部さんをメインキャラに抜擢したのには、わかりやすい理由があったわけだ。さて、来年も引き続きナツイチのキャラクターをつとめるかは、この際不透明だと言っていい。
[今年新たに入った本(68冊)]
硝子のドレス 北川歩実
本当はちがうんだ日記 穂村弘
オリガ・モリソヴナの反語法 米原万里
女櫛 平岩弓枝
たけくらべ 樋口一葉
いつか白球は海へ 堂場瞬一
昔の恋人 藤堂志津子
愛してよろしいですか? 田辺聖子
ベリーショート 谷村志穂
春日局 杉本苑子
でかい月だな 水森サトリ
くちぶえサンドイッチ 松浦弥太郎
銭売り賽蔵 山本一力
夏から夏へ 佐藤多佳子
マリア様がみてる 今野緒雪
映画篇 金城一紀
ハニー ビター ハニー 加藤千恵
聞き屋 与平 江戸夜咄草 宇江佐真理
機関車先生 伊集院静
シャーロック・ホームズ傑作選 コナン・ドイル
氷姫 カミラ・レックバリ
行動することが生きることである 生き方についての343の知恵 宇野千代
ダーティ・ワーク 絲山秋子
ショートソング 枡野浩一
グラビアの夜 林 真理子
あなたへの日々 唯川恵
遠野物語 柳田国男
正義のミカタ 本多孝好
救命センターからの手紙 浜辺祐一
分身 東野圭吾
鈍感力 渡辺淳一
ハナシにならん! 笑酔亭梅寿謎噺 田中啓文
白い手 椎名誠
ジャージの二人 長嶋 有
小悪魔A 蝶々・伊東明
汚れつちまつた悲しみに…… 中原中也
そうだったのか!中国 池上彰
でいごの花の下に 池永陽
明日の約束(おいしいコーヒーのいれ方 Second Season ll) 村山由佳
青のフェルマータ 村山由佳
海を抱く 村山由佳
オー・マイ・ガアッ! 浅田次郎
回想電車 赤川次郎
恋のトビラ 好き、やっぱり好き。 石田衣良 角田光代 島本理生 嶽本野ばら 森絵都
空は、今日も、青いか? 石田衣良
1ポンドの悲しみ 石田衣良
寂聴仏教塾 瀬戸内寂聴
スタンド・バイ・ミー 東京バンドワゴン 小路幸也
はちノート絵日記 集英社文庫編集部編
美晴さんランナウェイ 山本幸久
永遠の放課後 三田誠広
失われた町 三崎亜記
「捨てる力」がストレスに勝つ 斎藤茂太
異国トーキョー漂流記 高野秀行
なつのひかり 江國香織
チェ・ゲバラの遙かな旅 戸井十月
少年少女漂流記 古屋x乙一x兎丸
トラちゃん 群ようこ
注文の多い料理店 宮沢賢治
銀河鉄道の夜 宮沢賢治
がんばらない 鎌田實
蛇行する川のほとり 恩田陸
ネバーランド 恩田陸
千年樹 荻原浩
家日和 奥田英朗
ももこの話 さくらももこ
たいのおかしら さくらももこ
幸福論 アラン
[今年消えた本(64冊)]
僕は運動おんち 枡野浩一
年下の女友だち 林真理子
トーキョー国盗り物語 林真理子
生れ出づる悩み 有島武郎
彼女の嫌いな彼女 唯川恵
漫画版 世界の歴史1 本村凌二
水滸伝 (一) 曙光の章 北方謙三
船乗りクプクプの冒険 北杜夫
救命センター当直日誌 浜辺祐一
はるがいったら 飛鳥井千砂
おれは非情勤 東野圭吾
あふれた愛 天童荒太
続・岳物語 椎名誠
男をトリコにする 恋セオリー39 蝶々・伊東明
幕末遊撃隊 池波正太郎
そうだったのか!日本現代史 池上彰
コンビニ・ララバイ 池永陽
走れメロス 太宰治
蜂蜜色の瞳おいしいコーヒーのいれ方Second Season Ι 村山由佳
天使の卵エンジェルス・エッグ 村山由佳
王妃の館(上・下) 浅田次郎
翼はいつまでも 川上健一
グリーンライン 赤川次郎
イチローイズム 石田雄太
スローグッドバイ 石田衣良
エンジェル 石田衣良
わたしの源氏物語 瀬戸内寂聴
シー・ラブズ・ユー東京バンドワゴン 小路幸也
無伴奏 小池真理子
犬のしっぽを撫でながら 小川洋子
桜さがし 柴田よしき
落花流水 山本文緒
笑う招き猫 山本幸久
雷神の筒 山本兼一
バスジャック 三崎亜記
堕落論 坂口安吾
「心の掃除」の上手い人 下手な人 斎藤茂太
王妃の離婚 佐藤賢一
泳ぐのに、安全でも適切でもありません 江國香織
姉の結婚 群ようこ
オテル モル 栗田有起
漂泊の牙 熊谷達也
焚火の終わり(上・下) 宮本輝
子供の領分 吉行淳之介
それでも やっぱり がんばらない 鎌田實
オーパ! 開高健
地獄変 芥川龍之介
蒲公英草紙 常野物語 恩田陸
エンド・ゲーム 常野物語 恩田陸
ZOO(1、2) 乙一
さよならバースディ 荻原浩
漫画版 日本の歴史1 岡村道雄
東京物語 奥田英朗
父親 遠藤周作
ベーコン 井上荒野
存在の耐えられない軽さ ミラン・クンデラ
荒野へ ジョン・クラカワー
バスルームから気合いを込めて ジャネット・イヴァノヴィッチ
ジェイン・エア シャーロット・ブロンテ
狼王ロボ シートン動物記 シートン
もものかんづめ さくらももこ
まる子だった さくらももこ
蠅の王 ウィリアム・ゴールディング
日はまた昇る アーネスト・ヘミングウェイ



