2006年03月26日

「ラブ・レター」「D坂の殺人事件」「卓球温泉」(1998年5月30日(土))

 新宿松竹で「ラブ・レター」(no.76)を観る。

 裏ビデオ屋の店長・五郎(中井喜一)は、頼まれて偽装結婚した中国の女性の遺体を夫として引き取るはめになる。彼女は田舎町のバーで仕事に明け暮れ死んでいった。彼女の唯一の幸せは五郎と巡りあえた事だ。その思いを綴った手紙が五郎ともども観ている者の胸を打つ。

 入管審査の時に一度会っただけの関係なのにただただ五郎に感謝する彼女のすがるような心と、その一途さにたじろぎながら彼女の思いを受け止め、遅すぎた自分を悔やむ五郎。

 核となるストーリーは現代的だが、演出も映像もいたってオーソドックス。古すぎると言ってもいい。前半は一人暮らしのアパートと仕事場を往復する五郎の慎ましい日常をよく描いている。隣人が騒がしいイスラム人だったり、朝は屋台村で多国籍の人々の中でエスニックなチャーハンを食べていたり、かなりリアルな映像が作り出されている。

 後半はつまらない回想シーンや彼女と一緒にいるイメージシーンが多用されてちょっと興ざめだ。

 テアトル新宿で「D坂の殺人事件」(no.75)を観る。

 原作は江戸川乱歩の同名の小説だが、実際には「D坂…」と名作「心理試験」をうまく組み合わせている。また幻の責め絵の作者が「陰獣」の大江春泥というのもファンには楽しく、心憎い脚本だ。

 実相寺昭雄監督の演出も見事だ。蕎麦屋のおかみと本屋の使用人のSMのシーンが安手のポルノ映画を思わせるのを除けば、真田広之扮する贋作師が自ら女装して鏡に写った姿から責め絵を描くシーンなど官能的で怪しげな乱歩作品の魅力を上手に引き伸ばしている。

 新宿コマ東宝で「卓球温泉」(no.74)を観る。

 夫や息子が自分を省みないのに憤って家出した主婦・園子(松坂慶子)が落ち着いた先が、新婚時代に訪れた旅館。今や温泉街自体が寂れてしまっている。

 そこで彼女の発案で卓球に温泉街の再生を賭ける事になる。卓球という目の付け所がいい。どう考えても若者に受けそうなスポーツではないが、温泉街と卓球の歴史を盾にとって、単なるスポーツではなく人と人とのコミュニケーションを生むことが温泉街に欠かせない卓球の意義だと描いている。

 「相手が返せないような思いやりのない球はいけません」

 園子が言い放つ通り、園子と旅館・高田屋の若主人・公平とはラリーを続ける事で心が通い合う。この長めのシーンは退屈するどころか胸がジーンとする良いシーンだが、ラストの夫婦どうし幼馴染みどうしのラリーも全く同じ演出なのは芸がない。全体的には面白く楽しい素敵な映画だけに残念だ。

↓クリックの応援よろしく!
banner_04.gif
人気ブログランキング
posted by アスラン at 01:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画評(1998年) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/15477015
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。