就学前の幼児を育てる親としては、寝る前に読み聞かせする絵本を図書館で探すのに一苦労した経験が必ずあるだろう。3歳ぐらいまでは何を読みたいという意思表示もないし、逆に何を読み聞かせしても喜んでくれたので、安心して適当な絵本を選ぶ事ができた。しかし5歳ともなると、だんだんと自分の好きな本を選んでくるようになってきて、親が好む本と子が好む本とではグッと違ってくる。
アニメを日頃見せている影響で、たまたま図書館に置いてある「名探偵コナン」の単行本を何冊も借りるが、マンガは読み聞かせには時間がかかって不向き。役に立たない。小学館から出ている読み聞かせ用の雑誌「おひさま」は、僕ら夫婦にとってはありがたい雑誌なのだが、最近では少々息子には飽きがきたようで、あまり喜ばない。
うちの子供は母親同様、虫を見るとワーワーキャーキャー逃げまどうくせに、ダンゴムシとカブトムシ、クワガタだけはこよなく愛しているようだ。いつぞやはダンゴムシなどがドアップで写っていたり、たくさんのダンゴムシが頁を埋め尽くしているような絵本(というより写真の入った解説書)を借りてきて、僕ら夫婦を卒倒させんばかりに困らせた。
島田かほさんの描く「バムとケロ」シリーズや「ガラコ」シリーズはとっても面白いし、シリーズとしてのつながりがわかるお遊びが絵のいたるところにちりばめられていて、子供より親の方が楽しんでしまい、残念ながら息子は今ひとつ食いついてくれない。「かいじゅうたちのいるところ」も、実は子供(とくに男の子)にとって楽しい絵本である以前に、かつては男の子だった僕ら男親にとってのノスタルジーに満ちた絵本だと言える。
今やうすれゆく当時の記憶をさぐりあててみると、電灯を消されてもなかなか寝つけない暗闇の中で、子供達はいろんな空想や妄想に耽っては、人知れぬ孤独をなんとか飼い慣らそうと悪戦苦闘していた。僕は「かいじゅうたち」が住む島に船を乗り出す夢を妄想した事がないことだけは確かだが、何か大人には説明しがたい自分だけにわかるアイテムや場所やキャラクターを空想のおともにしていたはずだ。
本書は、男の子の空想の世界を形にして見せてくれただけではない。いままさに現役のママさんたちが「いったいこの子は何を考えているのかしら?」と首をかしげざるをえない「男ども」の原型が、この絵本の中に描かれる「男の子の旅」に隠されているのだ。それに気づけば「なるほどね」とちょっとあきれ気味ではあるが、男の子の生態が少々くたびれたパパの中にも同じように飼い慣らされていると納得する事だろう。
男の子は「かいじゅうのしま」でかいじゅうたちと時が経つのも忘れて遊びまわり、かいじゅうから望まれて「かいじゅうのおうさま」になって思う存分に子分を従えて、やりたいことをやるのだ。でも、でも、懐かしいスープ一杯の匂いを嗅ぐだけでママが恋しくなってしまう。いつだってママのもとにもどってくるエンディングに、世のママさんたちはホッと胸をなでおろす。やっぱり、この本に癒されるのは、いつだって親の方に決まっているのだ。
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2010年05月31日
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