[1978年ランキング]
1.愛と喝采の日々
2.家族の肖像
3.グッバイガール
4.ジュリア
5.プリティ・ベビー
6.白夜
7.ナイル殺人事件
8.結婚しない女
9.テレフォン
10.スターウォーズ
淀川長治さんのベストテンに、はたして「グッバイガール」や「ナイル殺人事件」や「スターウォーズ」が入るなんて事があり得るだろうか。淀川さんは、作品の芸術性、格調の高さなどとともに、人間の心理の奥底にある苛烈な部分を見事にえぐり出した作品を好んだ。どちらかというとテクニックを弄したりストーリーや奇抜さだけで見せる映画は嫌っていた。同時に、言葉ではなく映像ですべてを表現できる映画を最も尊んだ。チャップリンや溝口が彼のお気に入りだった。
そうした人物の目には「ナイル殺人事件」は『見ても損はない(つまりはどうでもいい)』映画だったろうし、「スターウォーズ」は奇抜さという点で『面白いなぁ(どこかに取り柄があるもんだ)』と言っただろう。「グッバイガール」は脚本の見事さに及第点を与えてくれたように思うが、お気に入りではなかったように思える。単純に情に訴える作品にはやや冷淡なところがあるのも、淀川長治という評論家の厳しさであり、同時に弱点でもあった。
一方、双葉ベストテンには分かりにくいところはない。自分の好みもはっきりと解説で明かしているし、ミュージカル作品に点が甘い事も正直に告白している。なにより最上の娯楽作品には「デザートのように人をウキウキさせる楽しみがある」事を隠さない。一言で言えば格式高くなく、まるでアマチュアが下手の横好きで選んだような甘さと初々しさに満ちている。
この1978年という年は、僕がもっとも多感な中学3年〜高校1年の頃で、おそらくはその後の映画の趣味を決定したであろうエッセンスが凝縮している。僕ならば文句なしに「グッバイガール」はベストテンに入れる。この当時の僕のオールタイムベストワンだったはずだ。玄人の目には隙があっても致し方ない。自分が本当に惚れ込んだ映画とはそういうものだろう。一方で「ナイル殺人事件」は僕でももちろん入れない。こんなに点を甘くしてどうするんだと言いたくなる。ただし、この作品は正月興行の大作映画だったはずで、家族(父母と兄と僕)が揃って有楽町に見に行った懐かしい記憶と一体となっていて忘れがたい。
こういう作品をぬけぬけとランキングに入れてしまう著者のサービス精神には頭を下げてもよい。今さらながら双葉十三郎という映画批評家を発見した喜びは大きい。



