2010年05月19日

ポトラッチ戦史 かんべむさし(2010/2/21読了)

 この作家の名前は以前から知っていたが、どんな作品(どんなジャンルの)を書いてきたかは、全く知らなかった。SF作家(だった)と同僚に教えてもらって「あれ?『ブンとフン』を書いた人?そんなら読んだ事があるなぁ」などと無知をさらけだすところだった。亡くなって代表作に挙っていたので今後間違う事はないだろうが、故・井上ひさしさんの小説だった。「ブンとは何か?ブンとは時空を超え…」みたいな一節はいまだによく覚えているから不思議だ。作者名は忘れてた癖に…。

 それはともかく「かんべむさし」というひらがなの柔らかな物腰のペンネームに似つかわしく、作者の作風は一見すると星新一風のシンプルな描写を踏襲し、ユーモアの部分だけが突出している。特に表題作「ポトラッチ戦史」などは、文体は星新一のそれだ。多分に時代的な影響があったのだろう。当時はこういった星新一風の文体を真似した作品が、日本のSFにはあふれていたのかもしれない。なにしろ、作者は星新一や筒井康隆などが第一線で活躍していた時期に、次世代の作家として期待されていたからだ。

 僕に作者を紹介してくれた同僚によると、星新一というよりはSFを書いていた初期の筒井康隆の作風や味わいにそっくりだったそうで、「第二の筒井」と言われていた。元々、作家を志していたわけではなく、SFマニアとしてアマチュアから作家になった経緯があるので、文章は凝ったものではないが、ユーモア感覚だけは人にないものがある。

 「ポトラッチ戦史」などは、ゲームとしてのポトラッチの馬鹿馬鹿しさがエスカレートして、しまいには国だけでなく人類さえも滅ぼしてしまう。SFらしい皮肉な社会風刺をオチにもってきている。同時代のSF作家である広瀬正よりも、僕はかんべむさしの作風がしっくりくる。いっぺんで好きになってしまった。残念ながら、最近ではSFではなく純粋なユーモア作家として、サラリーマンを主人公に据えた作品を書いているようだ。

 いつだったか、かなり前になるが、TBSの東芝日曜劇場で萩原健一が主演したサラリーマン課長を主人公にしたドラマがあって、とっても楽しめた。設定は総務部総務課の例のマンガのような内容だったが、実は原作(原案)は、かんべむさしの「課長の厄年」なんだそうだ。原作とドラマでは全く中味が違うという事なので、枠組みだけ借りたに過ぎないのかもしれないが、ドラマを楽しんだ身としては興味がわく。次の作品として読んでみたい。
posted by アスラン at 15:11| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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