2010年02月26日

結婚案内ミステリー風 赤川次郎(2009/11/15読了)

 私、赤川次郎の小説を読むのは、これが初めてなんですけど…。あれだけ超売れっ子作家の名をほしいままにした赤川さんだし、おそらくは西村京太郎や山村美沙についで多作ではないかと思われるミステリー作家であるにもかかわらず、一度も読んだことがないとは自分でも驚きだ。

 トラベルミステリーの大御所である西村さんの小説は、乱歩賞をとって世に出た初期の作品がミステリーとしても人間ドラマとしても完成度が高いので、人に勧められて読む気になった。しかし赤川作品は、「三毛猫ホームズ」シリーズや角川三姉妹(薬師丸ひろ子、渡辺典子、原田知世の事。嘘です。もちろん姉妹ではありません。念のため)の主演した映画の原作の印象が強く、今も昔も作風にさしたる変化はないように感じる。それでも差しさわることなく書き継いでいける想像力と文章力の持ち主なのだろう。しかし残念ながら、初期の段階から僕の趣味ではなかったのだ。

 あの大林宣彦監督の「ふたり」も赤川作品だと知って同僚から借りてはみたものの、実家の本棚に寝かせてしまい、いまだに返却していないのは、ひとえに僕の怠慢と移り気に他ならない。そこで改めて赤川作品に注目するきっかけとなったのは、角川文庫の電子書籍サイト「文庫読み放題」で、40冊もの赤川作品が読めると知ったからだ。

 どれから読もうかと考えて、やはりさきほどの三姉妹、ではなく角川三人娘(これならいいだろう)が主役を演じた映画の原作がとっつきがよさそうだ。そのなかでも、実は映画自体もちゃんと観た記憶のない渡辺典子主演の何本かが気になってきた。

 渡辺典子というと、いまやベテラン女優となってはいるが、アイドルとしての寿命は短かった。言い方は悪いかもしれないが、他の二人と比べると華がなく地味だった。でも、ある意味それは一連の赤川ミステリーのヒロインをつとめたときから判っていた事だったのかもしれない。というのも「セーラー服と機関銃」のようなハチャメチャな女子高生という役柄ではなく、普通のOLや女子大生の役どころが多かったからだ。この「結婚案内ミステリー風」のヒロインもまさにそんな感じだ。

 ところで、僕はずっとタイトルの意味を「結婚案内(所)に関するミステリー」だと思っていた。映画のタイトルに「風(ふう)」が付いていなかったからだ。本書のタイトルからは「ミステリー風の結婚案内」というニュアンスが読み取れる。さして違いはないように思えるかもしれないが、映画の方が結婚案内所を舞台にするけれども主眼はミステリーにあるように聞こえ、小説の方はミステリーで味付けしてはいるが、作者の狙いは結婚案内所を日々訪れる男女のやりとりに関心があるように聞こえる。

 実際に読んでみると、どちらかと言うと映画のタイトルの方が近い。短編が4,5篇あり、それぞれが所長と所員の2名からなる結婚相談所
に訪れる男女をきっかけに起る事件を解決するミステリー以外のなにものでもない。おそらくは「結婚案内ミステリー」の方がすっきりしているタイトルだと、タイトルの変更に許しを与えた時に初めて気づいたんではないだろうか。それくらい赤川作品のタイトルというのは無頓着だと思う。

 僕もそうだが、北村薫を先に読み込んでしまった人にとっては、この短編で起るドタバタな事件はロマンチックすぎて違和感がある。せっかくの結婚相談所という設定なのだから、もうちょっと現実にありそうな事が起って、現実的に対処するなかで意外な事実なり思いも掛けぬ人間の面白さに触れるという(まあ北村作品のような)ストーリーが展開してもよさそうなのに、ドラマはかなりびっくりさせられる展開に落ち着く。これならもう、星新一のショートショートのように産業スパイや怪盗や殺し屋や宇宙人がいくらでも出てこられそうだ。そういうお手軽なところが、僕の趣味に合わないんだろうな。
posted by アスラン at 13:01| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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