2010年02月22日

笹塚日記 うたた寝篇 目黒考二(2009/11/22読了)

 笹塚日記の三巻目だ。これまでの経過としては、きわめて特異な読書人人生を送る著者が、ただひたする会社「本の雑誌社」に寝泊まりしながら本を読む。どうしようもなく眠くなったら寝る。そして読書の合間に仕事をこなす。そのぐーたらとも言えないが勤勉とも言えない筆者の人生そのものが封じ込められた、ただそれだけの日記がとてつもなく面白い。

 そのうえ、読書が趣味というより生き方そのものと化している著者は、趣味のギャンブルにも黙々と励み、週末は必ず競馬場に足を運ぶので、その日の日記には「終日、○○競馬場に行く」としか書かれていない。簡単なものだ。おそらくないがしろにしまくっているであろう家族の話は、日記には一切持ち込まない。これは、書きたくても書けないのか、はたまた書かないと潔く決めているのか。たぶん両方なんだろうな。

 では肝心の読書日記として、僕ら読書好きの要をたしているのかと言えばさにあらず。毎日毎日「読了」「読み切れず寝る」などと、本のタイトルだけが書きとめられているだけで、感想らしきものはほとんどない。でも、そのシンプルさがかえっていい。下手に「詰まらない」「面白い」と言われれば、読み手のアクがでてしまう。この日記は、水のようにガブガブと飲み干せるところがいいのだ。

 そして最大の魅力は、これほどまでに読むのかというほど、本を日々読み切っていく心地よさにある。一日に1〜2冊は読む。だが、本の達人ならばトータルでもっと読んでいる人はいくらでもいるかもしれない。ところが、この人(目黒考二さん)はずっと会社にいるわけだから、休憩時間とか移動時間とかに読書することは一切ない。しかも週末は競馬場に入り浸っているわけだから、なんと週末も読んでない事になる。

 かならず仕事を終えて夜、深夜、明け方に読む。そんな生き急ぐというか死に急ぐような生活を、もう何十年も通してきたのだろう。少々ガタが来ても当たり前というものだ。ついに大病をして、前作「親子丼篇」では会社で自炊を始めてしまう。シンプルな生活が、これで改善(読書好きからするとひょっとして改悪?)されるかというところで、さて本書だ。

 なにやら自炊の手際、というか単なる家事の手順にも慣れてきて、昼間のうちに笹塚駅前のQUEEN'S ISETANで夕食の食材を買い求め、やはり駅前にある紀伊國屋書店で料理本を大量に買い求め、美味しそうなレシピを試してみては失敗したり、時に成功したりする。なにやら、読書状況はついでで、食事日記、料理日記のような様相を呈してきたが、それでも同じ料理本を買って、同じメニューを作り出してデジャブにおちいるなど、相変わらず読書人の生き方自体は変わっていない。

 鍋やフライパンに、切った具材をどんどんぶちこむだけの料理が大半だが、それでも一年前と比べれば雲泥の差だ。「親子丼篇」のゲラを校正する作者は、一年前をふりかえって、このときは近所のそば屋で「冷やしおばけそば」なるものを連日食べ続けていたと、感慨にふけっている。うんうん、確かに。

 実は一巻目で、どこの店屋物の注文が多いかランキングを作ったのだが、本書でもやってみた。ただし自炊ともなるとメニューは様々なので、明確なランキングは作成不可能だ。よってアバウトな印象と思ってもらおう。

1.パンのみ 37回
2.ドライカレー 21回
3.ホットドック 19回
4.野菜カレー 16回
5.ロールパンサンド(生ハムとレタス) 14回
6.お茶漬け 11回
6.サラダ・パスタ 11回
8.栗ご飯 9回
9.うどん 8回
9.焼きおにぎり(ネギ味噌) 8回

 夕食に限って言えば、雑炊や鍋、ポトフも多く、さらに朝食のような鮭の塩焼きやアジの干物や納豆、冷や奴のとりあわせでご飯という夕食も多かった。さらにときには、料理本にならってラタトゥイユや「刺身のづけ丼」「豚バラのカリカリ焼き」など料理らしい料理も出てくるがあまり続かず、一日だけのメニューも多い。また、連日魚ばかりの「塩焼き週間」を設けたり、月に一度の外食の日があったりと、これまでの笹塚日記ファンが思わずニンマリとする展開も少なくない。

 では、せっかくだから外食の日や出先での食事、あるいは商店街などで買って食べたものなどのリストを挙げておこう。よっぽど外食で日頃の食事の不満を解消していると見える。笹塚日記当初の食生活がかいま見られるランキングではないだろうか。

江戸家のトンカツ定食 4回
新宿三丁目桂花の太肉麺 4回
甲州街道沿いの定食屋布美よしのサバ塩定食 4回
小田急デパ地下の天むす 3回
QUEEN'S ISETANパン売り場横のコーナーのサンドイッチとコーヒー 3回
ベーカリー・リスボンのピザトースト 2回
QUEEN'S ISETANの三色おこわ弁当 2回
東京駅銀の鈴横の店のつけ麺 2回
QUEEN'S ISETANの炊き込み弁当
十号坂商店街ささ屋のおにぎり
十号坂商店街ささ屋のサケ弁当
一ツ木通りのそば屋のざるそば
甲州街道沿いの定食屋布美よしの鰺フライ定食
笹塚駅前のドトール
小田急デパート10階三省堂書店脇のカフェテリアの「イカとエビとめかぶのパスタ」
小田急デパート10階三省堂書店脇のカフェテリアの「ズワイ蟹とオレンジの冷たいパスタ」
神保町すずらん通り裏のそば屋の大もり
甲州街道に面した牛角食堂の豆腐チゲ定食
甲州街道に面した牛角食堂の石焼穴子めし
甲州街道に面した牛角食堂のすき焼き弁当
笹塚駅前の田屋の天せいろ
神保町いもやの天ぷら定食

 いよいよ、次作「ご隠居篇」で完結だ〜。
posted by アスラン at 19:29| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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