アキラと見晴は74号鉄塔から表通りへと走っていく。
(A地点)
表通りはその先で森を貫いており、74号鉄塔から出た電線が表通り上空を斜めに通過していました。(P72)
航空写真を眺めながら白地図を塗り分けているときには、表通りの両脇に野原があって一部が森になっているというイメージを描いていたが、緑の濃淡だけを地図の平面で漠然と視野にとらえてみると、まさに小説で記述されているように「表通りが森を貫いて」いるとしか思えなくなる。「ブラタモリ」ではないが、見る人が見れば、明らかな「武蔵野の森」の痕跡が地図に残されているようだ。それだけの知識がないので、それ以上の事は僕には推し量れないのが残念だ。
見晴は、表通りから見える73号鉄塔を「男鉄塔」だとアキラに説明する。しかし詳しい話は次の72号鉄塔までおあずけを食わせる。
(B地点)
わたしたちは森と倉庫の境目を奥まで入って行きました。(P.74)
73号鉄塔がある森の一角は塀でおおわれている。森に踏み入るには、小説の記述にもあるように、お隣の倉庫(地図では「富士鉄鋼資材」)との境界から入るしかなさそうだ。確かに倉庫と森との境目には塀がないので簡単に森の奥へと侵入できる。ただし、塀を避けて森の奥に分け入るには、かならず倉庫のスライド式の門を通る事になる。倉庫の門が閉じていると入れないし、開いていても倉庫関係者の目があれば入りづらい。そもそも、この門をくぐった時点で不法侵入と言われても致し方ないのだ。
他に入口があるのかもしれないが、森そのものが侵入禁止地帯だと考えて方がよい。現状では73号の結界に近づく方法はなさそうだ。著者は実際に取材したのだろう。鉄塔の下に竿が渡されていて、(おそらく倉庫会社の)トラックの運転手の物干しとして利用されていることを、さりげなく報告している。



