「どくとるマンボウ」シリーズでおなじみの北杜夫が書いたファンタジーだ。いや、少年向けの冒険小説と言った方がいいか。この「少年向け」というところがくせ者で、必ずしも〈今の少年〉と限らず〈かつての少年〉をも惹きつける魅力をもっている作品だ。
えらそうなことを言ってるが、「どくとるマンボウ」シリーズをおそらく一冊ぐらいしか読んでいないのではなかったか。なにしろ中学生の頃のことだから思い出せない。
では「クプクプ」は読んだことがあるあと言えば、こちらも記憶にない。以前にこのブログにも登場した中学校の国語の授業で作らされた読書感想ノートによると、読んでなさそうだ。井上ひさしの「ブンとフン」と間違えていたかもしれない。この「クプクプ」も「ブンとフン」も、日本のどこにでもいそうな一家族の中の少年の視点から、一気にファンタジーの世界に飛翔するところが、きどってないでゆかいだ。
おそらく、中学〜高校ぐらいで読んでいたら、この気取りのなさがつまらないと思えていただろう。なんでもかっこつけたがる〈きどり〉があるのが、若い頃の目線だったからだ。
クブクブは、自分が書いた、いや書こうとしていた物語の主人公となって、空想の世界に飛び込んでしまう。おまけに完結していない、先の見えない未知の世界が待ち受けているのだ。その世界では、「宝島」と見まごうような航海の日々と、海賊に遭遇する物語だ。
とってもナンセンスでありながら、いつでもどこでも、あの日本のどこにでもある町に、家に、家族に戻れる安心感が、クプクプ以外のぼくら読者には最初から満たされたファンタジーだ。これに似たものを僕らは長く親しんでいるはずだ。そう、あの「ドラえもんとのび太」の冒険の原点のような作品だ。
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2009年12月02日
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