見晴一人の鉄塔探索は、翌日の朝から再び始まる。「翌日も重厚な青空が詰まったような上天気でした。」(P.47)と書き出されているように、鉄塔調査に青空は欠かせない。なんといってもむき出しの太陽の暑さと雲のない青空のすがすがしさを背景に、鉄塔の姿を追い求めるのが理想だろう。
(A地点)
わたしは畑の中に入り、x号鉄塔(注.北側に見える次の鉄塔の事)の方へ歩いてみました。やがて塀や柵が重なって進路を塞がれました。(P.48)
ということで、またしても送電線の真下をたどっていくことは、あっさりと断念しなければならない。町中にあるからだろうか、次の鉄塔での間隔は短いため、表通りからまわりこんでも鉄塔の姿を見失わないので、安心だ。このx号鉄塔は「無帽で尖った頭頂を持ち、身長が高く瑞々しい女性型鉄塔」(P.48)だ。
さきほどまっすぐ送電線の下を突っ切ろうとした畑の左隅に、片山線の鉄塔が見えている。こちらは「料理長(コックさん)型V吊り男性型鉄塔」で、部材は鋼管を使っている。見晴の目には「不細工」と映るのだが、はたしてそれほどに違いがあるとも思えない。ただ、x号鉄塔の「尖った頭頂」は非常にすっきりとして気持ちがいい。
表通りをまっすぐ進んで、雑木林をすぎたところで左に折れる。その奥にx号鉄塔はある。
(B地点)
小さな雑木林を過ぎたところは芝生で蔽われた広い更地(さらち)で、その片隅にx号鉄塔が立っていました。(P.48)
ストリートビューで確認すると、現在は更地とは言えず、いくつか建屋が見える。だが、元は更地らしきひと囲いの隅に鉄塔が立っているのは変わっていない。
標示板からx号鉄塔が〈75号鉄塔〉であることがわかり、見晴は「次第に明らかにされてくる鉄塔相互の関係」に興奮する。つまり、異形の75−1号というのは、75号と76号の間に位置する鉄塔だということが判ったわけだ。これ以上の事は鉄塔探索からは見えてこない。なぜ枝番なのか。あとから作られた鉄塔なのか、もとは別の系統の鉄塔だったのが、のちに武蔵野線に吸収されたのか。
正直、この小説をなんども何年も読み継いでいる僕にも、この謎は解明されていない。ただ、見晴と同様に「鉄塔相互の関係」だけは、つかんだ気になっている。それでとりあえずは十分ではないかな。



