2009年09月29日

“文学少女”と月花を孕く水妖 野村美月(2009/6/11読了)

 何気なく図書館で手にとって、表紙のアニメ風のイラストとタイトルの〈文学少女〉というネーミングに引き寄せられて、つい借りて読んでしまった。その後、本作がずいぶん前からファミ通文庫あるいはラノベというジャンルにおいて人気シリーズであることを、ようやく知った。しかも、すでにシリーズは完結してしまっていることも、今回初めて知った。まことに縁のない世界だったわけだ。

 「今日の早川さん」を読むと、いわゆる文学少女にもいろんなタイプがいることが知れる。いや、あの中で文学少女と自らを言い切れるのは、純文学読みの岩波さんとレア小説読みの国生さんだけか。一方、本作に登場する文学少女は、この二人とも(もちろん)タイプが違っていて、少女趣味を絵に描いたように、ロマンチックな乙女心をときめかす文学少女だ。それでありながら、一方で妖怪じみた素性を持ち、彼女を陰日向にささえる男の子の書いた文章を文字通り(ムシャムシャと食べて)味わってしまう、というホラーコメディの要素を抱え込んでいる。ここらへんの事情には、何か深い(いや、ラノベに深さはない、はずだ)ものがありそうだが、何しろ三作目と四作目の間に発表された「文学少女特別編」なる作品から読んでしまったので、シリーズのお約束のいくつかが読み切れていない。

 とにかく、訳ありの主人公達が、曰くありげな土地で、ミステリーと戯れるというのが、この文学少女シリーズの大まかなアウトラインであり、一種のファンタジーでもある。決してみけんにしわを寄せて読むべき素性の物語ではない。そこがラノベのいいところであり、つきあいきれなくなるところでもある。

 「図南の翼」で大穴を発見したのに味をしめて、本シリーズも小野不由美のように大化けしはしないかと、遡って読むことに決めた。毎回一人の作家、あるいは一つの作品が、ミステリーのモチーフとなって作品の雰囲気作りに影響を与えている。今回は泉鏡花とその作品がモチーフとなっている。残念ながら趣向はわかるが、彼の作品に不案内なので面白さが今ひとつ伝わらない。いや、ピンと来ない。

 それより、人の本棚をのぞき見するような興味が手伝って、どんな作家と小説にインスピレーションを得ているのか、追ってみたくなった。奇しくも今年の「夏の文庫フェア」で、角川文庫のラインナップに本シリーズがめでたく初登場している。ファミ通文庫なのにね。
posted by アスラン at 19:28| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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