79号鉄塔の結界内部から見晴は次の鉄塔を臨む。
そして80号鉄塔が、畑の向こうに横たわった雑木林の更に奥へと続いていました。(P.30)
農家の庭先から舗装路に出る。もちろん庭にも79号鉄塔の結界にも足を踏み込めないので、舗装路から農家を背にして見渡せば、見晴が見たのと寸分違わぬ光景が広がるはずだ。
ここからの道筋はなかなか興味深い。庭先を出るとすぐ前に畑が広がる。しかも、ちょうど真正面に広めの農道が走っていて、ここは一般人が通っても問題なさそうだ。そのどん詰まりに大きな雑木林がある。これは地図に書かれているように「4号野寺緑地」だ。野寺というのがこの地域の町名のようだ。
緑地というのがどんなところかは、立川市に住む僕自身の近くに「矢川北緑地」があることからよく分かる。子供を連れて散策もした事がある。公園のように行政に管理されたエリアだが、公園と違うのは、広場のように拓けたところが一切なく、ただ鬱蒼とした森林が続くところだろうか。もちろん遊歩道はあるので散策はできるが、可能な限り、自然や、自然に依存する生きものの生態系に干渉しないように、人は控えめに往来する。そういう場所だ。
中央を歩けば都会にはない自然の醍醐味が感じられるが、境界に近づくと、すぐ隣りにふつうの民家があり、人々が普通に生活している。そのせめぎ合いがなんとも不思議な空間を作り出している。
この「4号野寺緑地」と畑の境界に沿って右に折れると、雑木林の切れ目に道が通っている。
(A地点)
スニーカーを滑らせながら雑木林の斜面を駈け上がってみれば、現れたのはまた畑でした。(P.30)
見晴でなくても、この順路を歩く(駈ける)のは心躍る気分がするのは想像しやすい。人目を気にしないで、〈畑と雑木林と鉄塔〉の三位一体の風景を味わえるからだ。やがて畑の脇道を抜けて舗装路にぶつかる。
舗装路を1本挟んだ砂利敷きの駐車場の片隅に、80号結界が金網で保護されています。(P.30)
たしかにストリートビューで見ると、80号鉄塔結界の周囲は金網が張られているし、隣りに更地の駐車場もある。当時と違う点を言えば、舗装路側にレンタルスペース会社のコンテナが並んでいる点だろう。最近、小スペースを利用して繁盛している商売だ。その横にプレハブっぽい平屋が見えるが、事務所だろうか。
(見晴が)先を急いでいるからだろうか、80号鉄塔に関する記述は「長身」という一言で片付けられてしまっている。P.31に挿入された写真では、確かに塔高が高く足がスラッとしたV吊男性型・料理長型鉄塔だと分かる。
さて、次はいよいよ武蔵野線の終点、81号鉄塔にたどりつく。



