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    2009年08月31日

    鉄塔武蔵野線ウォーク(その3)

    [片山線9号鉄塔]
     76号鉄塔は高台の端に位置し、川を挟んで対岸には低地がひろがる。送電線が繋がった向こうには、赤と白に塗り分けられた巨大な鉄塔が見える。P.18全部を費やした大きな写真はおそらく76号鉄塔付近から撮影したものだろう。白黒写真なのではっきりとはわからないが、鉄塔の下の方が2色に交互に塗られていることはわかる。「これが77号鉄塔?」と思わせぶりなタイトルが付けられている。

    電線の下には川を渡る橋がありません。(P.19)


     実は新潮文庫版までは「用水路には歩道橋がありません。」と書かれていた。低地に広がる農地が「川」に沿って作られているのではなく、農地を囲むように「用水路」が作られたのだろうか?そう考えると、P.18の写真に写り込むはずの川が視野に入ってこないのは、ほんの小さな水路に過ぎないからかもしれない。歴史的な経緯はどうであれ、今や川は川だろう。

     見晴は76号鉄塔から元来た道を引き返して、「表通り」(P.19)に出て、坂を駈け下りる。橋を越えると川沿いに遊歩道に入っていく。

    (E地点)
     高台を見上げると、可憐な76号鉄塔が訴えかけるような目をして電線を握っています。(P.19)


     見晴は76号鉄塔には「若いお嬢さん」だと親近感を感じているのに、低地に陣どる赤白鉄塔には不満を感じる。碍子連がV吊りで「容貌から残忍な印象が漂い、悪意が隠されているように感じられてならないのです」(P.19)とまで言い切っている。

     そのほかにも「帽子」をかぶった料理長型だし、使われている部材が「垢抜けない」鋼管であったのも気に食わない。もちろん、ここまで嫌うのは、次の鉄塔が武蔵野線所属ではなく片山線という別の系統の送電線の鉄塔である事の伏線になっているからだ。

     遊歩道沿いに民家が続いていて、一番奥の民家を越すと、農地が見えてくる。片山線9号鉄塔はその中に立っている。民家と畑の境界を通って畑を回っていくと、鉄塔に近づける。

     見晴がよく観察したように「赤白鉄塔の下半分3段の腕金」で武蔵野線を、上半分3段の腕金で片山線を受け取っている。要するに空中で2つの送電線がクロスする地点にあるのが片山線9号鉄塔で、武蔵野線を「併架」しているだけで武蔵野線の鉄塔ではないわけだ。しかし見晴は「赤白鉄塔など武蔵野線にとっては仮の中継点に過ぎない」(P.22)と息巻いている。

     片山線9号の結界では、低地を地元とする子供たちと、見晴たち高台の子供たちとで「メンコの決戦」をして惨敗をした苦い思い出があるというエピソードも、片山線9号鉄塔を徹底的に武蔵野線から排除しようという、見晴しいては著者の純血思想の表れかもしれない。
    鉄塔武蔵野線ウォーク(1).jpg
    posted by アスラン at 06:27| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 鉄塔武蔵野線 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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