あらかじめ断っておくが、小説「鉄塔武蔵野線」が日本ファンタジーノベルス大賞を受賞したのが1994年の事だ。この小説が書かれる事になった経緯を語った著者の解説によると、以前からあたためていた〈鉄塔の物語〉の構想を形にしようと、送電線めぐりを始めたのが1993年2月のことだった。その過程で「武蔵野線」と運命的な出会いをはたした。だから、この稀有な小説に挿入された鉄塔の写真は、このときに撮影されたものだろう。小説の中の鉄塔おのおのの描写も1993年当時の風景だと思ってよさそうだ。
あれから16年が経過している。鉄塔をとりまく環境も変わっただろうし、あるべきはずのもの、特に空き地が、新築の建物でうめられた箇所もあるかもしれない。だが、地勢的なことを言えば、川や鉄道や高台や低地は変わることなく僕らを待ち受けているだろうし、なにより鉄塔そのものは、かつての送電線路の所属ではなくなっていようとも、〈改造〉されて姿を変えていようとも、間違いなく1993年当時の位置で、僕らを待っていてくれるはずだ。
[用意するもの]
(a)小説「鉄塔武蔵野線」(銀林みのる著、ソフトバンク文庫)
(b)白地図(起点となる鉄塔と次の鉄塔の、少なくとも2本が含まれるもの)
(c)(b)と同縮尺の航空写真(Googleマップより印刷したもの)
(d)(参考として)Googleマップ(ストリートビュー+航空写真+地図)
基本的には(a)〜(c)を用いて、(b)にたどった道筋や小説の記述を書き写していく。ただし、どうしても細かい道や建物が見えないときには、(d)を使って鉄塔の周囲を探索する必要がでてくる。運が良ければ、結界(鉄塔の4本の脚が形作る四角形の領域の事)の様子を見る事ができるだろう。
[75−1号鉄塔]
「199X年の夏」に、小学5年生の少年・見晴は、夏休み後半に入ったある昼下がりに、サッカーボールを片手に家を飛び出す。彼は2学期から北多摩地区への転入が決まっていて、この夏休みが、この住み慣れた土地とも、遊びまくった友人とも、お別れになる直前の、ほんのつかのまの猶予期間だった。
(A地点)
とりあえず市営グラウンド横の空地に行ってみました。そこは、壊れた自動車や残土の山などがある、わたしたちの第1の集合場所でした。(P.6)
この市営グラウンドとは「埼玉県新座市堀之内」にある殿山運動場の事だ。横の空地はすでにない。「壊された自動車や残土の山」があるはずだが、おそらくは現在、合同庁舎があるあたり、あるいは庁舎とグラウンドの隙間が空地だったのかもしれない。
(B地点)
サッカー・ボールを蹴りつけながら、人気のない通りを乾いた蝶のように走って行きましたが、あの鉄塔の近くに差しかかったとき、ぴたりと足を止めたことをよく憶えています。(P.6)
見晴の目を惹きつけた鉄塔は、異様な形をした「異形鉄塔」だった。それは、隣接する掘ノ内変電所(小説では「香皿(こうさら)変電所」)に送電線をいったんおろすために、形が左右対称でなくなるからだ。
見晴は鉄塔に金属製の板が掲げられているのに気づく。そこには「武蔵野線 75−1」とある。〈武蔵野線〉が高圧線の名前であることは一目瞭然だが、〈75−1〉という番号がどういう意味なのか?理解できないままに、見晴は南側にある次の鉄塔に向かう。
僕がたどった(b)のウォーキングマップを以下に示そう。フリーハンドの色鉛筆と文字のセンスのなさは、僕のもって生まれたものなので致し方ない。それより、75−1から道づたいに次の76号鉄塔に向かう赤線を引く前に、最初に変電所とシルバー人材センターの間をショートカットする線を引いてしまった(75−1周辺が汚れているのはそのせい)。白地図の恐ろしいところだ。やはり経路を引くためには、倍率の高い航空写真とストリートビューに頼るしかない。次からは慎重に歩を進めていこう。先はまだまだ長い。




初めまして、さがわ、と申します。
昨年、夏〜初冬にかけて、鉄塔武蔵野線を3回にわけて、ランニングで、たどった者です。
http://www.sky.sannet.ne.jp/ysagawa/tettoumusashinosen_1/tettoumusashinosen_1.html
人それぞれの、鉄塔武蔵野線です。
今回の、アスランさんの、鉄塔武蔵野線ウォーク
、すごいです。
ぜひぜひ、1号鉄塔へ、ゴール?してください。
私も、ランニングする前に、たっぷり半年は地図等で楽しみました。
今年の夏は事情で、
残念ながら、鉄塔武蔵野線は走れません。
アスランさんのウォークの
これからを楽しみにしてます。
たっぷり楽しんで下さい。
実際にたどった方からの話が聞けるのはとってもうれしいです。ランニングで、しかも3回でゴールされたとは、健脚がうらやましいです。しかも事前に下調べで地図と格闘されたんですね、やっぱり。
僕も、さがわさんの話を参考にたっぷりと楽しみたいと思います。夏の暑さが抜けないうちに一気に駆け抜けてしまおうと思っていたのですが、地図作りに結構時間が取られるので、どうせならば年内のゴールを目指すぐらいで、じっくり腰を据えてやっていこうと思います。
さがわさんのページもゆっくり見せてもらいます。先に見てしまうと、地図や本文を書くイマジネーションが萎えてしまうので、書いたところから現実の鉄塔との突き合わせを楽しみたいと思います。
「人それぞれの、鉄塔武蔵野線」
本当にそうですね。これからもよろしく。