ご存じ「探偵ガリレオ」シリーズの長編第2作だ。長編第1作は直木賞受賞作である「容疑者Xの献身」であるのは言うまでもないだろう。今回から、テレビシリーズで福山雅治扮するガリレオとコンビを組んだ内海薫が登場する。と思ったら、既にガリレオとは面識があることになっている。ひょっとしたら本作以前に別の短編で登場済みなのかもしれない。と、この書評を書き出した頃には、まだ「ガリレオの苦悩」が図書館で予約待ちだったが、その後入手して読んだのでこちらの短編集で初めて内海刑事が登場していた事がわかった。
「探偵ガリレオ」ではガリレオの相方は草薙という男の刑事で、湯川とは大学時代からの友人でもあるという設定だ。ところがテレビシリーズでは、柴咲コウ扮する女性刑事・内海薫が毎回湯川学の研究室を訪れるという人物設定が採用された。草薙は警視庁捜査一課に転属になっている。これは女っ気のない原作にテレビ向けのロマンスの一つも持ち込もうというプロデューサーの下心で、これはまんまと当たっている。
原作でも遅ればせながらテレビシリーズとのギャップを埋めようと、新たに内海刑事を登場させたわけだが、この長編に限って言えば、草薙が相方ではうまくない理由がある。草薙(原作では草薙は転属させずに残している)は犯人役の女性に恋愛感情を抱いて、自分を見失ってしまうからだ。「赤毛のレドメイン家」を読んだばかりなので、まったく趣向が同じなのに驚いてしまった。もちろん内容が全く同じというわけではない。草薙が使いものにならない分、とうぜんながら内海の探偵ぶりが目立つ。テレビでの薫のドジぶりとは違って、本書の内海刑事はなかなかの切れ者だ。そして彼女をバックアップして、草薙の逆走を止めるのはガリレオただ一人だ。
本書の犯人の犯罪トリックは信じがたいもので、しかもガリレオに言わせると完全犯罪である。このトリックの存在が明かされるときは、なるほど面白いと思ったが、被害者が毒薬で殺された時点で結末が見えてしまった。作者は「赤毛のレドメイン家」のようなミステリー黄金期の作品から、犯人と警察関係者との恋愛感情という趣向を採り入れただけでなく、メインのトリックにもミステリの父であるエドガー・アラン・ポーの「盗まれた手紙」のトリックをうまく応用している。ただし、盛んに目の前に手がかりをぶら下げたからだろうか、さすがに僕でも気づいてしまった。
読後に思ったのは、長編に仕立てるために恋愛物というオーソドックスな趣向を採用してはいるが、少々間延びしすぎているのではないだろうか。「容疑者Xの献身」では長編にするだけの必然性が内容に伴っていたが、今回の題材に長編に耐えるだけの魅力があるとは思えない。せめて中編ぐらいに納めておけば、いつものように切れ味鋭い作品になったのではないだろうか。ちょっと残念だ。
人気記事
2009年06月22日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック



