文学の輪郭 中島梓(講談社文庫,1985年)
ぼくらの時代 栗本薫(講談社文庫,1980年)
豹頭の仮面―グイン・サーガ(1) 栗本薫(ハヤカワ文庫改訂版,1983年)
栗本薫が亡くなった。個人的にはクイズ番組の回答者として一時期テレビではおなじみのタレントというイメージがつきまとうが、著作としては、ライフワークの「グインサーガ」は苦手なSFということで一冊も読んでない。ほぼ唯一読んだと確実にいえるのは、乱歩賞受賞作「ぼくらの時代」だろう。でも読後の感想をまったく覚えていないところを見ると、あまり気に食わなかったのだと思う。
これはひとえに僕の偏狭な好みにあったと思える。当時の僕ときたら、エラリー・クイーンの諸作を聖典とあがめ、海外ミステリー(それも黄金期の作家の作品)ばかりを読み、日本のミステリーを苦手としてきた頃の読書だったはずだ。乱歩は好きだったはずなのに、乱歩賞作品はどことなく侮っていた。日本のミステリーが偏見なく読めるようになったのは、綾辻行人と北村薫を読むようになってからだから、遅きに失っしたと言われても返す言葉がない。
もう一度、故人を忍んで、まず「ぼくらの時代」を読みかえそうと、図書館で予約をかけた。誰も借りてないと喜んだが、書棚から職員が回収する前に手にとってしまった人がいたようで、1人待たねばならなくなった。
もう一冊、借りてみた。彼女は中島梓のペンネームで文学を物語る評論家として名を成すところからキャリアが始まっている。Wikiによる1977年に「文学の輪郭」で第20回群像新人文学賞評論部門を受賞している。こちらの方も気になって借りてみた。こちらはすぐに借りられ、手元にある。最初の一行から大上段に〈文学〉をまな板ののせている、大変気合の入った評論のようだ。まだ中身はこれからだけれど、きっと江藤淳の評論が好きだっただろうな。
最後に、そっとではあるけれどグインサーガ・シリーズの第一巻「豹頭の仮面」を入れておこう。いまさら129巻で未完に終わってしまったシリーズを読破しようなどとも思わないし、そこまで関わろうとも思わないけれど、この有名な作品の出だしがいかなる文章であったのか、試してみたいという欲望に駆られている。読売新聞に追悼文を書いた田中芳樹が、彼女の原稿400枚を見せてもらったときに書き損じも書き直しもない堂々たる文章に驚嘆したと書いていて、そういう天賦の文才だったのかと、改めてお弔いの読書をしたくなったのだ。
果たせるかは、僕の気分がどこまで高揚しているかによる。会社近くの古本屋では1冊100円で「グインサーガ」の多くが入手できる。「豹頭」もその限りではないが、迷った末に買わなかった。
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