2009年05月11日

時間封鎖 ロバート・チャールズ・ウイルスン(2009/4/12読了)

 久々に「本の雑誌」のウェブサイトを閲覧しに行ったら、様子が違っている事に気づいた。そういえば、少なくとも半年くらいはのぞきに来てなかったかもしれない。毎月の文庫書評のページが終了していた。単行本の書評の方は続くらしい(その後、単行本書評のコーナーも終了していた)。くわしい事情は分からないが、月5,6冊も(いや、もっとか)読んでまともな(と言うことは「気が利いた」という事でもあるが)感想を書いてくれる読者ボランティアを常時確保するのが難しくなったのだろうか。

 拾い物の本があるかざっと見て回ると、文庫版の全スタッフが五つ星を付けた文庫があったと言う。そんなことは、このコーナー始まって以来初めてだと大騒ぎだったようだ。僕のように多少なりとも物事を穿って考える人間には、このコーナーが終わってしまう一つの要因を見た気がした。「全会一致」などという事態がまちがっても起こらないのが、このコーナーの読み手の顔ぶれだったはずだ。良いも悪いも個性的な読み手がなかなか集まらないということかもしれない。

 しかし疑り深いとは言え、何より物見高い性格なので、さっそく立川の図書館で予約をかけた。最近、国際宇宙ステーションで長期滞在を強いられたクルーを描いた「絶対帰還」を面白く読んだし、アポロ計画以来、人類の宇宙開発には人並みの関心を持ち続けているので、本書はさぞかし興味深く読めるだろうと思ったのだが、どうやら僕には〈SF読み〉の資質が欠けているのかもしれない。冒頭でいっこうにページが進まないのにいらいらさせられた。

 地球が何者かによって時間的にシールドされてしまい、地球の外側では一億倍ものスピードで時間が流れるようになってしまった。ここまではいい。なんとも不可思議で、かつ先を争うように読みたくなる絶好の謎が待ち受けているように思えるからだ。

 ところが、僕には「スピン」と名付けられた〈時間封鎖〉の描写や、その理屈がなかなか頭に入ってこない。本当に、あの読者ボランティアの面々は、この本を諸手を挙げて賞賛したのだろうか。彼らは僕とは違って、この〈時間封鎖〉の仕組みを理解できたのだろうか。その上で、まずは退屈な科学的沈黙というべき文章がそろそろと流れ、次に現在と過去の回想が交互にやってくる構成の時間的進行ののろさが耐え難い。いったい、いつになったら、オール五つ星作品の真価が発揮されるのだろうか。

 それは、上巻の4分の3を読み終えたP.276でようやく訪れた。僕はそれまで、ある〈疑念〉が頭から去らなかった。地球のように人類が住める惑星に火星を改良し、人類を送り込み、一億倍のスピードで進化させたならば、当然のごとく起こりうる事こそ、実は「スピン」の謎の核心なのではないかと考えた。そう思いついたことで本書を侮ってしまい、作品への「退屈さ」を飼い慣らしてしまった。

 ところがそうではなかった。著者は、僕のようなSFに不慣れな読者には到底予想がつかなった展開を用意していたのだ。下巻を読み切る原動力は上巻の終盤にしかない。そこまでたどり着けなかった読者には、ご愁傷様と言うしかない。そこを乗り切った読者には、抜群の着想から割とオーソドックスなSF的地平へと誘ってくれる本作の面白さを最後まで堪能できるだろう。

 だが、あえて言おう。オール五つ星はないよなぁ。

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posted by アスラン at 03:03| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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