2005年12月22日

生協の白石さん 白石昌則 東京農工大学の学生の皆さん

 生協の白石さんは至極真面目な人だ。そういう事がこの1冊の本を通してわかる。ただそれだけの事なのに何故かうれしい。何故か読んでよかったなという気にさせてくれる。

 それはおそらく「ひとことカード」と呼ばれるどの大学の生協にも置かれている利用者の意見や要望を聞くカードの質問・要望と対になった白石さんの回答がきわめて気の利いたものだからではない。そこに書かれている回答というのは、本書の白石さん自身も語っているように前任者から引き継いだ生協の業務の一つを真摯に受け止めた上での方法論から産み出された回答に過ぎないからである。

 つまりはお仕事であり、言ってみればお客様あっての生協であればたとえ本来の趣旨とは違った質問であっても、なんらかの回答を与える事がお客様の満足度につながるのだから当然といえば当然なのだ。無視はできない。ただし真面目に答える内容でもない。それならば、ユーモアで受け流すしかないではないか。

 これは誰もが言うだろうが、白石さんという人間の人柄とユーモアがにじみ出た文章の面白さが受けたのであって、それ以上でもそれ以下でもない。

 そういう意味では、実は本書の中で白石自身が書いた小文が一番おもしろい。真面目で律儀な人柄がにじみ出ているし、同時に生協の業務の裏話(というかこちらが本来の表話だろうが…)が分かって興味深い。そして決してブームに踊ってない白石さんがいる。かえって前書きのアイティメディア記者と称するジャーナリストやあとがきに寄せた東京農工大生協専務の視点は、白石さんの言葉を都合よくすりかえていると感じられる。

 記者は白石さんのユーモアのセンスを魔法のようだと持ち上げて自分などおよばないと書き、専務は一種のビジネス本とも読めるし学生のメッセージを真摯にうけとめる一種のセラピーにもなりうるのではないかとぶちあげる。でもそういった功利的な解釈はあまり意味がないと思う。

 一方で、本来の趣旨と違う質問の数々を投函し続ける現代の大学生たちのバカさ加減をあげつらわずにいちいちつきあっているところに白石さんの人の良さを感じるべきかと言えばそうでもない。なぜならば本書で白石さんらしい面白い回答を引き出しているのが、まさにこのバカバカしい質問であってこれなくして白石さんの回答の面白さはないからだ。

 そういった質問と回答ばかりを集めた本書を読むと、今どきの学生はバカな事をやってる。バカに付き合う大人もバカだというさめた見方も出てくるのだが、それほど今どきの学生がバカではないのは、白石さんの回答を紹介してこのブームの火付け役となったブログのオーナーが書いたあとがきを読めばわかる。僕も工業大学卒なので工学系に進んだ学生のキャンパス風景が、文系のそれの華やかさとはうってかわって地味なものであるかは身に染みている。

 しかも工学系の授業は実習・実験が多く、研究室に所属すれば寝る間を惜しんで研究に時間を割く事になる。生協というささいなスポットはそういった真面目な学生のささやかな憩いの場になりうる。しかも東京農工大学には白石さんという逸材がいて、打てば響くように彼らの気の抜けた戯れ言に答えてくれる。そこまで考えると、やはり白石さんの回答は生協の現場(カードの掲示板)で出会えるから楽しいのだとつくづく思うのだ。

 「最後に」という白石さんの文章のしめくくりのフレーズにぜひ心を留めて欲しい。何故読んでよかったのかと思えるのかがよくわかるはずだ。こんなユーモアは、ある時代・ある文化を共有してきた年代には目新しいものではないだろうが、それでも何故かこの世知辛い平成の世を昭和の色に染めるような懐かしさと暖かさと、そして重要なのはさりげなさに満ちているのだ。
(2005/12/14読了)


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posted by アスラン at 01:30| Comment(1) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Posted by トプログ at 2005年12月23日 16:06
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