あの有名な「フランダースの犬」が本国ベルギーでは不人気であまり知られていないと言う話は、ずいぶん以前から聴かされてきた。ハリウッドで映画化されるくらいだから、日本人だけが好んだ作品という訳ではなさそうだが、アメリカ人が好むエンディングは原作とちがってハッピーエンドなのだそうだ。当然ながら映画でも結末で少年は死なず苦労は報われる。
日本人だけが報われない話が好きなのだろうか。いや、日本人は報われない話も報われる話も好きなはずだ。「お涙ちょうだい」と揶揄される事も多いが、やっぱり悲しい話が好きな民族な事は確かだ。日本人の情緒に訴えかけるものを「フランダースの犬」は持ち合わせている。
一方で本国ならびにヨーロッパ全般でなぜこの物語が受け入れがたいか。本書によると、西洋人は少年が人生の負け犬だと感じるからだそうだ。教訓めいたものもなく負け犬の少年への憐れみを強いる物語は、西洋人の〈情緒〉に合わないと言う事だろうか。
子供の頃から慣れ親しんでいる名作の数々は、大人になって読み返す機会が少ない。そのせいか原作に込められた著者の真の意図や時代背景を読み取りそこねている可能性が高い。たとえばアニメでおなじみの「アルプスの少女ハイジ」の原作は、都会で生きる人々が失ってしまったキリスト教の信仰が〈アルプスの自然〉の中でこそ育まれるという、著者のかたくな信仰心に彩られている事が容易に読み取れる。
本書では、「フランダースの犬」以外に「母をたずねて三千里」「若草物語」「小公女」「宝島」「十五少年漂流記」と言った誰の胸にも刻まれている名作を紐解き、〈目から鱗〉のような謎解きをしている。
「母をたずねて三千里」の原作「クオーレ」に収められた物語の数々は、子供を啓蒙する道徳的なお話ばかりなのだそうだ。その中にほんの一編に過ぎない「母をたずねて三千里」も例外ではなく、自ら果たせなかった一旗揚げる夢を我が子に託そうとする親の欲目に満ちている。アニメやジュブナイルを幼い頃に読んだ人は後日思わなかっただろうか。何故はるか遠い異国の地に母は働きに行かなければならなかったのか。そのとき父親はどうしてたのか。「三千里」をはるばる旅する息子を引きとめ、何故父は母の様子を見に行けなかったのか。手術さえすればよくなると医者が確約しているというのに、母は何故かたくなに手術することを拒んだのか。
要するにそういう話なのだ。ダメな父、臆病な母。親は徹底的に情けないが、そのダメな親を面倒みてくれるような孝行息子・孝行娘に育ってくるようにと、虫のいい道徳話がいっぱい詰まっているのが「クオーレ」なのだそうだ。そう解説されると俄然読みたくなってくるのが僕の悪い癖だ。さっそく行きつけの古本屋で見つけて買ってきてしまった。「読書の秋」にぜひ読んでみたい。
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2008年09月24日
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上のコメントは私のものです。(汗
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名前未記入でも「クオレ物語」なんてところに反応してくれるのは、らごさんぐらいなので大丈夫ですよ(笑)。でも僕は読んでないですね。購入した「クオーレ」(角川文庫だったかな)は結構な厚みで読み出がありそうです。表紙はアニメの「母をたずねて三千里」のマルコ少年なんですけどね。
これを読んでようやく孝行息子になるかもしれません(笑)