2008年08月19日

ハリー・ポッターと秘密の部屋 J.K.ローリング(2008/7/6読了、再読)

 ハリー・ポッターシリーズ第2作。1作目は、登場人物や舞台の設定に楽しさが満ちていて、読む先読む先にウキウキワクワクさせられることでいっぱいだった。第2作ではひととおり人物や舞台・行事などが一巡したために、驚きが少なくなった分、登場人物への愛着が生まれてきた。それぞれにうまく性格が描き分けられているし、なにより主役であるハリーと二人の親友ロンとハーマイオニーとの物語が、子供っぽさから次第に大人への階段を上るためにさまざまなな愚かな行為と勇気ある行為を繰り返していくところに、僕らは一喜一憂する。

 今回は冒頭から、屋敷しもべ妖精ドビーがハリーの元を訪れ、奇怪な容姿をさらしながら慇懃にも「ハリーはホグワーツ(魔法学校)に行ってはいけない」と謎の警告を残して立ち去る。ドビーはなんとも哀れで愉快で騒がしくてきまじめで、そしてとっても気のいい妖精だ。ドビーが登場するシーンはまるでドタバタ喜劇のようで、最初こそトラブルメーカーに見えるが、狂言回しの道化師のように終盤に重要な役割を担うことになる。さらに言えば、次第に闇の部分が強まって暗くなりがちな本シリーズに愉快なエピソードをもたらしてくれる貴重な存在として、シリーズの常連となる。特に「炎のゴブレット」では再び大活躍することになって、僕ら読者を喜ばせるだろう。

 前作ではとにかく物語の発端から終盤にいたるまで、さまざまに凝らされた趣向を楽しめた反面、結末のおもしろさはいま一つだった。それは、一つには著者が趣向を描いていくだけで手一杯で、伏線を仕込む余裕があまりなかったからではないか。本書では伏線がいくつか張り巡らされて、ミステリーとしても前作よりおもしろさを増している。特にハリーとロンがホグワーツ行きの特急に乗り損ねて、ロンの父の空飛ぶ車で城に向かい、それがばれて二人ともに罰を受けるという展開は、それ自体魅力的な挿話だが、実は終盤のストーリーの重要な伏線が隠されてもいる。

 一方で、伏線の張り方が甘い、というかストーリーの運び方が唐突な場面に出くわして、著者が本書で二作めの新進作家である事に改めて気づかされる。ただし、翻訳のまずさが災いしてる部分は割り引かないといけないだろう。本書でまず指摘しておきたいのは、ハリーが「決闘クラブ」で偶然に蛇と対話ができることがみんなに分かってしまうという場面があるが、どうにもロンやまわりの生徒たちの描写がほのめかしに満ちていて、一瞬ハリーの戸惑い同様に僕ら読者も何を言わんとしてる場面なのかわからなくなる。著者の書き方なのか訳者の訳し方なのか、区別はつかないが、いずれにしても状況が分かりにくい文章だ。

 さらにまずいことに蛇がしゃべったと後で読者にもわかる事になる、ある一言が〈震える字体〉で書かれている。この震える字体は、それまでヴォルデモート卿がハリーの心に直接脅し掛ける言葉として使われていたはずだ。もし僕も勘違いで別の字体だとしても、もうちょっと区別が付く活字を使ってほしかった。こちらはあきらかに翻訳家の手抜かりだろう。

 そのほかにも、終盤にロンの妹ジニーが行方不明になり、結局ヴォルデモート卿に操られていた事が判明するのだが、そこらへんの謎解きも手がかりが少なくて唐突という印象を受けた。ジニーについては途中からほとんど描かれなくて、ヴォルデモート卿が自らの肉体の復活のために利用した事が本人(ただし50年前の若き少年の姿だが)が語って、初めて明らかになる。こちらは著者の未熟と言っていいだろう。

 いずれにせよ、肉体を手に入れるというヴォルデモート卿の野望は、またしても打ち砕かれる。まだまだ「闇の帝王」は闇の帝王らしくなく、弱っちい。そのお気楽な気分がただよう間は、僕らはハリーらとともにホグワーツのドキドキワクワクな生活を楽しむ事ができる。

↓クリックの応援よろしく!
banner_04.gif
人気ブログランキング
posted by アスラン at 13:08| 東京 ☁| Comment(3) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ハリーポッターは私が大好きな本です♪夫婦ともにはまってました☆
最後の作品は、正直泣けますよ‥。会社休んで、読破しちゃいました♪

でも本当に6作目かな?半獣のプリンセスあたりから、もう本当に急展開!!そして、シリーズ本の伏線の張り方がすごい!!2作目のジニーがボルデモート卿にあやつられていたことが、最後の鍵になりますよー。ぜひその後も読んでみてください♪
私はやっぱり、「アズガバンの囚人」が大好きです☆

できれば、私も読書感想を書いているので、相互リンクしませんか?
よろしくお願いします

Posted by ちゃよ at 2009年03月05日 20:37
コメントありがとう、ちゃよさん。

すでに最終巻まで読破しております。号泣しました。あの親愛なる友人が亡くなった時も、あの人の記憶を見たときも、そして子供も名前が明かされたときも…。あまりの感動がもったいなくて、すぐに再読してしまいました。
ところで、やっぱり僕も「アズカバンの囚人」が一番いいと思いますね。

相互リンクの件、OKです。どうすればいいんでしょう。こちらからリンクすればいいのかな。
Posted by アスラン at 2009年03月09日 01:49
返事が遅くなってすみません。
コメント記入したつもりが、確認までで、記入になっていなかったみたいです(反省)。

こちらは既にリンクさせていただきました。
これからもよろしくお願いします☆

ハリーポッターは既にすべて読破されていたんですね。
やっぱりあの人の記憶ってびっくりですよね。一気にあの人のイメージがガラリと変わりました。でも、最後にちゃんとその気持ちがハリーに伝わってよかった♪最後は号泣ですよね。悲しい気持ちになったけど、ちゃんと幸せな未来が訪れて本当によかった。
ちなみに、私も読破したあと、再読しちゃいました。ビデオも見ちゃいました。映画も毎回みてまーす☆

Posted by ちゃよ at 2009年03月10日 19:38
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/104989148
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。