2008年07月31日

コンピュータか、それともコンピューターか?

 マイクロソフト社が自社の製品説明やマニュアルなどの外来語表記の書き方の指針を見直すと発表した。何が変わるかと言うと、カタカナで表記された外来語の末尾に「付くべき」長音記号(ー)を付けることにしたという変更だ。わかりにくいかな。

 要はタイトルに書いたように「コンピュータ」と書かずに「コンピューター」と書くことにする、という変更だ。この二つの表記がなぜ併存するかを知らない人にはわかりにくい話かもしれない。僕は工学系の学科を専攻したので馴染みがあるが、技術論文の書き方は統一された指針があり、その中でカタカナ外来語の末尾の長音記号は、「カバとカバー」のように意味が変わる場合や、慣用で使われる場合をのぞいて、ほとんどの場合は省略する。

 ちなみに技術論文の書き方には句読点をピリオドとカンマで代用することも定められており、一般に流通する文章の書き方に慣れた人から見るとかなり奇妙に見えるだろう。なかでも長音記号の省略は理不尽としか言えないものもあり、「コンピュータ」などは目をつぶれる人も「アダプタ」「ブラウザ」「メモリ」「サーバ」となると、何故長音記号がないのか、自分の言語感覚を問うことにもなりかねない。

 今回のマイクロソフト社の対応は、その意味では英断と言える。これまでソフトウェアやハードウェアを開発してきた技術者たちの、いわば専門語あるいは内輪の言い回しを一般のユーザーに押しつけてきたツケをようやく解消しようという動きで、歓迎したい。

 ただし、この自国語の書き方の微妙な問題の解決を、一外国企業が率先するという異常な事態に、もっと日本のメーカーや識者は敏感になってしかるべきだと思う。今回の動きは評価できるが、対応の中身を見ると、結構あやしいところが簡単に見つかるからだ。

 さきほど例に挙げた「コンピュータ」や「アダプタ」は、「コンピューター、アダプター」に変更するが、〈慣例に基づき長音記号を付けない〉として例外にする外来語も数多く存在する。たとえば「エンジニア」などは納得できる。しかし「アクセラレータ」や「コンパイラ」もそのままというのは技術者の目から見ても納得しにくい。一体ここで言う「慣例」とは誰にとっての慣例なのだろう。

 さらには、この例外リストには「ビール」や「メートル」まで含まれている。どうして?と日本人ならばすぐに違和感を感じるだろう。そもそも今回の変更は、従来のJIS準拠から国語審議会の指針に鞍替えしたものだ。国語審議会の指針とは「-er,-or,-ar」などで終わる英語を由来とするカタカナ表記には末尾に長音記号を付けようというガイドラインのようだ。

 確かに英語のbeerやmeterは末尾がガイドラインに該当する。しかし「ビール」も「メートル」も英語を語源としたカタカナ表記ではない。そもそもが「慣例に基づき…」の対象外なのだ。それならば「ビアホール」や「タコメータ」をどう表記するのかを考えるべきだろう。

 ということは、「慣例」と正しく判断できない人が対象も例外も決めていると思えてくる。あやしい、非常にあやしい。マイクロソフト社が先導役を買って出たのには感謝して、早めにあとを引き取って自国の「慣例」を見極めていく作業に取りかかりませんかねぇ。

↓クリックの応援よろしく!
banner_04.gif
人気ブログランキング
posted by アスラン at 11:27| 東京 曇り| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記(電車でカフェ気分) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/103917454
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック